政治 経済
社会 科学技術
国際 中日飛鴻
北京 天津
上海 重慶
黒竜江 吉林
遼寧 内蒙古
河北 山西
山東 河南
江蘇 浙江
安徽 福建
江西 湖北
湖南 広東
広西 海南
四川 貴州
雲南 西蔵
陜西 甘粛
青海 寧夏
新疆 香港
澳門 台湾





 
  更新時間 :2006年05月25日09:34 (北京時間) 文字

「赤とんぼ」の涙


  去年の三月、「ボランティアへ行こう」という大学の呼びかけで、クラスメートたちと北京郊外の「松堂臨終関懐病院」という病院へ行った。それまで、一度もボランティア活動に参加しなかった私だが、どうせ土曜日だし、郊外観光でもしようと、そんな気持ちでバスに乗った。そんな軽い気持ちで参加したのだが、その病院でのある思いがけない出会いが私の一生の宝物になったのだ。

  その病院で、たった十ヶ月で心臓奇形になった赤ちゃんや、癌に苦しんで顔が日に日にボロボロになっていく若い女優や、自分の子供に捨てられた寂しそうなおじいさんなど、いろんな人と触れあうことができた。その中で、今でもよく思い出すのは八十八歳のおばあちゃんだ。

  ある日、ドアを押して病室に入っていくと、白いベッドに座っているおばあちゃんが見えた。眩しい日差しが寂しそうな顔に当たった。

  私は「おばあちゃん、私たちは北京師範大学日本語学部の学生で、お見舞いにまいりました」と言った。

  「日本語学部の学生ですか。どうぞ入って」と言うおばあちゃんの目が光った。そして、おばあちゃんは「こんにちは」と日本語で挨拶をしてくれた。

  「えっ、おばあちゃん、日本語ができるの」と私たちがびっくりした。

  おばあちゃんは口許に微笑みを浮べて、いろいろな経験を教えてくれた。百年ぐらい前に、おばあちゃんのお父さんが家族と一緒に日本に移り住んだ。そして、日本人の女性と結婚して、おばあちゃんを生んだ。

  「実は、私は半分日本人なのですよ」と言う。おばあちゃんは日本で学校に通って、仕事をして、結婚して、四十年間ぐらいの月日を送った。

  「懐かしいなあ」とおばあちゃんは思い出にひたっているようだった。「以前、日本語が上手でしたが、国に帰ったら、なかなか使わなかったために、忘れてしまいました。今、日本語を聞いて、本当にうれしいわ。」それに日本語の中で一番難しいのは何だとか、日本語自体だけではなく、日本の文化や歴史を勉強すれば日本語をもっと面白く感じるはずだとか、時には厳しく、時には優しい話し振りで語ってくれた。あっという間に、別れる時間になって、日本語を学んでから一年足らずの私は、おばあちゃんへのプレゼントとして、未熟な日本語で「赤とんぼ」を歌ってあげた。

  「夕焼け小焼けの赤とんぼ、負われて見たのはいつの日か……」

  すると、いつのまにか、おばあちゃんの目から涙がポロポロと出てきた。

  どうしたのだろうか。この歌でおばあちゃんに昔のことを思い出させてしまったのだろうかと申し訳なく思った。部屋を出る時、私はおばあちゃんの手をとって、「おばあちゃん、泣かせてしまってごめんなさい」と謝った。すると、おばあちゃんは強く私の手を握って、「そんなことないわ。おかげさまで、今日はとても楽しいひと時を過ごしましたよ。ありがとう。また会いましょうね」と、笑顔を浮べながら言ってくれた。「おばあちゃんの手、温かいね」と、その時、何故か私のほうも涙が出てきそうになった。

  帰りのバスに乗っている間も私の頭の中でおばあちゃんの顔が繰り返し浮かんだ。あの時おばあちゃんはいったい何を思い出したのだろうか。何十年か前その赤とんぼに戯れていた幼い自分を思い出していたのか、それともかごを背負って桑の実をつんでいたそのねえやだろうか。若い私はおばあちゃんの気持ちをうまく理解することができなかった。でも、おばあちゃんの目の中に、私はその世界に対しての恋しさを見た。この時、おばあちゃんが言った「私の物語は何日間かけても話し切れないよ」という言葉が耳のそばでずっとささやいていた。「おばあちゃんはやがてこの世界に別れを告げるとしても、そんなにたくさんの思い出を持っているのはどんなに幸せなことだろう」と私はうらやましく思った。一瞬、おばあちゃんは世界中で一番幸せな人だと感じた。それに、おばあちゃんと一緒に昔を回想した時、知らず知らずのうちに、私の心も豊かになった気がした。

  おばあちゃん、ありがとう。今、お元気ですか。また会いましょうね。(北京師範大学 楽 馨)

  特別提供:日本僑報社・日中交流研究所 http://duan.jp



BBS 印刷版 編集部へ

お名前:
内容
  利用上の注意

1.利用者は中華人民共和国の関連法律・法規を順守し、ネット上のモラルを守り、利用者自身の行為に起因する直接、間接のあらゆる法的責任を負うこと。
2.書き込み内容の取り扱いに関する一切の権限は人民網が有します。
3.人民網は、人民網掲示板に発表された文言を本WEBサイト上へ転載、引用する権限を有します。
4.利用者は上述の規約に同意したものと見なします。
5.ネット管理についてのご意見は、管理人あるいは人民日報網絡中心にお寄せください。

広告 リンク集 about us サイトマップ 著作権

このウェブサイトの著作権は人民日報社にあります。
掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。
Tel:日本(03)3449-8256  北京 (010) 6536-8359  MAIL:info@peopledaily.co.jp