日本人の「以心伝心」


  去年、楽しみにしていた日本祭りがようやく開催された。本格的な日本料理はどうやって作るのか。本当の日本人は一体どのような人間なのか。教科書に書かれたように行動するのか。日本語科の学生として、大変興味を持っていた。

  新聞や雑誌、テレビを通して、日本人のことを多少知っていたが、日本人に対してはいい印象を持っていなかった。しかし、はじめて見る日本人の先生の授業を受けてから、そうではないのではないかと考えるようになった。

  日本祭りには、いろいろ感動するようなことがたくさんあった。交流会で、日本人は相手のことをよく考えることや、いつもまじめに規則通りに行動することなどがよく理解できた。また、茶道の実演会を通して、日本語は日本人の生活や心情、日本の歴史や文化などに深く根ざしたもの、つまり日本語は一つの凝縮した世界だと考えるようになった。

  日本祭りでは、一番印象に残った人がいる。威海の日系企業のT社長さんだ。催しものの一つとして、「たこ焼き」の実演販売会があった。販売会が終わって机を見ると、大変汚れていた。

  「どうやって片付けたらいいのだろうか。きっと面倒くさいだろうな。もし掃除をしたら、私の服が汚くなるかもしれない」と、私は困惑していた。そこへT社長さんが雑巾を持ってやってきた。私はまだ二年生で、社長さんが何を言っているのかよく理解できなかった。どうしたらいいのかと迷っていると、何と社長さんが自分で掃除を始めたのだ。汚れを全然気にすることもなく、机を一生懸命にきれいにした。社長さんなのに、こんな汚れ仕事をすることに、私はとても驚いた。社長さんがやっていることがどうして私にできないのか。顔から火が出るほど恥ずかしかった、

  その時、社長さんと目が合った。多分「社長さん、掃除のことを私にまかせてください。かならずきれいに掃除しますから」という気持ちを私の目から感じ取ったのか、T社長さんは頭をたてに振って、ほかの所に行ってしまった。

  小さなことだが、一生忘れられないのは、この瞬間の「以心伝心」である。

  実は、毎日勉強が忙しいせいもあって、私たちの寮ではあまり掃除をしなかった。紙くずや果物の皮などが散らかり放題であった。何度もほかの人に注意したが、効果がなかった。「どうしようかな」と、大変悩んだ。「そうだ。日本人の以心伝心でやってみよう」と、突然いいアイディアを思い付いた。そこで、一人で四時間かけて部屋をすっかり掃除した。ちょっと疲れたが、部屋がきれいになったのを見て、自然と笑みがこぼれた。

  夕方になって、同室の人たちがあとからあとから帰ってきた。きれいになった部屋を見回して、みんな一様に驚いた。と同時に、うつむいて恥ずかしそうな顔をした。多分何かを感じ取ってくれたのだろう。それからはずっと私たちの部屋はいつもきれいで清潔な状態になっている。

  池に投じた小さな石、つまり小さな親切が大きな感謝となって波紋が広がったのだ。日本人の「以心伝心」というコミュニケーションは、本当に不思議な力を持っている。

  現在の中日関係は以前と比べていいとは言えない。とても残念だ。私は日本語を学ぶ者として、多くの日本人と触れ合い、「以心伝心」のような日本人の心情などをもっと勉強したい。そして自信を持って、「日本人であっても、私たちと同じですよ。優しくて平和を希望する人間ですよ」と言えるようになりたい。

  T社長さん、すばらしい授業をしてくださってどうもありがとうございました。(山東大学威海分校 庄 恒)

  特別提供:日本僑報社・日中交流研究所 http://duan.jp




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