【第105回】インターネットサービスプロバイダーと商標権利侵害
2011年1月19日、中国インターネット情報センターが27回目となる『中国インターネット発展状況統計報告』を発表した。本報告によれば、中国のインターネットショッピングユーザーは毎年48.6%増加し、インターネット決済およびインターネットバンキングユーザーの年間増加比率は、それぞれ45.8%、48.2%で、その他の種類のネットワークアプリケーションを優に超えている。人々がインターネットビジネスの迅速性や利便性の恩恵を預かる一方で、粗悪サイトによる電子ビジネス取引における商標特許権の権利侵害行為も横行している。このような場合、オンライン取引のプロバイダーはどのような法律義務を負い、また商標権利者はその法律責任を追及することができるのだろうか?
事前注意義務
インターネット商標権利侵害は、典型的な商標の権利侵害がインターネット分野で拡張、変更しただけの形式および手段であり、このため、両者には法律適用上の区別がなく、『商標法』第52条、『商標法実施条例』第50条、『最高人民法院の商標民事紛争案件適用法律の審理に関する若干問題解釈』第1条の規定が、インターネット商標権利侵害案件にも同様に適用される。
たとえプロバイダーが直接偽物の製造・販売に関与していなくても、それを販売するためのプラットフォーム提供する場合、一定の注意義務を尽くさねばならず、一定の法律責任も負う。しかしながら、プロバイダーの注意義務範囲は幅広く、注意義務を尽くしていないといかに認定するか、これは実務上大変難しいことである。2010年7月1日から実施されている『インターネット商品取引および関連サービス行為管理暫定弁法』にも具体的な規定がなく、司法実務の場では、中国の裁判所のプロバイダーに対する注意義務の要求が非常に低く、商標権利者がプロバイダーの事前審査や注意義務が十分ではないとして、その法律責任を追及することは非常に難しい。
・プロバイダーは、インターネット販売業者と関連知的財産権を保護する旨を盛り込んだ契約を締結する義務があり、これに関しては、ほぼすべてのプロバイダーがその要件を満たしている。
・プロバイダーはインターネット販売業者の経営資質について、審査義務および審査能力がない。たとえば、個人の販売業者に対し、プロバイダーは当該個人販売業者の真実の氏名および身分証明書番号を審査すればよいとされている。
・プロバイダーには、インターネット販売業者がインターネット上で公開する商品情報内容について実質調査を行う義務はなく、販売される商品の商標の合法性について直接調査する義務もない。