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監督チャウ・シンチーの素顔 新作映画の主演俳優が語る (2)

  ■本音を語らないチャウ・シンチー監督 クランクイン1カ月前にメールと脚本が

 ウェン・ジャンが初めてチャウ・シンチーに会ったのは、撮影のためシンガポールに滞在中に、香港の映画製作会社・安楽影片有限公司 (EDKO Films )の社長、ウィリアム・コン(江志強)氏から「チャウ監督が会いたいと言っている」と電話がかかってきたため、急遽香港に赴きチャウ監督と対面した時だという。しかし、チャウ・シンチーはいつもの態度でウェン・ジャンを煙に巻き、基本的に自分に何をさせたいのかまったくわからなかったという。約1時間ぐらいの対面だったが、チャウ監督がウェン・ジャンに聞いたことといえば、単に『ご飯を食べたか』、『香港に友人はいるか』など非常にたわいのないものだった。そして最後に、「『チャイニーズ・オデッセイ』を見たことがあるか?」と聞かれたのだという。「チャウ監督がそのとき新作の準備をしていることを知っていたので、もしかしたらある役柄を試されているのかなと思った」とその時の様子をウェン・ジャンは振り返る。

 それ以降、チャウ・シンチーから長い間連絡はなかったという。そして、クランクイン1ヶ月前になってようやく「西遊降魔篇」の脚本とチャウ監督からのメールが届いた。「メールはすごくシンプルだった。三蔵法師の部分を見てください」と書かれていた。脚本を読む前には、「チャイニーズ・オデッセイ」で三蔵法師を演じていたロウ・ガーイン(魯家英)の姿がずっと頭の中でちらついていたが、脚本を読み終わったとき、抱いていた三蔵法師に関するあらゆるイメージがくつがえされた。「脚本を読んですごく興奮した。この役柄をすごく好きになっていた」とウェン・ジャン。

  ■あらゆる主要役柄で自ら演技を披露 役者に創意と可能性を与える監督

 チャウ・シンチーは以前、新作では役を演じていないが、今までで一番演じるのに疲れた映画だったと語っている。というのも、役者に対し、ほぼすべての役柄を見本として自分で演じてみせたからだそうだ。ウェン・ジャンはこれについても証言している。「チャウ監督から映画や演技に対して指示されることに関しては何も感じなかったが、チャウ監督自ら演じてみせてくれることがすごく恐ろしかった。チャウ監督は自分で演じた後、『じゃ自分で演じてみて』と言うんだ」とウェン・ジャンは眉毛を上につりあげて、チャウ監督の真似をしてみせ、「どうぞ」という手のジェスチャーをしてみせた。「チャウ監督がひとたび自分で演じてみせたら、それはもう絶対に、すごく面白い。だからこそ、その後に、すごく大きなプレッシャーに襲われる。その上、チャウ監督は役者がコピーや真似をすることを好まない。チャウ監督がひとつの基本の型を見せてくれた後に、自分たちはたくさんの演技パターンを模索していった」。このような過程を繰り返し、共に撮影をするうちに、ウェン・ジャンとチャウ監督は非常にいい関係を築いたという。「僕たちは撮影をすごく楽しんだ。創作の空間は大きく、創作環境も申し分なかった。チャウ監督は役者たちに方向性を与えてくれ、みんなでこの原則のもとにさまざまな演技パターンを模索していった」。

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