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更新時間:09:20 Apr 08 2009

石山雄太氏:梅蘭芳はなかば神格化された人物

資料写真:石山雄太氏(中)

 石山雄太氏(中国国家京劇院 京劇俳優)

 東京・浅草生まれ。TVで京劇の孫悟空を観て魅了され、京劇俳優を目指して中国語の学習をはじめる。高校も中国語の授業がある関東国際高校に進学。1993年、中国戯曲学院(中国で京劇を専門に教える唯一の専門大学)付属中学に留学。97年、同学院の本科に進む。2001年卒業後、外国人初のプロの京劇俳優として中国京劇院(現・中国国家京劇院、政府直属の京劇院)に入団、現在に至る。日本での京劇公演、外部公演も数多い。

 「梅蘭芳は、なかば神格化された人物です」

 わたしたち京劇にたずさわる者は、昔の名人をじかに知るベテランの俳優に話しを聞いたり本で読んだりすることも多いのですが、『花の生涯 -梅蘭芳-』を観て、そうした時代の京劇の世界をあらためて知った思いです。「こういう環境でやっていたのか。今とはずいぶんちがうな」とか、逆に「これは自分たちがやってることと同じだな」と親近感を覚える部分もあったりして、最近の映画としては長いのでしょうが、あっという間に時間が過ぎ去った感じでしたね。

 娯楽作品としての面白さと同時に、ひとりの京劇役者として身が引き締まる、身につまされる部分がたくさんありました。映画の冒頭にも描かれていますが、ちょっと身の振り方をあやまっただけで首が飛ぶような封建時代から、生きるか死ぬかというところで芸術家たちは生きてきたわけで、こうした先達たちのおかげで今の私たちは暮らしていける。昔の人の苦労に比べればほんとに楽園にいるようなものじゃないかと、自分自身もっとしっかりしなくちゃいけないな、と。

 梅蘭芳は、中国の京劇界においてなかば神格化された人物です。単なる娯楽として扱われがちだった京劇を芸術として世界的に広め、昔は差別を受けることも多かった俳優の地位を向上させてくれた、京劇界の恩人でもあります。

 劇中、梅蘭芳と師匠とのシーンはとくに心に残っています。師匠の十三燕は、どういう立場や境遇におちいっても堂々と舞台に立ち向かっていく美徳、気骨のある俳優なのだと、観ていてすごく感じました。「負けることは恥ではない、恐れることが恥なのだ」というせりふにすべてがこめられていますね。一方では封建時代に生きてきた一老芸人の悲哀というか、ここまでが限界だったのかもしれない、だからこそ次の世代はお前に頼むよ、という思いもあった。師匠が梅蘭芳の敵というふうには思えませんね。芸にはまっすぐな厳しい人物だけれど、ひとたび舞台を降りれば…梅蘭芳は劇中で師匠のことをおじいちゃんと呼んでますけど…ほんとにおじいちゃんと孫のようなあたたかい関係にある感じがして、対決で負けたとはいえ心なごむエピソードだと感じました。

 梅蘭芳はこういう昔の俳優の美徳をも受け継いでさらに発展させていったと思います。もちろん、映画ですからそれなりに劇的に描いた部分や実際にはわからないこともたくさんあると思いますが、それでもこの映画を観た人は梅蘭芳がすばらしい偉大な芸術家だったことを再確認できると思います。

 現在でも変わり続けている京劇

 京劇は現在でも変わり続けています。映画で師匠の十三燕も言ってましたが、絶対に変えてはいけないわけじゃない。実際には役者によってずいぶんやり方を変えたりしています。ただ、一目見てすぐにその変化がわかる改革とは限らない。今まで作ってきたものと矛盾しないけれどもちょっとちがう、ちょっと新しいものを取り入れて、ということを繰り返しながらどんどん発展してきた。いろんなかたちでいろんな人から意見を聞きながら、変わってきたと思います。舞台を作る側としては常に苦悩しているところですね。自分たちがよいと思っても、観客がよいと言わなければ、それは作品としては残らないわけですから。

 ですから、常に観客と交流することを私たち俳優は大切にしています。もともと京劇は雑技とか、音楽、舞踊、講談といった観客をひきつけるものを集めてかたちになってきた。そういう試みは常に続いています。私が入団するときも、中国国家京劇院の院長が、京劇というのはもともと包容力のある演劇だ、いろんなものを受け入れて大きくなってきたんだ、と。京劇の発展に正しい力を注ぐことのできるものであれば外国人であっても受け入れるべきだとおっしゃってくださった。とてもうれしかったですね。

 「いろんなアプローチで京劇を紹介する」

 今はインターネット配信でなんでも見られたり、ほかの娯楽がたくさん台頭したりして、そこが京劇にとってむずかしいところでもありますが、今の時代のいいところは、いろんなところで、またいろんな方法で観客と出会えることですね。昔は限られた舞台しかなかったわけですから。そういう意味では昔の人たちは本当にたいへんな苦労をされて、京劇の今を作ってきてくれたと思います。

 京劇は、伝統演劇ということでむずかしいものと思われがちですが、何回も観ていくうちにするめのように味が出てくると思います。もちろん、初めてでももっともっと楽しんでいただくために、私たちも面白いしかけを作ったり、最近ではたとえば流行のフライング(宙乗り)を取り入れたり、いろんなアプローチで京劇を紹介したり、ということを続けています。劇場すべてがひとつの雰囲気、環境だというのを感じていただければと思います。打楽器がじゃんじゃん鳴ってるのが面白いとか、奇抜なメーキャップや、衣装の刺繍がきれいだとかね。立ち回りがすばらしいとおっしゃる方もいますし、もちろん役者の演技も含めて、楽しみ方、切口はたくさんあります。京劇は宇宙でおこることすべてがネタになる世界なんですよ(笑)。ですから一俳優としては、どんな演目がいいかというよりも、どんな演目でもまずは劇場に来ていただけたらうれしいですね。(談)

 (映画『花の生涯 -梅蘭芳-』公式サイトより)

 「チャイナネット」2009年4月3日

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