2009年5月12日    メールマガジン登録I-mode登録中国語版日本版
人民網日本株式会社事業案内  更新時間:14:33 May 12 2009

種を蒔く日本人

 農業経済博士の日本人が、青島農業大学日本語科の会話の授業を担当するという話を聞いて、教室の中は大騒ぎでした。

 「えっ、会話の先生は農業経済博士ですか、すごい!」

 「もしかして、六十歳のおじいさんかもね」

 ……

 翌日の会話の授業に、その先生ははやって来ました。何だ、おじいさんどころか、話題の経済博士はまだ二十代でした。

 「かっこいい--!」と一人のクラスメートが叫んで、教室のなかに笑いが溢れました。先生は黒板に名前を書き、元気いっぱいに言いました。

 「私は成田拓未と申します、成田空港から未来を開拓しに来ました」

 私たちは、また大笑いをしました。

 先生は本来、私たちと同じ大学の経済管理学院の嘱託研究員ですが、特別に会話の授業を担当することになったのです。

 やがて、先生は毎週金曜日の夜に、誰でも参加できる自主的な「農業経済ゼミナール」を行うようになりました。そこでは主に農業経済を研究し、発表、討論、演習などを行います。私たちは参加しているうちに、先生の研究分野がだんだん分かってきました。

 今、中国は「農業、農村、農民」の三農問題を抱えているといわれています。その問題の核心は、農業と工業との格差、農村と都市との格差、農民と市民との生活格差、それらの格差の拡大です。先生は、この問題を解決する方法の研究に取り組んでいるのです。

 私たちはゼミに参加して、中国の農業問題、つまり三農問題を理解し、責任感や使命感のようなものを感じるようになりました。                       
 「今度のゴールデンウィークを、先生はどう過ごされますか」ということを、聞く必要はありません。週末の休日はもちろんのこと、祝日の休日も、先生は研究室に必ずいます。コンピュータの前で、一所懸命に資料を調べたり、データを集めたり、論文を書いたりしているのです。そんな先生の姿を見ると、さすが研究者だなあと、私たちは感心します。

 しかし、先生は研究室に閉じこもっているだけではありません。農村の現地調査にもよく行きます。農家の人たちと一緒に働きながら、農村の現状を体験します。そして、農業経営の状態を見ながら、農民から様々な困難な問題を聞き取ります。

 真夏の時期、現地調査から一週間ぶりに帰って来た先生は、すごく日焼けして、別人のようになっていました。みんなは、先生を見て大笑いをしました。その日にあったゼミの内容を、私たちは忘れることができません。

 「三農問題と格差問題を解決するために『中華人民共和国農民専業合作法』が二〇〇六年十月三十一日に公布されました。その後、中国の合作社(注)組織が次々と出来ました。でも、現地調査に行くと、予備知識が足りない、経験がないという問題がたくさんあります。それを解決するには、人材を養成する機構を作る必要があります」

 「えっ、人材を養成する機構って……」

 私たちは、なんだかよく分かりませんでした。でも、これが始まりだったのです。

 その後、先生の招きで、日本の先生方が講演や現地調査などをして、中国の合作社と交流するようになりました。また、中国の合作社の組織者も日本の農業組織を視察に行きます。今、私たちの大学も先生の出身大学と友好関係をもち、盛んに交流しています。私たちは、分かっていました、それは交流だけに止まっていないことを。

 そして、ついに二〇〇八年三月十六日、青島農業大学に合作社学院が堂々設立しました。それは中国で最初の農民専業合作組織高等人材養成教育機構となります。そうです、先生の訴えていた人材を養成する機構が、ここに形となったのです。

 二〇〇八年九月から第一期の学生を受け入れ、いよいよ合作社学院が本格的に始まります。そこでは学生だけでなく、農民も合作社について学びます。現在、合作社を作る方法を問い合わせる電話がどしどしかかっています。学院の先生たちは、いそがしく指導を行っています。そのなかで、優れた知識と経験を備えている先生は、特に大きな役割を担っています。すでに、先生の指導のもとで、青島市にはいくつかの新しい農民専業合作社が出来ています。特に、什州市の養豚合作社、平度市の鶏卵合作社、平度市のりんご合作社は、めざましく発展しつづけています。

 「私は、ただ種を蒔いているだけです」と先生は言います。中国の三農問題に取り組む先生の蒔いた種は、これからの十年、十五年を経て、きっと美しい花を咲かせると、私たちは信じています。そのとき、みんなはきっとひとつの名前を覚えています。成田空港から未来を開拓しに来た成田拓未。

 (注)「合作社」は協同組合に相当するもの。

 (楊志偉 青島農業大学)

 特別提供:日本僑報社・日中交流研究所
 中国人の日本語作文コンクール特集

関連記事
  評 論
  中国メディアが見る日本 
  おすすめ特集

地方情報

北京|天津|上海|重慶|吉林|遼寧|河北|山西|山東|河南|江蘇|浙江|安徽|福建|江西|湖北|湖南|広東|広西|海南|四川|貴州|雲南|西蔵|青海|陝西|甘粛|寧夏|新疆|香港|澳門|台湾|黒竜江|内蒙古