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人民網日本株式会社事業案内  更新時間:14:48 May 12 2009

私の知っている日本人

 私の知っている日本人には野津(王光)子という七十代のおばあさんがいる。このおばあさんとの出会いで、初めて中日友好の意味がわかり、またその後私の日本語の学習にも大きな励みにもなった。

 それは大学一年の時両親とともに日本に旅行したときのことだった。旅行中のある日、夕日を浴びた神戸六甲山麓のレストランで食事をしていたところ、隣の灰色の髪の毛に丸いめがねをかけ、茶色の上着を着た、極普通の日本人おばあさんの姿が目に入った。ずっと両親と中国語で喋っていたせいか、おばあさんからの視線もよく感じる気がした。そしてその後おばあさんはいきなり「(イ尓)好、(イ尓)們从中国哪里来的?」(注)と話しかけてきた、 あまりにも突然のことでそれに流暢な中国語だったので、一瞬驚いた私だった。こうして私は優しそうなおばあさんとの会話を始めた。時には中国語、時には日本語だったが、おばあさんのこともすこしずつわかってきた。野津珖子といい、もともと小学校の教師だった。定年後中国の文化に興味を持ち、中国語の勉強を始め、もう十年以上続けてきた。よく中国の児童教育支援の募金活動の呼びかけに応じて、かならず毎年と言っていいほど中国語教室の有志たちと中国の貧困地域へ行って、現地の希望小学校建設ための寄付金や文房具などを届けている。更に「中国の貧しい農村には子供向けの面白い本が足りません」といって、日本の絵本を翻訳して、湖南省の山の奥へ送り続けてもいる。こうした野津さんの行動に感心し、無料でイラストを描き協力する画家もいるそうだ。私はおばあさんのお話を聞きながら、「もし私も何かささやかなことができれば」と思い、尊敬の念を禁じえなかった。

 神戸の美しい夜景を眺めながら、野津さんと楽しく話し合い、一晩の愉快な交流もあっという間に終わった。別れの際、野津さんはショルダーバッグから二冊の本を取り出し、「一冊は私が中国の子供たちとの交流の感想をまとめたもので、もう一冊は日本の子供向けの絵本ですが、もしできれば君がこの絵本を中国語に翻訳してくれないかしら」と。

 依頼を受けた私は、まるで中国の貧困地域の子供たちの期待を一身に引き受けたかのように、嬉しさや光栄に思う気持ち、そしてなんともいえない責任感がいっせいに涌いてきたが、「おばあちゃん、必ずやってあげる」と心の中で決意しました。

 帰国後、野津さんとメールのやりとりをしながら、さっそく翻訳作業に入った。その絵本は「鯨の赤ちゃん」と言う物語で、本は厚くもないし、毎ページの文字も十行足らずだったので、「これぐらいだったら、平気だよ」と自信満々だった。しかし、実際の難しさは予想外で、三種類の辞書を用意し、最新版の電子辞書を借りても、なかなか思う通りに作業は進まなかった。児童向けの絵本のため、擬声語が多く、子供が使うことばの意味が全くわからなかった。そのうえ、辞書に収録されていない言葉ばかりだった。たった一冊の絵本なのに……。「まいったなぁ!」とあきらめかけたことさえあった。

 落ち込んでいるときに、「頑張ってください」と野津さんの優しい笑顔が目の前に浮かんできた。数ヶ月が経ち、翻訳がやっと完成した。これは私の努力の成果というよりもおばあさんの期待と激励の結晶だ

 野津(王光)子という平凡な日本人のおばあさんとの出会いによって、私は初めて野津さんのように中国と日本の友好のため頑張っている多くの日本人の姿が見えた。また、はじめて、中日友好というのは口先の言葉ではなく、こつこつと活動するものとわかった。小さな水の流れも集まれば、最後に大河になる。このことを私は野津さんに教えられた。現在、日本語学習が疎かになるたび、困難にあった時に、いつも絵本の翻訳のことを思い出し、一衣帯水の国に住むおばあさんの優しい笑顔が目の前に浮かんでくる。
野津珖子さんは、私の最も印象に残る日本人だ?

 (注)括弧内の中国語は、「こんにちは、あなた方は中国のどちらからいらしたのですか」という意味。

 (欧陽展鳴 広東工業大学)

 特別提供:日本僑報社・日中交流研究所
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