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人民網日本株式会社事業案内  更新時間:15:51 May 13 2009

仲田和代

 二〇〇六年春アスカ文化交流有限公司の面接で和代と出会った。薄い化粧の優しそうな女性だという簡単な印象が残った。結局、スタッフの一人が「大学を原因不明で中退しているから、ちょっと心配だ」と私のことを評価したので、その日の面接は落ちた。そして、再会は半年後の夏の末だった。そのころ、アスカはスタッフ不足で、私も半年ぐらいやっていたガイドの仕事に飽きたところだった。和代は私のことを覚えていたので、「給料も安いし、たまに土日の休日出勤もありますが、よかったら一緒にがんばりましょう」と笑いながら、私の採用を決めた。

 大学を中退してから、バイトをたくさんしたが、アスカのような仕事ははじめてで、失敗ばかりして、大変だった。先輩である女性が、仕事に対し物凄く厳しい人だったので、よく彼女に叱られた。彼女に悪気がないことは分かっていたが、やはり時々落ち込んでしまった。その時、和代は「彼女は、自分にも厳しいから、気にしないで頑張ればよい」と慰めてくれた。

 彼女は部長という要職にありながら、営業、翻訳、通訳等のいろいろな方面で、自ら教えてくれた。どんな小さな仕事でも、出来上がった時、いつも私を褒めてくれた。その度、何かの声が心の中で響いているように、「よし、この期待に背いてはならないぞ」とエネルギーを感じ、前向きになった。部下の長所を見つけて、それを伸ばすことを、管理職にいた和代はうまくやっていたように思う。

 業務は、細かいが単純な仕事だった。ちょっと慣れてきたとき、興味のない仕事に対し、いい加減になった。最初のうち、和代はただ軽く注意しただけだったが、しばらくたっても、改善の様子がなさそうに見えたのだろう、ついに「こんな仕事、他人に迷惑だよ」と悲しそうな目で私に言った。仕事をはじめてから、よくミスで上司に叱られたが、あんな風に自分で自分を責めるのは初めてだった。なにより、自分を信じてくれている人を傷つけることほど悲しいことはないと思った。

 このような小さな出来事を積み重ねて、和代の部下として、彼女から仕事のやり方、社会人の人との関わり方、日本語、人生まで学んできた。彼女のやり方が一般的でないことは、わかっていた。滅多に上司の威厳を見せないし、会社の利益より社員であった我々の方を大切にしていたし、社員のために、友人である社長とけんかをしたこともある。でも、認めてあげたいのだ。和代がいたから、皆が一所懸命頑張っていた。

 アスカは企業であると同時に成都日本人商工クラブの事務所も兼ねていた。政府の正式な許可をもらっていない民間の友好団体であった。何かのイベントがある時、会社の日常事務と重なって、大変忙しくなる。どんなに苦労しても、彼女は最後まで乗り越えてきた。自分が長い年月この町にいた経験は、別の日本人のために役立つことがあると信じていた。中日両国の文化摩擦のせいで、不愉快なこと、つらいことが何回もあったが、和代は諦めず、ひたすら歩いてきた。一度も見せなかった悔し涙と引き換えに、和代は皆の尊敬・信頼をもらった。

 私にとって「日中交流」という大きなテーマはあまりも遠すぎるが、商工クラブの仕事を通じて少しは実感できた。楽しいことばかりではなくとも、和代は悲しみを乗り越えて、頑張ってきた。中国の人にもっと日本を理解してもらい、そして、ここに赴任してきた日本人が快適に生活できるように便宜を図る。小さなことばかりだが、立派なことだ。クラブがある程度の規模を保ち、両国の人々に信頼され、仕事の展開がスムーズなのは彼女がいたからこそ、と言い切っても過言ではないと思う。

 いろいろな原因で、当時のスタッフ全員はアスカから離れていった。私たちが時々会う時、和代は完全に私たちの親戚のお姉さんのようになってきた。悩みの相談に乗ってくれたり、職場の問題にアドバイスをしてくれたりする。私たちは、当時と同じようにいい関係ではあるが、「皆と一緒に仕事をしてきてよかった、あなたたちは私の大切な子供だ」と彼女が言ったとき、少し寂しそうだった。

 多分こんな考えを持っていたら、一生偉くなれないかもしれないことを、和代本人もわかっている。でも、彼女はやはり周りの人を大切にしたい。そしてその生き方で、我々を魅了した。そのちょっと現実はずれの考え方は理想的過ぎるかもしれないけど、確かな温もりを彼女の友達に与え、そして、人生を輝かせている。

 五・十二、四川ブン川大震災の時、久しぶりに和代と連絡を取った。非常時だから、彼女のところには問合せが多くて、大変忙しそうだった。

 「忙しいのは分かってるけど、年ですから、程ほどにしてください」

 「うるさい」彼女はそう言いながら元気な声で笑った。

 このように前向きに進んでいけば、中日の未来はきっとあかるいと信じている。

 (袁(王君) 国際協力機構JICA成都事務所)

 特別提供:日本僑報社・日中交流研究所
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