中国作家の日本訪問記(3)日本の右派の命門を掴む
文=劉方?
日本の右派の国際関係論は、単純な実用主義だった。自身のロジックを実証するために都合のいい例を探し、ロジックを覆す歴史的事実を目の当たりにしても直視しない。日本の右派の「命門(中国医学で生命の根源が存在するところ)」は気ままさと単純さだ。
右派シンクタンクのトップと諸葛孔明の「出師表」
日本の外務省やシンクタンクのスタッフは私が岡崎久彦さんと会うと知ると、いずれも岡崎さんの観点は日本政府を代表していないと述べ、時代遅れだと言う人さえいた。「あの方は変わっている」。案内役の大友さんは「右派だとは思わないが、実用主義者だ」と話していた。
日本訪問前、私たちは日本の右派系人物との面会を要望していた。なぜなら、日本の左派系人物は中国を訪問する機会が多く、中道系人物と中国国内で会うこともできたが、右派系人物に会う機会はめったになかったからだ。また、日本で右派勢力は国民に対する影響力が大きいので、直接彼らの観点と考え方を聞くことは価値があり、少なくとも、彼らのロジックチェーンの根拠を明確に理解することができると思った。
岡崎さんは自身を時代遅れとは思っていないどころか、自身の観点がますます日本国民の賛同を得ていると感じているようだった。
岡崎さんは1930年に中国大連で生まれ、今年79歳。外務省情報調査局局長やタイ大使を歴任し、現在、日本の外交シンクタンク・岡崎研究所の理事長兼所長を務めている。小泉純一郎元首相と密接な関係を持ち、同首相の靖国神社参拝を支持したキーパーソン、右派系の『新しい歴史教科書』の推進者として知られている。
岡崎さんとの面会は岡崎研究所の応接室で行われた。壁には岡崎さんによる書の作品――諸葛孔明の「出師表」と台湾の陳水扁前指導者との記念写真が掛けられていた。
日本の右派の国際関係論
岡崎さんは中国本土と台湾の関係ついて単刀直入に語った。「もし中国が長期的和平を望むのであれば、結論はただ1つ--台湾を放棄することだ。過去500年間、英国や米国と戦って勝利した国は1つもない。中国が台湾を占領すれば、アジア地域はバランスを失い米国もアジアにおいて威信を失うことになる。その後、米国は間違いなく対中国戦争を始め、中国は米国に負けるだろう。これにより、中国はチベット、新疆、さらに内モンゴルさえも失い、漢民族はこれら3地区から逃れる結果となる。我々日本には深い教訓がある。日本は米国に戦いを挑んだが、結果的に敗北し、台湾、朝鮮、満州を失った。中国は米国に敗北した時、ようやく台湾を早目に放棄すべきだったと気づくだろう。日本も同じ後悔をしており、満州占領後その歩みを止め太平洋戦争を起こさなければ、台湾、朝鮮、満州を失うことはなかったと考えられる」。
私は通訳の大友さんを通じて「ベトナム戦争で米国軍は撤退を余儀なくされた。こうした歴史についてどのように解釈しているか」と尋ねた。
大友さんが私の質問を通訳すると、岡崎さんは目をしばたたかせ、まるで聞こえなかったという様子で答えなかった。
岡崎さんに代表される日本の右派の国際関係論は、このような単純な実用主義、つまり米国に徹底的に打ち負かされた後たどり着いた実用主義のロジックだった。自身のロジックを実証するために都合のいい例を探し、ロジックを覆す歴史的事実を目の当たりにしても直視しないというものだ。
この時、79歳の岡崎さんが甘やかされて育ったわがままな子どもに見えた。
もちろん、岡崎さんはただ気ままに発言しているわけではない。中国の国内政治について何らかの分析を行い、多くの中国人を赤面させている。
面会が終わると、岡崎さんは私たちをエレベーターホールまで送ってくれた。その時、岡崎さんは申し訳なさそうに「私の話はあなた方を疲れさせてしまった」と言った。彼が言った「疲れさせた」」とは「不愉快にさせた」の意味だ。私は「よかったと思う。こうした面会はよいものだ」と答えた。岡崎さんは私が言った「よかった」の意味が分かったようだった。相手が何を考えているか、どのように考えているかを知れば、相手の「命門」が明らかになる。岡崎さんに代表される日本の右派の「命門」は、気ままさと単純さであることが分かった。
「チャイナネット」 2009年5月21日