茨城大・中国人留学生「日本の環境はすばらしい」
「歴史問題が原因で中日両国民の心にはわだかまりがまだ残っている。でもこれらの問題を差し置いて客観的にみれば、日本留学はやはり良い選択です」。茨城大学(茨城県水戸市)工学部・生体分子機能工学科に通う中国人留学生、トウ慧琳さん(女性)は華奢で小柄ながら、きっぱりとした口調でこう語った。
▽留学への堅い決意
当時高校2年生だったトウ慧琳さんは、「まだ幼すぎる」という父親の反対を押し切り、自分の力を証明したい一心で留学を決行した。「中国でまだ発展途上の専攻を日本で学んで帰国すれば、引く手数多の貴重な人材になれる」という考えが根底にあったという。
訪日当初、トウ慧琳さんは日本語学校を選択せず、一般高校2年に編入。2年後の大学入試では、留学生試験ではなく、日本人学生と同じ試験を受けた。
両親に「保護された」留学生とは違い、生活の全てを自分で解決するほかなかった。自身の留学生活の過去、そして勝ち得た収穫について語り出すと、トウさんの話は止まらなくなる。留学の経験は「知識」「生活」「心理」にまとめられるというトウさん。最も心に残っているのは39度の高熱を出した時のことだという。風邪薬を飲んでも熱が下がらず、高熱が数時間続き、「もうだめだ」と感じた時、病院に勤務する母親から聞いた「物理療法」をふと思い出した。アルコールを水で薄めて体に塗り、深夜2時を過ぎてようやく眠りに就いたそうだ。
茨城についてほとんどの人の最初の反応は、「放射能漏れが最も深刻な被災地のひとつじゃないか!」だ。1年間休学して茨城を離れる留学生や留学をあきらめ、帰国する留学生もいたが、トウさんはあきらめなかった。「放射能漏れが発覚したときは確かに恐怖心があり、放射線計を購入して恐る恐る計ったこともあったが、工業汚染の深刻な地域は茨城よりも空気が悪いことに気づいた」とトウさんは苦笑する。「何より日本の環境保護の取り組みはすばらしい。放射能漏れは事故とも人為的なミスともいえますが、それが私の留学の妨げになることはありません」。