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麻生首相の訪中から見た中日関係の未来と課題

 馮昭奎(中国社会科学院日本研究所研究員)

 中日両国は「戦略的互恵関係」を構築することで共通認識に達し、二国間関係の発展も楽観的ではあるものの、今後の中日関係に影響を及ぼす可能性がある一部の問題を両国は依然として正視する必要がある。

 麻生首相は訪中期間中、「日中両国ともそれぞれの国益を踏まえた外交を展開している。また、両国にはそれぞれの歴史、文化、伝統があるため、時には摩擦が生じることもある」とし、「将来にわたって日中で“共益”を実現していくことこそが、両国の発展、繁栄を後押しし、アジアや世界の平和と繁栄につながる」との考えを示した。中日関係の将来について、人々は比較的楽観的でも構わないと言うべきである。楽観的な見通しとして次のことが挙げられる。

 (1)ここ数年、日本国内では「国益」をめぐる熱い議論が繰り広げられており、「国益を外交の根本とする」思想がますます人々の心に深く沁みこんできた。「日本は他国との貿易によって生存するほかない。もし生存し続けたいならば、その他の大多数の国よりもっと平和で、なおかつ貿易にオープンな世界が必要だ」という米国の有名な歴史学者・外交官のライシャワー氏の忠告もますます多くの人々に認識されてきている。この傾向は対中関係に現われている。つまり「理性的穏健派」がますます優勢になってきているのだ。中日関係については、今は「和すれば双方に有利、敵対すれば双方とも傷つく」状況と言えるだろう。両国関係を発展させることが中日両国それぞれの国益に合致するものだという認識は、両国民の大多数の人々の間で共通認識となり常識となっている。

 (2)現在、世界が直面している3つの危機──金融危機、環境危機、疫病危機は世界各国、とりわけ世界の主要国に、人類内部の抗争や摩擦を減らし、協調を強化し、互いに協力し合い、力を集中させて人類共通の危機に対処することを「強制」している。「一衣帯水」の隣邦であり、環境問題で共通の利益をもつ中日両国は上述の危機に直面して、「協調が必要かどうか」はすでに問題ではなく、「どのように協調を強化するのか」ということが問題になっているのだ。周恩来元総理が提起した「小異を残して大同につく」という主張の中で、「大同につく」ことが両国関係にとってますます重くなってきている。

 (3)ブッシュ政権からオバマ政権に至るまで、中米関係は好ましい発展傾向を見せている。最近、日本では「中米関係の改善は日本に有利かどうか」についてちょっとした議論が起こっているものの、「中米対立を前提とした対中政策」といった類の主張はますます支持を失い、「日中米3国間関係のバランス」を求める政策や「日中米の戦略対話を推進すべき」といった政策の主張が日に日に台頭してきている。今後の長い時期において、日米の同盟関係に大きな変化が生じることはないと見られる一方、中米関係の改善は中日関係のさらなる改善を促進する可能性があると思われる。

 (4)長い間、歴史問題と台湾問題は中日関係の2つの障害となっている。ところが、ここ数年の両岸関係の発展が中日関係にもプラスの影響をもたらすことになるだろう。なぜなら、往年の日米軍事同盟の重要な目標はそれぞれが「先鋒」と「後方勤務」の役割を演じて「台湾海峡の有事」に共同で対応することだったからだ。ところが、オバマ政権が両岸関係の発展、両岸会談の深化に肯定と称賛の意を表明したことで、中国のある学者は「これは中米関係における台湾問題の戦略的な敏感さの度合いが実質的に低下し始めることを示すもので、中米が『台湾独立』勢力によって戦争に引きずりこまれる可能性も遠のきつつあることを予告している」と分析している。日本が米国に追随して「台湾海峡有事」に介入することで中日衝突を招くという可能性が徐々に小さくなり、中日関係に負の影響を及ぼす要因としての台湾問題の作用が弱まっていく可能性があると考えられる。

 (5)米国のサブプライムローンが引き起こした世界的な金融危機と経済衰退は、自由放任的な資本主義への反省および「さまざまな資本主義モデル」についての激論を引き起こした。日本は資本主義の国ではあるが、戦後の日本は「日本的特色」をもつ発展モデルを創造するとともに、少なからぬアジアの発展途上国に影響を与えた。改革開放以来の中国も戦後日本の発展の経験や教訓を参考にすることを非常に重視している。今回の金融危機をきっかけに、人々は、特定の国に適用できるだけでなく、すべての地域に適用できる21世紀に向かう「アジアの持続可能な発展モデル」を模索する必要があるとますます実感している。

 これと同時に、2007年に中国が日本最大の貿易パートナーとなったことをメルクマールとして、日本経済がアジア経済に融和する度合いやその範囲の広さ、程度の深さも著しく引き上げられてきた。日本が日増しに「脱亜」から「復亜」へと転換していくにつれて、中日両国は共同でアジアを振興させる事業の中で、「主導権を争うライバル」から協力し合うパートナーへと転換する可能性がある。われわれは多くの理由をもって中日関係の今後の発展について楽観しているものの、両国関係の発展に影響を及ぼすさまざまなマイナス要因に関心を持たないわけにはいかず、これらのマイナス要因をどのように克服していくかを両国の共同努力の課題とする必要もある。

 第一に、歴史問題においてわれわれは以前のような「歴史問題を解決することによってのみ、中日関係を発展させることができる」という「前提論」を改め、「歴史問題を真剣に解決する必要もあれば、中日関係の発展を推進する必要もある」という「同時進行」政策を取った。われわれも日本政府があの侵略戦争について何度も中国に謝ったことに気づいてはいるが、これは中日両国が「歴史的和解」を実現したことを意味するものではない。両国(もちろん、中日両国だけの問題ではない)が歴史的和解を実現していない状況のもとでは、中国人にとっての歴史問題のこうした「敏感さ」や「連動性」を変えるのは難しい。そして、あの戦争を経験したことがない日本人にとっても、なぜ中国人が歴史問題にこれほど敏感になり、ほかの問題と連動するのかが理解しにくく、「中国が『歴史カード』を出す」といった奇怪な論調までもが現われるに至っている。

 第二に、中国の平和的発展は「平和的振興」とも言われている。中国の「振興」にどのように対応するのか、「振興した」中国とどのように付き合うのかは、明治維新以来、日本がぶつかったことのない課題である。日本のメディアから見る限り、中国の「振興」に対する日本人の心理的反応は複雑かつ多元的なものだ。麻生首相は今回の訪中期間中、講演の中で「中国は、近年、急速な発展を遂げた。私は、中国の経済発展は、国際社会にチャンスをもたらし、それは、日本にとっても好機であると考える。しかし、一部には、中国の経済発展が、将来の軍事大国化につながるのではないかと不安視する向きがあるのも事実だ。私たちは、中国が近年、『平和的発展』という戦略を標榜し、恒久の平和と共同の繁栄をもたらす世界の構築に貢献していく決意であると承知している。そして、中国が、そのような決意にふさわしい行動をとっていくことにより、地域や世界に不安や懸念を生じさせないことを期待している。今後とも、日中両国が、軍事大国にはならず、また、互いに脅威となることなく、平和的な発展に向けて協力してゆく。それこそが日中両国が国際的に期待されていることだと確信している」と表明。中国のメディアは麻生首相のこの講演を報道する際、「麻生首相が北京で講演、『中国脅威論』に反駁」という見出しをつけた。実は、麻生首相が強調したのは「それこそが日中両国が国際的に期待されていることだ」ということだ。日本国内の世論から見れば、日本のエリート層は中国の急速な発展に対して心理的なアンバランスを生じ、ひいては恐怖感まで覚える一方、中国の急速な発展の中で出てきた問題、例えば環境の悪化、貧富の二極化、地域差や都市と農村の格差の拡大化、腐敗問題などを見て納得できない気持ちになり、一部の日本人は、依然として中国を軽視し、日本のメディアもよく中国のあら捜しをすることによって「日本はまだ大丈夫」ということを証明しようとしている。

 第三に、まさに日本のある外交官が指摘しているように、「民族主義」を抑制し、それが両国関係発展の障害とならないよう防止する必要がある。今後とも、中日両国は「民族主義によって民族主義を刺激する」という悪循環の発生を防止する必要がある。

 第四に、釣魚島の主権紛争と東海ガス田の開発問題は両国の間の際立った矛盾となっており、両国関係に影響する主な障害にエスカレートする可能性がある。海洋資源の開発という差し迫った必要性と、なかなか決することのできない主権紛争との間の鋭い矛盾を解決できる現実的で実行可能かつ互恵共益の措置をどのように見つけ出すかに、中日両国の知恵が試されるところだ。

 第五に、中日両国指導者が今回の会談の中で言及した「ギョウザ事件」は、中日両国民の間に相互理解が不足し、感情の面で脆い一面があることを典型的に反映したものだ。日本では、「ギョウザ事件」は日本メディアの過熱報道を経て、一種の「シンボル」となり、「しるし」となってしまった。それは、日本に輸出される中国製食品が「安全でなく」、極端な場合は「有毒だ」ということを意味するものだ。こうして「ギョウザ事件」は、中国に好感を持つ日本人の比率の低下を招く主な原因となった。多くの日本の専門家は日本向けの中国輸出食品メーカーを参観し、衛生状況の良さが日本の食品メーカーを超えるところまであることを認めた。また、日本の厚生労働省が統計した中国からの輸入食品の不合格率は、上位10カ国のリストに入っていないうえ、中国の不合格率はアメリカよりも低い。しかし、中国から輸入される食品の数が非常に多いため、絶対数から見れば中国の食品に関わる案件はそれに従って比較的多くなっている。これはまさしく中日食品貿易関係の密接さを表わすものだ。とは言え、両国関係と両国民の感情に影響する突発的事件を防止するメカニズムを構築することは、両国が直面しなければならない課題となっている。

 「北京週報日本語版」2009年5月15日

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