いよいよ焦臭くなってきた米国・イラン関係
サウジアラビアの各大手メディアは13日、イランがイスラム革命防衛隊による駐米サウジアラビア大使の「暗殺を企てた」とされる事件を大々的に報じた。報道はイランへの激しい攻撃口調に満ちており、事件をさらにエスカーレート、複雑化させるものだった。
■真相は不明
イランが中米サウジアラビア大使の暗殺を企てたとの尋常でない告発は、米国の政界とメディアの強い関心を呼んだ。クリントン米国務長官は12日「国際法と米国内法を公然と犯すものであり、イランはその行為の責任を負わなければならない」と指摘。米下院国土安全委員会のキング委員長(共和党)は「暗殺計画は米国に対する戦争行為だ」として、「軍事的選択肢を機械的に排除するわけにはいかない」と強調した。米財務省も同日、イラン・イスラム革命防衛隊とヒズボラへの支援を理由に、イランのマハン航空への制裁を発表した。
米国の非難に対して、イラン政府は強く反論。ラリジャニ国会議長は「でたらめだ」「米国は中東の同盟国を次々に失っているため、地域衝突を煽り立てて自らの失敗を覆い隠そうとしている」と述べた。イラン・イスラム革命防衛隊の准将もこれに先立ち「外交政策で失敗した米国は何とかして国際世論の関心をそらそうと、イスラム諸国間にいわれない対立を作り上げようとし始めている」と指摘した。
米国や中東の一部メディアも事件の真実性に疑問を呈し始めている。あるエジプト紙は13日付で「いわゆる駐米サウジアラビア大使暗殺は、イランを懲らしめるために米国が作り上げた口実に過ぎない。もし『十分な証拠がある』のなら、米国は国際社会から十分な支持を得ることができる。たとえイランに対して開戦しても、余り多くの非難にはさらされないだろう」と指摘した。
ある米国のアナリストは、イラン政府がこの件に絡んでいる可能性は低いと指摘する。第1に、イラン・イスラム革命防衛隊の手法と異なる。第2に、イランにとって、このような行動は得るものより失うものの方が多い。さらなる経済制裁、さらには軍事攻撃を招くだけで、その国家安全保障戦略に沿わない。第3に、イラクやアフガニスタンに駐留する米軍、あるいはバーレーンにいるサウジアラビア関係者など、より容易な攻撃目標がある。第4に、現在の地域情勢はイランに有利だ。米軍がイラクのフセイン政権とアフガニスタンのタリバン政権を倒したことで、地域におけるイランの政治的・経済的影響力はかえって強まった。今こうした行動に出る必要はない。第5に、イランの指導者は、いくつかの発言は「常軌を逸している」ように聞こえるが、国益を守る点では「理性的」かつ「慎重」だ。彼らは米国との戦争に自国が耐えられないことも、さらなる制裁と孤立が自らの統治能力を弱めることもよく理解している。このため一部アナリストは、イラン政権内の反ハメネイ師勢力がハメネイ師を窮地に追い込み、さらには失脚させるために今回の暗殺計画を企てた可能性があると指摘している。(編集NA)
「人民網日本語版」2011年10月14日