改革開放の実施から約30年間、驚異的な成長を続けてきた大都市・北京。その真っ只中に当たる1994年、あこがれや期待を胸に、私は北京の地を踏んだ。アルジェリア人の私にとっては全てが180度異なる未知の世界だったが、伝統文化が色濃く残る街の雰囲気にすぐに引き込まれた。それから18年、成長の道をひたらす突き進み、目覚しい変化を遂げる北京を目の当たりにしてきた。街中には高層ビルが立ち並び、人々は成長がもたらした物質的な豊かさを享受している。だが一方で、高騰を続ける物価や深刻な交通渋滞など暮らしを圧迫する要素も増えつつある。こうした生活に、息苦しさを感じ始めているのは私だけではないだろう。
1994年の北京は、時間がゆったりと流れる落ち着いた街だった。通りを行き交う自転車には、どこか安心感を覚えた。欧米先進国のような経済的負担を背負うこともなく、今後の生活を案ずる必要もなかった。中国に来て、社会主義や平等社会が持つ本当の意味を知った。当時は誰もが同じ店で同じ商品を買った。 留学生だった私が中国政府から受けていた奨学金は1カ月450元(今の為替相場で約5625円)。これで1カ月の生活が十分にまかなえた。中国の若者たちも、高級車や高級住宅の購入を買ったり、高級ホテルで結婚式を挙げたりという考えはなかった。
こうした質朴でたんたんとした生活が好きだった。改革開放政策が推し進められる中、今後の生活は、希望にあふれていた。実際に北京はその後も順調に発展を続けた。高層ビルが林立し、高級車が北京の広い道を埋め尽くし、高級デパートが北京の夜を照らすようになる過程を、私は目の当たりにしてきた。中国は今や世界第2の経済国だ。
物にあふれた北京は、「豊かな」都市になった。少なくともそう見える。しかしそれは富裕層にとっての話で、一般所得層はこの街で「豊かな」暮らしを送ることはできない。英経済誌エコノミストの調査・研究機関EIUが2月21日にまとめたランキングによると、北京の生活費は世界59位。世界的に見れば、北京の物価はそれほど高くない。しかしそれは欧米先進国と同水準の生活を送った場合の生活費であって、住民の平均収入を考慮したものではない。平均収入に対する生活費であれば、北京は世界一になってもおかしくない。
例えば、家政婦を雇う費用(中国では共働きが普通なため、核家族では家政婦を雇う必要がある)と子どもの学費・教育費はいずれも最低3500元(約4万5500円)かかる。これだけで子どものいる家庭は少なくとも月に7千元(約9万円)必要となる。病気やけがで医者にかかれば、すぐに500元(約6500円)が飛んでいく。これに高騰を続ける食品価格が追い打ちをかける。北京都市部の2011年1年間の一人当たり実収入は3万2903元(約42万7739円)。1世帯3人で計算すると、年間の世帯収入は約12万元(約156万円)となる。月平均で約1万元(約13万円)だ。つまり、家政婦料金と子どもの教育費だけで月収の7割が消える。日本の勤労者世帯(平均世帯人員2.82人、世帯主の平均年齢45.5歳)の2010年の実収入は、1世帯あたり1カ月平均が47万1727円だから、その7割とすると実に33万円に上る。ここから、その負担の大きさが見て取れるだろう。
現在、物価が高騰し、生活への負担が日増しに大きくなっている。こうした状況は、18年前には想像も付かなかった。18年間、成長を求めてひたすら突き進んできた北京。その速度についていけず、置き去りにされようとしている人々がいる。息切れをして倒れてしまう前に、少しペースを落としてほしい。そうすれば、道端に咲く野花のようにけなげに生きる人々にも視線が向くはずだ。(人民網アラビア語部外国人専門家 ファイザ)
「人民網日本語版」2012年3月26日
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