中国五輪の医師が飛行機内で日本人急患を救助
中国時間22日未明3時、北京発英国ロンドン行きの航空機CA937便に乗っていた日本人・南本喜久枝さんが突然ショック状態に陥り、意識不明に。この緊急事態に、機内では「機内に急病の患者さんがおられます。医師や看護師の方がおられましたら、すぐに係員に申し出てください。助けを必要としています」との放送がなされた。中国国営の通信社「中国新聞社」(電子版)が報じた。
機内放送の呼びかけに、ロンドン五輪・中国代表団の服を着た乗客が立ち上がり、「自分は中国陸上チームの担当医師・周海強(61)で、女性を助けたい」と名乗り出た。
周医師はなんと日本語も堪能で、状況を把握するために南本さんの夫に様子を尋ね、即座に応急措置を施した。
乗務員の趙願含さんが見た時、ショック状態の南本さんの顔色は真っ青で、両目を閉じていたという。妻の突然の出来事に南本さんの夫も慌てふためいた様子で、意識を取り戻させようと、妻の頬を叩いたりしていたという。当時、乗務員も敏速な対応をし、すぐに乗務長に知らせ、機内放送で助けを求めた。搭乗していたさまざまな国籍の乗客も何か助けになればと、南本さんを取り囲んだが、応急処置の仕方が分からず、手が出せない状態に。南本さんと同じくエコノミークラスに座っていた中国の射撃チームと陸上チームの関係者も次々にやってきたという。
そんな時に、周医師が救助を名乗り出、中国の代表選手やコーチらは、南本さんが横になれるように自らの席を空けて立ち上がった。南本さんを寝かせた周医師が鼻と上唇との間にある溝・人中(にんちゅう)やこめかみの「太陽穴(たいようけつ)」と呼ばれるつぼを刺激するなどの措置を施すと、南本さんはじょじょに意識を取り戻したという。
その後、周医師は中国陸上チームの梁松利コーチに荷物の中から血圧計や血糖値測定器を取るように指示。当時、南本さん血圧は測定不能なほど下がっており、血糖値もかなり下がっていたといい、周医師は取材に対して、「血圧が極度に低まり、心臓の動きが弱まったため、脳が酸素不足になり、ショック状態になっていた。もし処置が遅れていたなら、命の危険さえあった」と語った。
国家体育総局運動医学研究所の主任医師だった周医師はすでに現役は退いているものの、スポーツ選手のケガなどの分野の専門家であるため、今回五輪代表チームに同行していた。2008年の北京五輪のマラソンで銅メダルを獲得し今回も中国代表に選ばれた周春秀選手も以前、ケガをした際に周医師の助けで回復し、現在は良い調子を保っている。周医師は過去に、日本で12年間、留学し、仕事についていた経験があるため日本語も堪能だという。さらに医師としても優れた技術を持つため、今回の救出劇が生まれた。
約30分に及ぶ応急措置・観察の結果、意識を徐々に取り戻し、心拍も落ち着いた南本さんは、周医師に、「気分も大分よくなり、落ち着きました。ありがとうございます」と夫と共に何度も感謝を述べた。(編集KN)
「人民網日本語版」2012年7月24日