預金準備率引き下げは政策の方向転換か
中国人民銀行(中央銀行)は先月30日の晩に、12月5日から預金業務を取り扱う各種金融機関の人民元建て預金の預金準備率を0.5ポイント引き下げると発表した。この重大なニュースは多くの人にいささか驚きをもって迎えられた。
人民銀が預金準備率を引き下げるのは約3年ぶりのこと。2010年1月18日から2011年6月20日までの間に、人民銀は12回にわたり連続して引き上げ調整を行い、準備率を計600ベーシスポイント引き上げ、過剰な流動性を回収し、物価の急激な上昇を抑制した。今回の引き下げ調整後の預金準備率は、大型金融機関が21%、中・小型金融機関が17.5%となる。
▽直接の原因:銀行システムの流動性不足を緩和するため
国務院発展研究センター金融研究所の巴曙松副所長(中国銀行業協会チーフエコノミスト)は、「今回、預金準備率を引き下げ調整した直接の原因は、銀行システムにおける流動性不足の局面を緩和するためであり、通貨政策の的確性、柔軟性、先見性を十分に体現するものといえる」と話す。
中国交通銀行の連平チーフエコノミストによると、現在の銀行業は資金不足に陥っており、預金に対する貸出金の比率(預貸率)が75%の上限を超える銀行がますます多くなってきた。人民銀は金融機関に対し、産業政策に合致したミクロ企業や「三農」(農民、農村、農業)といった弱い部分への貸出金の投入を強化し、進行中や継続進行中の国の重点プロジェクトにおける資金需要を満たし、住宅をめぐる社会保障政策としての安居プロジェクトの建設を支援するよう求めている。だが商業銀行が要求に応えようと思っても、資金不足のために相応の資金を貸し出す力がない。「今回の預金準備率の引き下げ調整により4千億元の資金が出回ることになり、銀行の資金貸出能力の強化にプラスになる。来年1月には貸出資金の額が増え、1兆元を超える可能性があることを踏まえると、現在の預金準備率引き下げ調整には通貨政策の先見性が体現されているといえる」という。
また一方では、流動性をめぐる状況の変化が引き下げ調整に実行可能性を与えたといえる。
第一に、海外から中国に流入する資金の減少と貿易黒字の縮小により、10月の外国為替資金残高は248億9200万元に減少し、単月の数字としては2007年12月以来の減少となった。外国為替資金残高とは、人民銀の外貨資産の購入に応じて市場に投入された本国通貨であり、外国為替資金残高が増加すると、基礎通貨の量を直接増加させ、通貨の乗数効果によって、流通する人民元が急速に増加することになる。巴副所長は「中央銀行の預金準備率引き上げの狙いは、外国為替資金残高の増加がもたらした流動性の新たな増加へのリスクヘッジにある。今は外国為替資金残高が減少して市場の流動性供給が不足するとみられ、これにより預金準備率引き下げの余地が出てきた」と話す。
第二に、ここ2-3カ月の間に人民銀の満期手形が大幅に減少し、人民銀の通貨へのリスクヘッジ圧力が緩和されたため、預金準備率を引き下げる可能性が出てきた。