米国が原油輸出を増加、世界エネルギー構造を変えるか
このほど海外メディアから、興味深い情報が伝わった。世界最大の石油輸入国である米国が、原油輸出を増加させるというのだ。人民日報が伝えた。
同メディアの報道によると、シェールオイルの採掘に使用される技術(高圧の水注入によるシェール層の破壊)等の進歩により、米国国内の原油生産量が近年増加している。今年10月初旬現在、米国国内の1日当たりの原油生産量は660万バレルに達し、1995年ぶりの高水準となった。生産量の急増により、英国の石油会社やBPとロイヤル・ダッチ・シェル等の世界石油大手は、米国政府に輸出申請を提出し、米国産の石油の輸出を求めている。同メディアは、「世界最大の石油輸入国である米国は、エネルギー自給、さらにはエネルギー輸出の方向に向かい邁進している。このすう勢は将来的に、世界エネルギー構造に影響を及ぼすだろう」と判断した。
米国は長年に渡り、海外石油資源に過度に依存してきた。そのため、中東、南米、北アフリカ等の石油産出国では、米国の姿が見え隠れしていた。これらの地区の動乱の裏には、石油を巡る利益があるのではと懸念されてきた。石油を命脈とする米国がエネルギー自給を実現し、本当に石油輸出国となり、世界エネルギー構造に影響を及ぼすことなどあり得るのだろうか。もし米国の石油輸出の増加だけを判断材料とするならば、あまりにも単純な判断と言わざるをえない。
まず、米国が石油輸出を少し増加したところで、世界最大の石油輸入国としての地位に変化が生じることはない。過去10年間に渡り、米国は一部の原油(1日当たり10万バレル未満)をカナダに輸出してきたが、原油輸入量は1日当たり900万バレルに達している。たとえBPやロイヤル・ダッチ・シェル等による輸出申請が許可を得て、輸出量が増加したとしても、膨大な輸入量と比較すれば無に等しい。いわゆる自給自足との間には大きな開きがあり、石油の純輸出は遠い先の話だ。