ソニー撤退、2千人超す雇用は 岐阜・美濃加茂
【志村英司、増田勇介、連勝一郎】日立が8月にテレビ生産を終え、今度はソニーが撤退??。岐阜県内では企業誘致の「勝ち組」といわれた美濃加茂市で、工場の減産・閉鎖が相次ぐ。「将来どうなるのか」。市内最大の2千人以上の雇用の場が失われることに、地元では不安の声があがった。
美濃加茂市のソニーEMCS美濃加茂工場は、市内に住む約2600人の日系ブラジル人の最大の就職先だ。この工場の閉鎖が発表された直後の19日午後5時すぎ、仕事を終えた従業員が次々と正門から出てきた。
「以前いた茨城の工場は震災の影響で閉鎖。美濃加茂に転居し、1年半前から働いているが、派遣先から何も聞かされていない」。日系ブラジル人の男性(37)は心配そうな表情を浮かべた。12年前に来日し、妻(36)もここで働く。子どもは中学生。「将来がとても不安だ」と言い残して工場を後にした。
沖縄県出身の男性(28)は7月に三重県から移ってきたばかり。「携帯電話関連の仕事がしたいと思っていた。携帯電話の修理をしていて、念願かなってずっとここで働くつもりでした」と残念がった。
別の男性は「こういうご時世だから仕方がない」とあきらめの表情を見せた。
閉鎖に伴い、地元自治体の税収はもちろん、下請け、従業員の住まいや買い物など影響は多方面に及ぶ。美濃加茂市によると、工場には約800人の正社員を含む約2400人がおり、半分が市内在住だという。
同市の伊藤誠一産業建設部長は「引き留めは難しそうなので、他社への工場売却を検討してもらい、新たな雇用の場を確保したい」と話す。美濃加茂商工会議所の鈴木登会頭(66)も「進出から約30年、こんなに早く閉鎖とは。地元経済が疲弊してしまう」と懸念する。
県によると、近年では2009年に従業員840人のパナソニック子会社の岐阜工場(大野町)が閉鎖された。今回の閉鎖は、過去10年では最大の規模になるという。宗宮康浩・商工労働部長は「影響は大きい。直接の雇用だけでなく、関連会社や地元の消費の落ち込み、人口流出などの懸念もある」と指摘する。
県や美濃加茂市はそれぞれ、週明けに会議を開いて対応策を協議する。岐阜労働局とも連携した協議会を来週にも立ち上げるという。
asahi.com 2012年10月21日
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