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AKBが歌ういじめ社会、5年後の共鳴

「軽蔑していた愛情」の通常版CDジャケット写真=デフスターレコーズ提供

 【岩沢志気】いじめや自殺をテーマにして2007年に発売されたAKB48のメジャー3枚目のシングル「軽蔑していた愛情」が今年、ネット上で話題になった。4月からの半年に全国の学校で14万件のいじめという現実。5年前の歌が共鳴したのか。

 注目を集めるようになったのは今年7月。大津市の中学生のいじめ自殺が報道され始めた時期と重なる。

 ♪いじめが「あった」とか「なかった」とか 今更アンケートを取っても

 ♪責任転嫁のプロセスで 偉い人を泣かせる

 こうした歌詞が「大津の問題と似ている」とネット上に書き込みが相次いだ。「私もいじめられていた。でもこの曲に救われた」「これはいじめられている人から先生や傍観者へのメッセージだと思う」??。

 10月初旬には、AKB48がテレビの音楽番組で披露するというデマも流れた。

 作詞はAKB48の総合プロデューサー秋元康さん。この曲はどのようにして生まれたのか。

 曲づくりをしていた06年後半も「自殺予告」の置き手紙が各地に置かれるなど、いじめ自殺が問題になっていた。秋元さんは「何かメッセージを流さないといけないと思った」。AKBにもいじめを受けた経験があるメンバーがいた。彼女たちを通して見える、現代の少年少女の姿を歌詞に投影させたという。

 ♪軽蔑していた愛情 裏腹に飢えているの 不安に気づかぬふりしながら やさしい目 探してた いつでも…

 いじめはずっとあるが、それが大きな問題になった今年、「アイドルが歌っていることで(同世代の)意識に残っていた」この曲が呼び戻されたのではないか、と秋元さんはいう。

 ただ、曲はいじめの解決策を示しているわけではない。秋元さんは「何か書いたとしても、当事者は『そんなに簡単じゃない』と思うだろう。だから、言葉にできなかった」と明かす。

 それでも、共感が広がったのはなぜか。

 「自分たちのことをわかってもらえる安心感があるのでしょう」。いじめ問題を受けた大津市の第三者調査委の委員、教育評論家の尾木直樹さんはいう。この曲が描くのは、大津の問題も含め、いま子どもたちの中で起こっている出来事そのものだとも。「毎朝、学校の先生に聴かせてもいいぐらいです」

 AKB48やソーシャルメディアに詳しい批評家の濱野智史さんは、「会いにいけるアイドル」というコンセプトで人気を集めたAKBが、一方では「秋葉原のアイドル」と軽く見られていたと指摘。「そういう経験をしてきた彼女たちが歌っていることで、この曲が現在のいじめの状況とシンクロするのでは」とみる。

 AKB48は8月、初めて東京ドームで公演。メンバーの選曲で、この曲が久しぶりに披露された。

 大津の問題をきっかけにした文部科学省の緊急調査で、今年度の上半期に全国の小中高校でいじめが約14万4千件あったことがわかった。昨年度は、全国の学校が把握したいじめ件数は約7万件。半年で前の1年の2倍になった。

 「こういうテーマの曲がまた必要とされるときに、書くこともあるかもしれない」と秋元さんは話す。その時は、どんな状況になっているのだろうか。

 asahi.com 2012年11月23日

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