【第61回】 新しい外商投資モデルの外商投資パートナーシップ企業について
中国における外商投資企業の設立に際して、その投資モデルとして、これまでは合弁、合作、独資といった、いわゆる「三資企業」を挙げることができましたが、2010年3月1日より、「外国企業または個人による中国国内パートナーシップ企業設立管理弁法」(国務院2009年11月25日公布、以下、「弁法」という)が施行されることで、従来の「三資企業」に加えて、外商投資パートナーシップ企業を新しい投資モデル形態として利用することが可能となりました。
1 外商投資パートナーシップ企業の形態および投資制限
「弁法」2条によれば、外商投資パートナーシップ企業とは主に次の二つの形態のことを指します。
1) 2つ以上の外国企業または個人により中国で設立されたパートナーシップ企業
2) 外国企業または個人と中国の個人、法人、その他の組織により中国で設立されたパートナーシップ企業
なお、外商投資パートナーシップ企業の設立について、中国の外商投資産業政策に合致しなければなりません。よって、以下のいずれかに該当する場合には、外商投資パートナーシップ企業を設立することはできません。
1) 「外商投資指導目録」に定められる禁止類に該当する場合
2) 「合弁に限る」、「合作に限る」、「合弁・合作に限る」、「中国側の持分支配」、「中国側の相対的持分支配」が明記されている場合
3) 外資出資比率に制限が設けられている場合
2 外商投資パートナーシップ企業の設立プロセス
2010年3月1日より施行された「外商投資パートナーシップ企業登記管理規定」(国家工商行政管理総局2010年1月29日公布、以下、「規定」という)において、外商投資パートナーシップ企業の設立プロセスについて明確に規定されています。
外商投資企業を設立する場合、国家発展・改革部門による審査、商務部門による審査、工商部門での企業登記の手続を経ることが一般的であり、投資者がこれらの諸手続を完了するまでには、通常の場合でも約数ヶ月はかかります。
これに対して外商投資パートナーシップ企業の設立手続は非常に簡略化されており、上述の国家発展・改革部門、商務部門による審査は必要がなく、出資者が工商部門にて直接登記手続を行うことができます。この場合、早ければ即日、遅くても20営業日以内に登記が可能となります。
商務部門による審査が不要となることで手続面が簡素化され、設立時間を大幅に短縮できる点は、外商投資パートナーシップ企業設立の大きなメリットとなります。
3 外商投資パートナーシップ企業の設立に関する留意点
1) 中国側パートナーに対する規制
パートナーシップ企業のパートナー(出資者)は2種類に区別されます。1つは企業の債務に対して無限連帯責任を負うパートナー(以下、「普通パートナー」という)であり、もう1つはその引き受けた出資額を限度として、企業の債務に対して有限責任しか負わないパートナー(以下、「有限パートナー」という)です。「パートナーシップ企業法」の関連規定によると、中国の国有独資会社、国有企業、上場会社および公益事業機関、社会団体が普通パートナーになることは禁止されています。そのため、外国企業または外国人が中国側のパートナーを普通パートナーとして共同で外商投資パートナーシップ企業を設立しようとするとき、中国側が普通のパートナーになる資格を有するか否かを確認する必要があります。
2) パートナーの出資形態および責任
パートナーの出資形態について、普通パートナーは貨幣(人民元または自由に兌換できる外貨)、現物、知的財産権、土地使用権などの財産権利、および労務をもって出資することが認められます。一方、有限パートナーは、労務による出資が認められません。外商投資パートナーシップ企業を設立する際、各パートナーがどのような責任を負うかについて明確に約定しておく必要があるでしょう。
なお、上述2でご説明したとおり、外商投資パートナーシップ企業の設立に際し、商務部門による審査が不要となる代わりに、工商部門による外商投資産業政策に合致する説明文書の審査作業が必要となるわけですが 、もっぱら企業登記を担当する工商部門にとっては経験したことのない業務内容であり、実際の手続時において、何らかの問題が生じる可能性も考えられますので、今後、工商部門を含む行政機関の具体的な対応にも留意しなければならないでしょう。
作者:韓晏元 潤明法律事務所パートナー弁護士 神戸大学博士(法学)
作者: 李航 潤明法律事務所弁護士 神戸大学法学修士(同大学法学研究科博士後期課程中退)
「人民網日本語版」2010年3月11日