【第71回】外資利用の新しい方向性を示した国務院9号令について
1 9号令の公布背景
アメリカ発の金融危機の発生以降、国際的投資活動は低迷しており、この影響を受けて、2008年および2009年の中国における外国直接投資総額も以前に比べると下降線の状態です。今年に入ってから、世界規模で徐々に景気が回復傾向に向かっており、国際的投資活動の活発化が再び期待される一方、中国政府はこれまでの外資誘致政策を調整し、外資利用に関する新しい方針を策定しています。
2010年4月13日、国務院は「外資利用作業のさらなる改善に関する若干意見」(以下、「9号令」という)を公布し、外資利用構成の最適化、中西部地区への外資誘致、外資利用方式の多様化、外商投資管理体制改革の推進、良質な投資環境の構築といった5つの側面から、今後の外資利用政策の方向性を打ち出しました。
2 9号令の主な内容
9号令の大まかな内容と外国投資者としての留意すべき点は以下の通りです。
(1) 外資利用の構成
外資利用の方向を示す「外商投資産業ガイドライン」が修正され、より幅広い産業分野が開放されることで、今後さらに多くの外国資本の参入が認められるようになります。また、ハイエンド製造業、ハイテク企業、現代サービス業、新エネルギー・省エネルギーの環境保護産業への外商投資が奨励され、低価格による土地の利用が可能になります。
その一方で、エネルギーを過度に消費し、環境を汚染する産業は制限されるようになります。
また、ハイテク企業、地域本部、研究開発センター、調達センター、財務管理センター、決済センターの設立、アウトソーシング業務の遂行が奨励されるようになります。これにより、省エネで環境への配慮がある産業やサービス業が奨励の対象となり、加工貿易などエネルギーを過度に消費する産業は、制限対象となり、中国における生存空間がますます縮小していくことが予想されます。
(2) 中西部地区への外資誘致
中国の中西部地区への投資方向を示す「中西部地域外商投資企業優位産業目録」も改正されます。これにより、中西部における労働集約型産業への外商投資の奨励が明確にされました。政府は中西部地区に適用する企業所得税優遇政策を続けながら、東部地区の外商投資企業による中西部への移転を奨励し、関連利便措置を提供していくことになります。