2009年6月11日    メールマガジン登録I-mode登録中国語版日本版
人民網日本株式会社事業案内  更新時間:15:02 Jun 11 2009

【第25回】「表見代理」の認定および対応策 (2)

 3 「表見代理」が成立した裁判例

 (事例1)

 工事建設業者A社は、不動産開発会社であるB社と某プロジェクトの工事建設請負契約を締結し、B社側の甲(職位は「部門経理」)が当該プロジェクトの担当者としてB社の名義で請負契約に署名・捺印しました。竣工後、A社が工事にかかる請求代金の明細を甲に提出し、甲はこれを確認し署名を行いました。その後、A社が甲に確認された金額をもってB社に対して代金を請求したところ、B社は当初のB社側のプロジェクトの担当者であった甲の職務が竣工後にすでに解除されたため、甲の請求金額の確認行為がB社にとって無効であることを理由に、当該代金の支払いを拒絶しました。

 本件において、甲が請負契約に署名した行為がB社を代理してなした行為であることについては双方とも異議がないものの、職務が解除された後の甲がなした請求金額を確認する行為がB社にとって有効であるか否かについては意見が異なり、すなわち甲の行為が「表見代理」と認められるかが争点となりました。本件を審理した中級裁判所は、双方ともに甲の代理権に関する委任状、授権書またはこれに相当するものを一切提出できないという状況下において、甲がB社の名義でA社と請負契約を締結した事実、およびその後当該プロジェクトにかかる一連の業務を全面的に担当してきた経緯を考慮し、加えてB社が次の3点について、すなわち(a)B社が甲の職務が解除されたことをA社に告知したか否か(b)A社が甲の職務が解除されたことを知り得たか(c)利益を獲得するためにA社が甲と悪意の共謀があるか否か、そのいずれも証明できる十分な証拠が提出できない事実を鑑み、甲の行為を「表見代理」として認定し、それによってもたらされた法的効果(甲に確認された請求金額通りA社に代金を支払う)がB社に帰属すべきという旨の判決を下しました(【2008】昆民一終字第22号)。

 (事例2)

 A社が自社の対外的業務を担当する社員の代理権を明確にするために、その取引先である各社にA社の社員と契約を締結する際、A社からの捺印または当該社員に対する授権書がない限りは当該契約を無効契約とする旨の「契約の締結に関わる授権に関する声明」(以下「声明」という)を送付しました。A社の取引先の一つであるB社も「声明」の内容を確認した上でこの「声明」に捺印しました。

 その後、A社の社員である甲、乙が前後して関連業務のためそれぞれB社と契約を締結しましたが、いずれも「声明」に要求されているA社の捺印または書面による授権はありませんでした。係る業務が完了した後、B社の代金支払の請求に対して、A社は甲の締結した契約の代金のみを支払い、乙の分の支払いについては応じない構えを見せたため、B社はこの未払代金を請求するために訴訟を提起しました。

 B社の請求に対しA社は、「声明」はB社から確認を受けており、「声明」に定めている要件を満たさない甲および乙の行為は無権代理であり、このような無権代理行為に対してA社の事後の承認がない限り無効になるべきであるが、甲および乙がB社と締結した契約はそれぞれ別の契約であり、A社は甲が締結した契約のみを事後承認するものとし、乙が締結した契約については承認しない、という主張を展開してきました。これに対して、本件の二審を担当した中級裁判所は、事実上にはA社の「声明」はB社によって確認されたものの、その後にもB社とA社の間に多くの取引実績があり、いずれもA社の捺印または授権書がないにもかかわらずA社がこれらの取引を承認していることから、A社は事実上社員の契約締結行為を黙認しており、乙の本件代理についても「表見代理」に該当すると認定し、A社が乙の締結した契約にも代金支払の義務を負うという旨の判決を下しました(【2004】仏中法民二終字第53号)。


 作者:韓晏元 潤明法律事務所パートナー弁護士 神戸大学博士(法学)
 

 作者: 李航  潤明法律事務所弁護士 神戸大学法学修士(同大学法学研究科博士後期課程中退)

 「人民網日本語版」2009年6月11日
[1] [2]

関連記事
  評 論
  中国メディアが見る日本 
  おすすめ特集

地方情報

北京|天津|上海|重慶|吉林|遼寧|河北|山西|山東|河南|江蘇|浙江|安徽|福建|江西|湖北|湖南|広東|広西|海南|四川|貴州|雲南|西蔵|青海|陝西|甘粛|寧夏|新疆|香港|澳門|台湾|黒竜江|内蒙古