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                                       ――松村扶美さん

【第61回】

 

     阪神淡路大震災--。崩壊した街を前に、誰もが自分の目を疑った。そして、これまでの人生を振り返り、このままでいいのだろうかという思いに駆られる。

     大手保険会社に総合職で就職し、順風満帆だった松村さんは、その翌年、中国へ飛ぶ。北京外国語大学で日本語を教えつつ、中国語を学び、向学心からさらに上を目指し、シンガポールで中国人留学生とともに切磋琢磨し合いながらMBAを取得する。そこで生涯の伴侶と出会い、結婚。上海へ移り住んで今年でちょうど10年になる。

     中国全土をまたにかけ、人材コンサルタントとして、セミナーで講師を務めたり、中日合弁会社の人事コンサルを手掛けてきた松村さんに、中国に来るきっかけとなった大地震のことや、シンガポールでの留学生活、経験を生かしてこれからやっていきたいというコーチングについて伺った。


     もともと日本でお勤めされていたそうですが、どうして中国へ来ようと?

    実家が95年の阪神大震災に遭って、自分の人生を変えることになりました。テレビをつけたら実家の隣の敷地が映っていて、被害が2番目くらいにひどかったようです。家はかろうじて残っていたんですが、周りはもうグチャグチャでした。当時東京で働いていたんですが、駆けつけた時には、神戸の途中までで電車は停まっていて、食べ物と水と薬を入れたリュックを背負って1時間くらい歩いて家に帰りました。車なんて通れないくらい道はボコボコで、どこもかしこも瓦礫の山、それに火事が続いていて、みんな体育館に避難していました。いろんな意味ですごいショックを受けました。母と父は幸い命は助かったんですが、母はタンスがひっくり返って腰を傷めていました。家の斜め前にあった馴染みの薬局屋さん一家は亡くなり、近所のマンションも全焼していました。これはなんだろうって、人生最大の衝撃でしたね。街は10年くらいかかって再建され、まったく違う街に生まれ変わりました。

    私にとってはこの経験が、「人生で何がしたいんだろうな」と思うきっかけになりました。大学を出て総合職で保険会社に入って東京勤務になって順風満帆でした。バブルだったし、待遇も良かったし、恵まれてはいましたが、心のどこかに空虚感を感じていて、人生の軸みたいなものを求めていたときに地震が起きたんです。目の前にチャンスはあるけど、これが本当に私のしたい仕事なのかなって疑問を持ちました。

     いろいろ考え、中国に行ってみたいなと思いました。大学時代に、神戸港から船で福建省に行って中国を旅行したんですが、それがおもしろくて、大陸に引かれていました。中国の人はどうしてこんなにエネルギーがあるんだろうって。それで一時、中国語をちゃんと習おうと思って、働きながら毎朝中国語教室に通っていました。

     親はせっかく会社に入って昇格試験も受けて、これから将来有望なのにと悲しかったみたいですが、「1年で帰ってきます」って約束して、会社を辞めました。1年のつもりだったのがもうずっといるんですが・・・。

     阪神大震災がきっかけで、日本を飛び出してみてどうでした?

    新鮮でしたが、いろんな現実も見えてきました。留学生活だけでは物足りなくて、自分は働いていた経験があったし、自分の同世代の人と交流してみたいなと思って、北京に行って2ヶ月ほどして友達の紹介で北京外国語大学で日本語の先生のアルバイトを始めました。それがきっかけで、いまだに交友がある友達もいます。いろんな生徒さんがいて、中国語を勉強しながら1年間日本語を教えました。

     まだ社会経験のない留学生と違う留学生活を送ったんですね。

    中国語を勉強しようと思って行ったけど、あまり上手くならないなともがいていた時に、一人の中国の友達ができました。その友人の実家の雲南省に1ヶ月行って、一緒に生活する中で中国人の考えとか、言葉をいっぱい教えてもらいました。それが私にとっては、その後の大きな支えになりましたね。本当に感謝しています。彼女に出会わなかったら、ここまでは中国のいいところも悪いところもわからず、自分の中で色眼鏡をかけていたんじゃないかなと思います。それが外れたのがその友人との出会いでした。それから、もっと勉強したい、もっと中国の人のことを理解したいと思い、大学院に行くことにしました。

     中国国内の大学院ではなく、シンガポールの大学院へ進学されたそうですが。

    試験の準備とか、通学年数とか、政治の試験があることなどを考えて、思い切って中華圏だけれど中国ビジネスに役に立つところはないか調べてみたんです。上海、香港、シンガポール・・・。たまたまシンガポールでMBAが1年半でできると紹介され、英語も中国語も勉強できるし、華人の先生が中国語で授業してくれるMBAだったので、思い切ってシンガポールに行くことにしました。




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