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【第26回】
改革開放以来、中国経済は急速な成長を遂げ、人々の生活レベルは大きく高まってきた。だがその一方、工業化や都市化から取り残された農村では相対的貧困が深刻化し、農村からの出稼ぎ労働者は依然として過酷な条件のもとで働いている。中国人口の半数を超える農村の人々の暮らしを知らずに、中国を語ることはできない。今回お話をうかがったのは、農村への訪問を企画する学生団体の代表を務める谷地中歩夢(やちなか・あゆむ)さん。農村ツアーの様子や今後の夢を聞いた。
私たちピアスマイルは3年前、農村に興味を持った北京大学の学生を中心に設立されました。現在は、8人の学生がスタッフとして活動しています。最大のイベントは、留学生を集めて行う一泊二日の農村ツアーです。中国には、貧困が理由で学校に行けなくなってしまった子どもを支援する「希望工程」というプロジェクトがありますが、このプロジェクトで農村に作られた小学校は「希望小学校」と呼ばれています。年に4回の農村ツアーでは、この希望小学校への訪問と子どもたちとの交流を行っています。
主な活動は、希望小学校の子どもたちと遊んだり、先生方と語らったり、農家にホームステイしたりすることです。まずは北京から近い河北省の希望小学校を探して、連絡を取ります。学校がOKを出してくれたら、交流の日程を決めて、スタッフだけで下見に行き、先生たちとスケジュールを確認します。それから北京の各学校やフリーペーパーなどにちらしや広告を出して、ツアー参加者を募集します。
韓国の学生や中国の学生、社会人の方もいらっしゃいますが、ほとんどが日本からの留学生ですね。参加の動機は、「中国の農村を経験したい」「ボランティアをやりたい」「子どもが好きだから農村の子たちと交流したい」などさまざまです。スタッフを合わせて35人から40人ほどを集め、一台のバスを借り切って農村に出発します。
目的の農村に着いたら、まずは学校を見学して、それから開会式を開くんです。校長先生と私がそれぞれあいさつをした後、こちら側の参加者全員で子どもたちに向けてダンスをするんですよ。ツアーの3、4日前の事前交流会で参加者の方々にも振り付けをおぼえてもらい、童謡の「おもちゃのチャチャチャ」に合わせて踊ります。子どもたちはここでとっても盛り上がるので、ここが交流全体のキーポイントになるんです。大げさな振り付けもあるので恥ずかしいという人もいるんですが、そこで踊れないと、子どもたちとなかなか打ち解けられない。ここで仲良くなれると、その後もみんな緊張しないでうまくいくんですよね。
一日目の午後は、子どもたちといっしょに遊びます。教室のなかでは、日本の伝統的な遊びであるお手玉やけんだま、コマなんかで遊びます。けんだまは中国ではあまり見ないようで、子どもたちはきゃっきゃと喜びます。参加者でけんだまがうまい人がいたりして、いろいろな技を見せてくれます。屋外では、「しっぽ取りゲーム」というのが人気がありますね。参加者が後ろにつけたしっぽを子どもたちが取る。農村の子たちは元気なので、体を動かす活動だと特に喜びます。
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子どもたちとの交流が終わったら、2、3人ずつに分かれて生徒の農家に泊まります。農家で一緒に寝ることで、その家の子ともっと仲良くなる。農家の方が作ってくれる素朴で新鮮な夕飯も魅力です。ただ農村はなまりが強いので、ご両親の言葉が聞き取れないことも多いんですよ。参加者の中には半年や一年の短期留学生も多いので、方言を聞き取るのはとても難しい。それでも農家の方たちは「食べな食べな」とよくしてくれる。お椀に白酒を入れて、「飲もう飲もう」とすすめてくれるお父さんもいます。
農家の様子はところによって違いますが、とても粗末な家もあります。電灯もないから夜はまっくらで早く寝るしかないという家もある。でも参加者の人たちは農村の貧しさをわかってきているので「耐えられない」といった反応はありません。初めての環境に「こんなトイレなの」「こんな家なの」っていう反応はあっても、参加して後悔する人はない。「いい体験になりました」という感想が大半ですね。