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                                                                                       ――泉京鹿さん

【第33回】

    年内にはまた新しい翻訳書が刊行されるそうですね。

    2年連続中国作家長者番付ナンバーワンの郭敬明の作品です。上海在住でとってもイケメンの男の子(笑)。作家であり、プロデューサーであり、会社の経営者でもあり、ビジネス的にもいわゆる勝ち組。田原と同じ80年代生まれで、中国の若い子の間ではスーパースターです。日本語タイトルは「悲しみは逆流して河になる」。

郭敬明さん(資料写真)

     超ビジュアル系の作家さんですね(笑)。この作品の魅力を教えてください。

     ストーリーそのものはすごくシンプルで、日本の漫画によくありそうなモチーフなんです。幼馴染の高校生の男女がいて、一方は優等生で一方は問題児。親との葛藤があって、いじめがあって、妊娠や中絶があって。すごくわかりやすい記号に満ちているんですね。でもそれが、「こんなに暗くていいの」っていうくらいの暗さで描かれている。ありがちなモチーフではあるのですが、詩的な美しさのトーンで仕上がっているんです。

     そして、文章そのものが魅力的なんです。私がつきあいのある中国の若いベストセラー作家に共通しているのですが、古典の素養を感じさせる美しさが漂っている。中国の若い子たちが彼らにはまるのにも、そういう要素があると思うんです。日本では「ケータイ小説」がはやっていますが、話し言葉がそのまま使われているようで、言葉としての美しさっていうのは、上の世代からみたらあまり感じられないものも多い。中国で人気のある若い作家の文章には、上の世代からみても、「おや」と思わせるものも少なくありません。

    若い作家や読者にも古典の影響があるというのは印象的ですね。

    田原や郭敬明の作品の翻訳を、日本の大学の授業で学生たちに読ませたことがあるんですが、「文章がすごくきれい」「日本のケータイ小説にはない詩的な繊細さがある」っていう感想が多かった。インターネットの普及などで日本語がだんだん衰えてきているっていういい方もありますよね。でも、言葉は生き物ですから、変化するのは当たり前で、それは一概に衰退とは言えないと思う。漢字の国である中国の言葉は、古典とより密接な関係にある。田原にしても郭敬明にしても「古典はとても大切」といって古典を愛し、敬意を払っていますね。

    日本人の読者が読んでも新しい発見がありそうですね。

    中国の人たちは今、すごい勢いで日本の本を読んでいるんですよ。以前は、日本の作家といえば、誰に聞いても名前が挙がるのはノーベル文学賞作家の川端康成、大江健三郎さんあたりまで。手に入る本も限られていました。でも今は、石田衣良さんの「池袋ウェストゲートパーク」シリーズとか東野圭吾さんとか青山七恵さんとかの比較的新しい作品の中国語訳が平積みで売られているんです。今の日本の若者が気軽に手にとって楽しんでいる小説が中国でも読まれるようになっているんですね。それに対して、中国の今の小説が日本語に翻訳されている数は圧倒的に少ない。私自身、中国に最初に興味を持った時、「小説を通じて中国を知りたい」と思ったんですが、当時は探すのが大変でした。学術書や経済や政治をテーマにしたノンフィクション、文革の話なんかはあったけれど、現代の小説はなかなか見つからなかった。だから今、気軽に手にとって楽しんでもらえるような、現代中国のベストセラー小説を日本に紹介できることには、とてもやりがいを感じています。

泉京鹿さんの自宅の仕事机前で(佐渡多真子撮影)

     「翻訳する本を選ぶ条件の一つは著者に思い入れがあること」と語る泉京鹿さん。今回はほとんど紹介できなかったが、アニー・ベイビーや衛慧、余華らとのエピソードも語ってくれた。泉京鹿さんの丁寧で心のこもった翻訳を通じて、彼らの名前も少しずつ日本に浸透しつつある。「日本の人たちがおもしろいと思うような作品は中国にはまだたくさんある」。中国文学と泉京鹿さんのファンにとって頼もしい言葉をいただいた。(人民網日本語版記者 増田)

プチアンケート
・あなたの出身地は?
東京生まれ神奈川育ち。
・中国滞在歴
15年
・一番好きな中華料理は?
北京ダック! 炸醤麺(ジャージャー面)やギョーザ、トマトと卵の炒め物などの家庭料理。
・中国で一番好きな都市は?
北京。その次に住みたいのが成都。上海にも時々行きたい。
・中国にあって日本にないものを1つ挙げてください。
大陸と大陸的なもの。
・中国を漢字一文字で表すと?
「楽」。「ラク」と「たのしい」の両方です。

 
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