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                                                          ――日本語教師・笈川幸司さん

【第38回】

     「笈川先生はおもしろい!」 清華大学で日本語を教える笈川幸司(おいかわ・こうじ)先生のもとには、日本語を勉強する学生が他大学からもたくさん集まってくる。ユーモアと人情味にあふれた人柄も人気だが、日本語スピーチコンテストで教え子を次々に優勝させてきた実績には圧倒的な説得力がある。「もともと漫才をやっていた」という笈川先生。「カリスマ日本語教師」と呼ばれるまでの道と学生への熱意をたっぷりと語ってもらった。


     笈川先生、北京で日本語を教えるようになったきっかけはなんですか。

     私、日本ではもともと漫才をやっていたんですよ。それをやめて北京に来たのは、中国の方と結婚することにしたのがきっかけです。漫才は5年やっていてダメだったから、もうあきらめて、5年半待たせた中国人の彼女のところへ行こうかと思ったんです。

    2001年の7月に北京に来て、まずは民間の学校で日本語を教え始めました。授業を始めたら評判もいいし、おもしろいし、このまま続けたらうまくいくかなと思った。そう思った矢先に、その学校が、スナックのママさんに乗っ取られてしまったんですよ。ある日、学校に行ったら、日本語学部の学部長がスナックのママさんになっていて、事務所のスタッフもスナックの女の子たちに変わっていた(笑)。私はもともと月7000元で契約していたんですが、「あなたは金曜日の午前中だけ来ればいいです」と一方的に宣言され、一か月の給料は800元になってしまった。

     それはかなりショックですね(笑)。800元というと日本円で1万円ちょっと・・。

     ショックと言えば、前の奥さんとは中国に来てすぐに離婚してしまったんです。夢を捨てて中国に来たのに、奥さんにも振られてしまって、給料も800元。もう最低ですよね。でもその時に、何かが自分からすーっと抜けていく感じがしたんです(笑)。それまでわがままに生きてきた結果がその「最低」なんだから、これからはみんなのために生きていこうと思った。やけのやんぱちと言われるかもしれないけど、カードがひっくり返ったみたいに開き直った。

     「月給800元」を宣言されてから、ほかの学校でも掛け持ちで教えるようになったんですね。いろいろな学校で教え始めたら、何とか食べられるようになった。その年の11月、国立大学の授業も参考にしようと思って、清華大学の授業を見学に行ったんです。見学を終えて帰ると、「明日面接に来てください」という電話が清華大学から来た。翌日の面接では、「これまでも日本語教師をなさっていたんですか」なんて聞かれたんですが、教師の資格もないし、「いやあ漫才をやっていたんですよ」なんて答えるしかない。でも話しているうちに大盛り上がりになって、みんな大笑いになって、最後は採用になったんです。

遠くを見つめる笈川先生

     清華大学で教えるようになってからはどんなことに取り組んでいかれたんでしょうか。

     その頃、前の奥さんのお母さんがすごくよくしてくれて、ためになるアドバイスをくれたんです。「中国というところは日本と違うから、何かしなさいって言われたら断っちゃダメだ」というんですね。「やります」とまず言って、できなかったら「できませんでした」というのが中国式なんだと。「できるだろうか」と考えるのが日本人なんだけど、それじゃダメだと教えてくれた。

    清華大学に入ってすぐに「スピーチコンテストの指導をできますか」と言われたんです。清華大学の日本語学科は1999年にできたばっかりだったので、スピーチコンテストで入賞したことがなかった。だから「上位6位に入るようにがんばってください」と言われた。私も指導したことなんかなかったので自信はなかったんですが、お母さんのアドバイスを思い出して、「任せてください、6位どころか優勝しましょう」と大見得を切った(笑)。

     スピーチコンテストというと、中国人の学生さんが日本語で演説するものですよね。どんな風に指導を始めたんですか。

    最初は、留学生が集まるホールに行って、「すみません、日本人の方、ちょっと来てください」と日本人に協力してもらったんです。コンテストを目指す学生のスピーチを聞いてもらい、一言ずつ感想を言ってもらいました。何よりもまず実践で慣れていくということが大切ですからね。

     スピーチの指導をしていくうちに、中国人学生の発音に同じようなくせがあることに気付いたんですね。「ありがとうございました」っていうような基本的な言葉でも、これを本当に自然に言える学生はほとんどいない。アクセントは正しいはずなのに、何かおかしい。一文字一文字をはっきりと発音しすぎるんです。日本語は平坦と思われていますが、だんだんイントネーションが下がっていくという傾向を持っているんですね。それを発見してから、イントネーションが下がるポイントを示した「笈川小楽譜」というのを作ったんです。これを使うと、不自然だった読みがいっきに日本語らしくなる。


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网友     私は所沢に住んでいる中国人です。笈川先生の報道を見て、たくさんの友人に教えました。そして、私も中国語教室で活躍できるよう頑張っていきたいと思います。
网友    ブログで紹介したいのですが、ご了解いただけないでしょうか?メールアドレス[email protected]/or/jpにお返事をくださいませんか。よろしくお願いいたします。
网友    来週、笈川先生にうちの大学でご講演いただくことになりました。日本語の先生にとってもきっと良い勉強になると思いますので、非常に楽しみにしています。
网友    来週、笈川先生にうちの大学でご講演いただくことになりました。日本語の先生にとってもきっと良い勉強になると思いますので、非常に楽しみにしています。
japanese[网友]    笈川先生はまじめで、いい先生と思っております。
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