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【第13回】
朱建栄略歴:1957年に上海で生まれる。1981年、華東師範大学を卒業、専攻は日本文学。1984年、上海国際問題研究所付属研究生院(大学院)で修士学位を取得。1986年に来日。1993年、日本の学習院大学大学院政治学研究科博士後期課程修了。その後、日本総合研究開発機構の客員研究員、東洋女子短期大学助教授、東洋学園大学助教授を歴任し、1996年以降は東洋学園大学教授を務める。また2003年以降は日本華人教授会の代表を務める。主な著書に「毛沢東の朝鮮戦争--中国が鴨緑江を渡るまで」「鄧小平は死なず--12億の民はどこへ行くのか」「中国2020年への道」「毛沢東のベトナム戦争--中国外交の大転換と文化大革命の起源」「中国第三の革命--ポスト江沢民時代の読み方」「江沢民の中国--内側から見た『ポストトウ小平』時代」「朱鎔基の中国改革」など。
中日問題の専門家であり、日本で活躍する著名な学者でもある朱建栄教授は、影響力のある著作の数々を生み出す傍ら、日本のテレビ番組などのメディアで評論を行ったり、討論番組に出演し、日本メディアで最も活発な中国人と言われている。朱教授はこれまで何度も「台湾独立」分子、右翼勢力と舌戦を繰り広げ、多くの在日華人・華僑から称えられてきた。普段の朱教授は穏やかで学問があり上品で、一挙手一投足からも深い文化的気質が垣間見えた。
数年前の小泉政権のころ、靖国参拝を巡るテレビの討論番組に何度も出演しました。日本メディアは、靖国神社は日本の宗教施設だという観点からしか報道していないので、日本国内の人々はみなこの影響を受け、中国が小泉氏の靖国神社参拝に反対するのは日本の内政への干渉だと考えていました。
討論番組に出たとき、私はこの問題について開口一番に「中国の指導者は、日本の首相が靖国神社に行くことに関しては一度も反対したことがありません」と言ったんです。この一言でみな驚きました。続いて私は「中国が反対しているのは、1979年以降、A級戦犯が合祀されるようになった靖国神社を現任の首相が参拝することです。しかも、日本の天皇も1979年以降は1度も靖国神社を訪れていません」と言いました。このように言うことで、日本の視聴者も平和的に私の観点を受け入れることができるようでした。
また、口では平等な討論だと言いながら、実際は中国を標的にして攻撃するようなテレビ番組があることを私も知っていました。だから「守りつつ反撃」することがとりわけ重要になるのです。某有名テレビ局では生中継の討論に何度も出演しましたが、テレビ局の演出スタッフはあらかじめ私の発言レジュメを相手側に渡しているのに、相手側の観点は私に教えてくれませんでした。だから番組で私が意見を口に出すと、相手側はすぐに十分な準備をもって反論できるのです。さらには、あと2、30秒でCMというときに限ってカメラ向けられて、答える時間も十分にありませんでした。でも大丈夫、そういう中で鍛えられ、最も簡潔な言葉で観点をまとめて言うのが得意になりました。しかも、CMの直前に簡潔に意見をまとめて言うことができれば、逆に視聴者に深い印象を残すことができます。
それから、06年の終戦記念日の頃です。日本の反中ムードは激しく、私はNHKの4時間にわたる討論番組に招かれました。公正とはうたわれていましたが、私は見えない手がある方向に誘導しているのを感じました。私が靖国問題について語ろうとすると、何度も発言が中断され、右翼の言論に手を上げて質問しようとしたときも何度も無視され、発言の機会が与えられませんでした。でもNHKには正直な記者の方々もいて、私の観点をずっと支持してくれました。本当に感謝しています。
私は、学者というものはまず理性的、客観的に、深いレベルで、全ての先入観を越えて、未来の方向を分析し、把握するべきだと思っています。また同時に、私は中国人の学者でもあるので、客観的・理性的に分析するという前提の上で、中国の最大限の国家利益を追求・保護していくよう努力するとともに、相手の利益と心理も考慮し、ウィンウィンの関係と中日友好を出来る限り追及していきたいと思っています。
だから、例えば右翼とテレビで討論するときも、中国に対する右翼の中傷に反駁する一方でさらに重要なのは、視聴者に中国人の度量と見通しの長さを見せることだ思うんです。
こうすることで2つの目的が達せられます。1つは、中国の学者として、中国の見解と主張を客観的に紹介し、日本の人々に基本的な道理を理解してもらうこと。例えば、毛沢東や周恩来などかつての革命指導者たちが中日両国の長年の友好を実現するために、少数の軍国主義者の戦争責任だけを追及しろと人々に教育し、日本国民に長期的に戦争賠償金を払わせるのを放棄したことなどです。
もう1つは、もっと多くの日本人に中国に好感をもってもらい、さらには尊重、敬意を示してもらうことです。中国脅威論を誇張させて「やがて中国との闘いがはじまる」を書いた米国人ジャーナリストのマンロー氏と数年前にNHK衛星チャンネルで討論したとき、私は、覇権主義は中日両国の人々が期待する平和を脅かすだろうと強調し、日本の視聴者の理解と同感を得ることに重点を集中させました。放送後多くの日本人から電話があり、言いたくても言えなかったことをよくぞ言ってくれたと称賛されました。
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朱建栄さん |
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