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 2003年11月6日 

 楊利偉飛行士を乗せて北京時間の10月15日午前9時に甘粛省・酒泉衛星発射センターから打ち上げられた有人宇宙船「神舟5号」は翌16日午前6時23分、内蒙古自治区中部へ着陸し、中国初の有人宇宙飛行は予定通りの成功を収めた。

 中国航天科技集団公司弁公室の周暁飛主任によると、「神舟」号は中国が独自に設計・開発し、完全な知的財産権を有している。開発には10年が費やされ、原材料や部品へのニーズはもとより、中国の工業製品や大型プロジェクトの組織や管理のレベルが厳しく試された。
 

             見えてきた「ビジネス戦略」

中国初の有人宇宙船「神舟5号」打ち上げに成功
宇宙船の中から家族に呼び掛ける楊飛行士

 中国載人航天工程(有人ロケットプロジェクト)弁公室の謝名苞主任は打ち上げ、回収に成功した10月16日の記者会見で、神舟5号の打ち上げ経費が10億元未満、有人ロケット計画スタート以来の10年余りの総経費が約180億元であることを発表。「中国の優れた技術、打ち上げコストの低さが世界の商用衛星市場で有利なことは明らかだ」と述べた。

 米スペースシャトルの1回当たりの打ち上げコストは100億ドルで、ロシアの宇宙船でも数十億ドル。これに対し、中国の場合は「桁違いに安い」。

 中国空間技術研究院のロケット専門家は「中国は2002年に商用ロケットを打ち上げていない。また1999年から4年間、外国の衛星を打ち上げていない。しかし、中国は2002年以後、ロケット分野で大きな成功を収めており、技術的な優位性を商業価値に反映させなければならない」と述べている。

 同専門家によると、2002年1年間の世界のロケット打ち上げ回数は65回。非商用的利用は41回、商用利用は24回で、合計94件の資材や機材の運搬を行った。内訳は民間利用、科学実験用が60件、商用利用が34件だった。また、商用ロケット24回の打ち上げによる収益は約19億ドルで、2001年の15億ドルに比べて22%増加。同専門家は「今年に入り、商用衛星市場の規模は更に拡大した」という。

 神舟5号の打ち上げ成功は、戦略的に見ればロケット産業の情報公開度を高めたと言える。安全面で信頼性が向上した一方で、商用利用の拡大に向けて中国のロケット技術を示すまたとない機会ともなった。ある研究員は「公開度を高めることは、商業価値を活用する上で賢明な戦略だ」と話している。

1000億元規模の産業ネットワーク

 中国空間技術研究院の研究員は、中国のロケット産業は2005年までに1000億元規模に成長すると予測する。では、この魅力的な市場を動かす資本はどこからもたらされるのだろうか。

 同研究員は「中国の衛星関連企業は研究開発や生産能力が低い一方でニーズが高いという矛盾に直面している」と指摘。「固定衛星業務を行う通信衛星は、東方紅3号を除き、亜洲1号、亜洲2号、亜洲3S、亜太1号、亜太1A、亜太2R、中衛1号、シン(金が3つ)諾1号など外国製の衛星を数多く使用してきたが、宇宙大国は現在、市場シェアの拡大に努めており、宇宙技術を持つ発展途上国も次第に増え、競争は日増しに激しくなっている」と述べている。

 国家発展計画委員会は2020年までに1千億元規模の市場に成長する可能性のある産業として(1)集成電子回路(2)第3世代移動通信(3G)(3)インターネット(4)デジタルテレビおよびデジタル放送の番組制作(5)放送衛星(6)製造業(7)ソフトウェア産業--の7分野を挙げたが、その全てが衛星産業に関係している。

 中国天地衛星公司の李世鋒氏は、衛星産業全体のネットワークの中で、製造と打ち上げは要求される技術レベルが最も高いと分析する。国際的な試算法によれば、衛星1基を打ち上げる場合、衛星の製造費約1億2千万ドル、ロケットの製造費および打ち上げ費用各3000万ドルのほか保険料3600万ドルが必要となる。重量500~520キロの小型衛星を打ち上げる場合は、製造、打ち上げ、保険を含む総経費は3500~4500万ドル以下となり、このうち打ち上げにかかる費用は大型ロケットの5分の1程度の1500万ドルに抑えられる。

 また、李氏は「中国の衛星」がすでに商用化の方向へ進み、「政府の支持」も得ていると述べている。国家発展計画委員会は2002年、3億元を投資して下部組織の「航天東方紅衛星公司」に国家衛星プロジェクト・応用センター、「航天四創科技公司」に衛星利用測位システム(GPS)プロジェクトをそれぞれ設立した。衛星の製造、打ち上げ、使用の各分野の予測収入比率は2:1:7となっており、李氏は「衛星の中心顧客は政府で、企業による利用は非常に少ない。現在、1トン以下の小型衛星が中心なのは、予算的な制約があるため」としている。

 研究レポートによると、今後10年で世界で打ち上げられる衛星は、通信放送衛星、資源衛星、気象衛星、測位衛星などを含めて約1千個とされており、商用衛星が70%を占める。ロケット企業の合併再編も依然として盛んで、軍用、民用、商用ロケットの共同発展も、未来のロケット産業の特徴になると見られる。
中国国旗と国連旗を掲げる楊飛行士
内蒙古自治区中部に無事帰還した楊飛行士
打ち上げ前に胡錦濤主席から声を掛けられる楊飛行士
打ち上げに成功した実験衛星積載のロケット「長征2号丁」=11月3日午後3時20分

「神舟5号」便乗ビジネスが加熱

 中華民族の夢を実現させた有人ロケットは、人々から絶好のビジネスチャンスと捉えられている。有人宇宙船打ち上げの半年前には、中国ロケット事業の協賛企業が相次いだ。楊飛行士が10月16日早朝に地球へ無事帰還したことで、多くの企業が準備してきた宇宙ビジネスが実現。「宇宙飛行士専用牛乳」や「楊利偉」の名前を用いた商標の登録、レストランの「宇宙食メニュー」などがたちまち流行し始めた。
「神舟5号」成功にちなんだネット広告
「宇宙飛行士専用」とうたう牛乳の広告
打ち上げ成功を祝うロケット型ケーキも

激増するロケット関連業界の広告

 流行を追う広告業界にとっても、有人ロケットの打ち上げ成功は、またとない商機となっている。宇宙船帰還から1週間で、新聞やインターネット上には、有人ロケット関係の広告があふれるようになった。

 新浪網(www.sina.com)の林氏は、「神舟5号の打ち上げ成功は、新浪網に多くの利益をもたらした」と述べた。林氏によると、神舟5号の打ち上げ成功から1週間で少なくとも300万~500万元の利益を上げており、「1本の特集報道で、このように利益が出たことは、ネットメディアにとって大変めずらしい」という。

 また、林氏によると、広告はロケットと一定の関係のある業界が掲載しており、例えば「宇宙飛行士専用牛乳」の蒙牛牛乳、宇宙船で使用された長城潤滑油、宇宙飛行士を乗せて宇宙船へと向かったジープ、神舟5号の記念品を販売する関係企業などが挙げられる。

大人気の「宇宙食メニュー」

 楊飛行士の宇宙食として準備された八宝飯(中にあんが入ったもち米のデザート)、魚香肉絲(豚肉の辛味炒め)、宮保鶏丁(鶏肉とナッツの唐辛子炒め)といった一般的な料理が、「宇宙料理」と呼ばれるようになり、一夜にして人気料理になった。宇宙食メニューを料理の演出に活かすレストランも登場しており、そうしたレストランの料理人は「前菜を出すときに小麦粉で作った神舟5号を盛り付け、お客様に大変好評です」と話している。

 北京市の四川料理レストラン「川北人家」の支配人は宇宙食メニューについて、「これらの料理は四川料理が起源。宇宙食に採用されたことは、四川料理の実力を証明している」と述べている。同レストラン入り口にある「週間人気料理ランキング」では、「宇宙料理」が最上位にランクされており、「慶事で利用するお客様は、宇宙食メニューを見たとたんに喜ぶ」という。

 「宇宙食メニュー」は国民だけでなく、海外でも人気。シンガポールでは、有人宇宙船の打ち上げ成功のビジネスチャンスに乗り遅れまいと多くのホテルが宮保鶏丁、魚香肉絲、八宝飯、八宝湯、八宝茶などの伝統料理を宇宙食メニューとして盛大に売り出している。ある美食家は「楊飛行士が神舟5号で味わった中国料理は、米国の数多くのレストラン雑誌が選定する『年度別人気料理ランキング』に入るかもしれない」と指摘する。

書籍や切手、天体望遠鏡も

 神舟5号の打ち上げと同時に、ロケット関係の商品がブームになっている。ロケット関係の書籍、記念切手・封筒、天体望遠鏡などの商品が次々と店頭の主力商品となり、ロケット関係の観光ツアーも徐々に熱を帯びてきている。

 神舟5号打ち上げの歴史的瞬間に立ち会おうと、国慶節の連休後には多くの人々が衛生発射センターのある酒泉に詰め掛け、周辺のホテル、レストランは連日満員となった。

 酒泉衛星発射センターはまだ一般公開されていないが、宇宙基地ツアーに行きたいと望む観光客は多い。中国青年旅行社の関係者は「現時点では基地開放に関連する政策がない」としながらも「もし開放されれば、酒泉は有名な観光地となるだろう」と述べている。

ロケット関連株が急上昇

 神舟5号の打ち上げ成功と宇宙船帰還のニュースは、証券市場に非常に大きな衝撃を与えた。有人宇宙船が飛行している間も、ロケット関連の9銘柄が上海・深センの株式市場で高値となり、その後も取り引きが活発な人気銘柄となっている。

 ロケット関連の9銘柄は、中国衛星、航天信息、航天動力、航天晨光、航天長峰、航天通信、火箭股份、航天科技、航天機電で、中国航天科技集団と中国航天科工集団の2大企業グループに分けられる。ロケット関連銘柄の出来高は22億8900万株、93億1600万元に達しており、証券市場も軽視できない存在に成長している。

 株式市場にとって神舟5号打ち上げのニュースは空前の刺激となった。市場が最も低迷した8月末でも、ロケット関連銘柄は驚くほど上昇、市場の人気銘柄となった。神舟5号打ち上げ前の取引日31日間の市場全体平均株価は3.76%のマイナスだったが、ロケット関連9銘柄は平均8.38%上昇、順調な動きを見せた。
「神舟5号」打ち上げ成功の記念切手
月餅にも「飛天」の文字が
 
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