伊犁河谷に魅せられて

2023年04月17日09:41

作者:ワナカキヨシ

撮影場所:新疆維吾爾(ウイグル)自治区喀拉峻(カラジュン)大草原、濶克蘇(コクソ)大峡谷、那拉堤(ナラテー)

新疆の西北、伊犁州に伊犁(イリ)河が流れて美しい渓谷美をつくって、その流域は伊犁河谷と呼ばれています。春には杏子の花が咲き、初夏にはラベンダーの紫花が咲き誇り、薫衣草の郷と言われます。伊犁河谷は天馬の里で、春に杏子の花でピンク色に染まる草原で草を食む馬は、真に天馬で訪れる人を夢幻の世界に誘います。そんな伊犁河谷にある“喀拉峻”(カラジュン)は緑の大地が海のように波打つ草原でした。 緑の波の上を柔らかく頬をなで吹き渡る風、雪山を背に草原には黄、紫、赤の五花が咲き、まるで夢の空中庭園を浮遊している不思議な感覚になります。そして濶克蘇(コクソ)は中天山山脈から流れ出た水が谷を刻みつくられた雄大な峡谷で、喀拉峻の大地に深い谷を刻んでいます。夏には天山の雪が解け炭酸カルシュウムを含む地層を削り濶克蘇河の水は乳白色に変わります。

濶克蘇大峡谷を象徴する風景は鰐湾と呼ばれる、濶克蘇河が逆向きに流れを変える鰐のような姿の山と川の風景です。まるで鰐(ワニ)が水を飲んでいるような姿なので鰐湾と呼ばれています。那拉堤は“三面青山列翠屏”、三方を緑の山に囲まれた大草原です。蒙古語では“緑色谷地”、カザフ語では“白陽坡(傾斜地)”といわれます。古代、成吉思汗(ジンギスカン)が西域に遠征した時、一面が花に覆われた緑の大草原を見て“ナラテー”(おお緑の谷よ!)と叫んでその名がついたといわれています。那拉堤草原を歩いていると、荒涼としたゴビ砂漠やジュンガル盆地を越え、伊梨河谷に着き、オオー!ナラテー”と叫んだ成吉思汗の気持ちがわかるような気がしました。