一週刊  第78号  2008年06月19日  
 
 

  四川大地震で持ち上がった論議

 
 

一 非難するか許容するか

 成都のある中学校で教鞭を取っている範美忠先生は、5月12日午後、中学校1年生に「紅楼夢」を教えていました。大地震が発生した瞬間、学生をかばわず、教室を抜け出し、一番先に運動場に逃げ出しました。後で逃げ出した学生は、「先生、なぜ私たちを連れ出さなかったの」と質問しました。これに対して、範美忠先生は、「生か死かを選ばなければならない瞬間、娘だけのために死を選びます。そのほかの人は、たとえ母親でもかばいません」と答えました。

 後で、範美忠先生は、これをブログに書き込み、自分の考えを公表しました。たちまち反響を呼びました。

     

非難する声です。  

 ・「危険にさらされた瞬間、教え子を見捨てるなんて、恥です。あなたの行為は、まさに、操縦士が乗客を顧みずパラシュートで逃げ出すことや、船長が船を捨てることと同様です。あなたは十分反省すべきです」

 ・「私は幼稚園の先生です。絶対真っ先に園児たちを救います。というのは、私は子供たちを愛しているからです。教師としての責任であるからです」

 ・ 「教師失格です」などがありました。

 みんなの非難に対して、範美忠先生は、「後で反省しました。当時何で教え子を連れ出さずに、1人で逃げ出したのかと。妻は私のことを、教え子への愛がまだ足りないのかもしれない、自分を犠牲にするほど愛していないのではないかと言いました。自分もこれを認めます。命を犠牲にすることは、道徳の限界ではなく、神聖な道徳です。私は神聖ではありません。私は神聖な人たちを崇拝していますが、懺悔しない自由もあります。すべての人が他人を先に救うほど神聖ではありません」と語りました。

 一方、理解を示す声も少なくありませんでした。

 ・ 「範さんが自分の気持ちを素直に表したのも、勇敢な行為です」

 ・ カウンセラーで、当時都江堰でカウンセリングを行った一人の教師は、「あのような災難を経験したことのない人たちが範さんの行為を非難するのは、まっとうではないばかりか、非難する権利もありません。彼にも慰めが必要です」と語っています。

 ・社会学者で、青少年問題の専門家の一人は、「範さんには自分の思いを語る権利があります。範さんの書き込みに対して、社会全体からの非難が殺到しているのは、社会がまだ成熟していない表れです」と指摘しています。

 北京大学出身の範美忠先生は、自分の気持ちをネットに書き込んだ本音について、「自分の個人主義で集団主義に対抗したいと思いました。また、国民の異端を認めない考え方にも挑みたかったのです」と話していました。

二 有名人や富裕者たちはいくら寄付すべきか

    

 四川大地震発生後、多くの有名人や富裕者たちが義捐金を寄付しました。そのランキングも作られています。

・NBAで活躍しているヤオミン(姚明)が200万元

・大手開発業者の潘石イが200万元

・俳優のコン・リーが50万元

・香港の歌手アンディ・ラウが10万元など。

これを、ほかの有名人や富裕者の寄付金と比べる人もいました。

・2005年アメリカで発生したハリケーンの被災者のため、同じNBAで活躍している選手が120万ドル

・四川大地震では成龍が1000万元

・香港の企業家の邵逸夫夫婦が1000万元

 これについて、ネットに寄せられた声は、「被害がはるかにひどい四川大地震に対して、若者のアイドルのヤオミンはなぜこれだけしか寄付しなかったのか、潘石イの200万元は、彼が繁華街で建てたビルの1棟にも及ばない。建設大手の王石の200万元は、彼が登山に使う年間の費用にも及ばない」などとして非難しています。また、「名声や社会地位を得て、莫大な利益を手にした以上、その義捐金額は少なすぎるのではないか」と問い詰めています。さらに、「巨額の富を得ただけに、責任も大きい」としています。 

      

 しかし、異なる見方もあります。

・「寄付は願望であり、義務ではありません。寄付するかどうか、いくら寄付するかを自分で決めるのは、1人の国民としての基本的権利です。これを尊重し、理解すべきです」

・「寄付することは、愛の心が最も大事で、金額の多さで計れるものではありません。富裕者にしても、貧しい人にしても、全財産を寄付にしても、たとえ1元であっても、愛情の表れです」

・「有名人や芸能人の寄付ランキングを出すやり方はおかしい」

・「自分がやるべきと思うことをしっかりやることが大事で、他人に対しては強く求めてはいけません」など。

     

 四川大地震で、私たちは、瓦礫の下で耐えている被災者の姿や必死の救援活動に涙を流すと同時に、このような論争からも、いろいろ考えさせられました。どちらが正しいかは別にして、中国では、今、一つの出来事に対しても、いろいろな声が聞こえるようになったと言えるでしょう。

 

 

(中国国際放送局日本語部より)

 

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