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創刊号 Vol.1(2008/6/20発行)
【特集】四川省ブン川県で大地震
ブン川地震が中国の発展に与える影響

ORI国際産学研究 李霖
 四川省ブン川で発生したマグニチュード7.8の大地震が、今後かなり長い期間にわたって、中国全体の政治・経済・文化および社会のその他の様々な面に対して、継続的かつ大きなショックと影響を与えるのは間違いない。しかし経済面だけを見れば、そこに生じるマイナス影響は、中国人の社会構造や国民の心理、政治構造に与える影響ほど大きくはなく、短期的もしくは局部的なものにとどまると考えられる。2008年末の経済指標のいずれかにマイナスの影響が出る可能性があるとはいえ、より長期的な観点と総合的な状況に基づき分析するなら、ある意味では、今回の災害による利益はその弊害よりも大きいとさえいえる。
 地震で生じた直接的な経済損失は現在、確かな統計の数字としてはまだ確定されていない。具体的な数字の発表にはまだ時間がかかるだろう。ただ国際的評価機関や国内金融機関が行った評価によると、直接的経済損失は200億ドル前後と推定されている。つまりGDPに対する影響も0.2%を上回ることはない。
 「今回の地震が山地で発生したということは、災害救助に少なからぬ困難をもたらした。一方、地震発生地の人口が少なく経済的に比較的遅れていたということによって、災害発生後の中国経済全体に与える影響は比較的限られたものともなった。また今回の地震発生地は対外貿易との関係も小さく、全国の製造業の中心でもないため、人民元レートに大きな影響は与えず、全国のGDP成長への影響も小さいとみられる。四川省の生産総額はGDPのわずか3.9%、製造業の生産額は中国全体の生産額の2.5%しか占めていないためだ。この2つの観点から見ると、ブン川地区の経済損失の影響は無視することができるだろう。」(中国経済専門家 易憲容)
 現在主に懸念されているのは、地震が食料や豚肉、その他の農産品の短期的な供給や運輸に与える影響で、地震前に既に顕著だったインフレや基本的な生活用品の物価上昇、つまりCPIの増加を直接拡大するのではないかという点だ。もっとも筆者の見る限り、今回の地震がなくても中国のインフレ問題と穀物や食用油、食品などの物価の上昇は、実際のところすでに存在していたと言える。地震の発生はこの傾向を後押しする可能性はあるだろうが、中央政府が地震により、逆にインフレ問題に対する調整や管理を強化する可能性があることを忘れてはならない。中国政府の経済の調整能力が無視することの出来ない力を持つことは間違いなく、特に国民の心理と感情の安定という政治的レベルから、より大きな力を断固として投入するだろう。同時に地震災害の影響が地域的にも時間的にも限られたものとなったことも見落としてはならない。ブン川地震は震源地域の経済に最悪の影響をもたらしたが、中国全体に対する影響を考えると、中国南部の広い範囲で年初に発生した大規模な雪害や1998年の深刻な洪水被害には及ばないといえる。大雪や洪水の影響は中国南部地区全体や長江流域に及んだが、地震の影響は比較的限られているためだ。また中国の地震救援作業は非常に優れており、交通手段の復旧や生産活動の再開は短期間で実現できると見られるため、影響が非常に長引くということはないだろう。
 マクロ政策への影響については、現在の各種の兆候から考えて、地震は中国のマクロ経済政策に大きな影響を与えないということができる。財政上は地震地区への投入が拡大され、支援も強化されるものの、こうした投入や支援はちょうど、従来あまり発達していなかった山間部の経済や四川省全体の経済成長を引っ張る積極的な影響を与えることになる。この点は四川の概念株や西部開発の概念株が最近続けてストップ高となっている状況からも証明されている。マクロ貨幣政策や金融政策の面で基本的に大きな変化はなく、依然として緊縮基調は変わらないと見られる。
 短期的、局部的な影響を捨象して、より長期的な観点から見ると、地震は中国に偶然にも「美しい未来」をもたらしたといえるのではないだろうか。まず、地震は中国人全体の精神に直接影響を与え、中国人の凝縮力と求心力を向上させた。中国人はこれまで、経済の不断の成長と物質的な享受を追及する「拝金の思潮」の中に浸っているという批判をしばしば受けてきた。今回の痛ましい災難を経たことで、中国人は、政府や学術、民間の各レベルから深く反省し、国内外から批判されていた「軽薄」で「功利的」な精神状態にピリオドを打った。深い反省を経た民族が発揮する潜在能力は無視できない。こうした再認識の結果は今後の中国の数十年の発展に影響を与えるだろう。
 まず、「持続可能な発展」の全面的な認識や徹底に与える影響を考えてみよう。持続可能な発展の問題で際立っているのは、経済発展モデルや分配の問題、環境保護といった内容である。相次ぐ天災は中国の、大きな力で自然を破壊し、過度に開発する粗放型発展モデルを真の意味で終了させるだろう。中国の経済発展は今後、自然との調和をより重視し、「バランスの取れた調和」という発展の道を追及するものになるだろう。同時に、地域間、社会階層間の公平や平等、労働者保護、救助、保険、分配といった問題の処理についても、より果断で断固とした姿勢が強まることは間違いない。なぜなら、過度の破壊型の開発や盲目的な建設、自然生態に対する「爆弾」のようなプロジェクトがもたらす悲惨な結果は、一部専門家の予言にすぎないものでは決してないことに、人々は気付いたからだ。畏敬を学んだ民族が、より実務的かつ慎重に発展の道を選ぶことは間違いない。
 次に、今回の地震を通じて、責任を果たす政府の姿が示されたということ。中国の一部政府部門、特に一部地方政府が抱える低効率や不作為、腐敗の問題などは、現在拡大しつつある政治体制改革に伴い、徹底的かつ強力に解決されるだろう。温家宝総理は救援部隊に対し、「あなた方を養っているのは人民だ。何をすべきか、自分で考えて行え」と指示した。中国は今後、全国的な政治改革と整頓を実施し、とりわけ公務員と政府職能部門に対する整頓と調整を重点としていく。もし中国の政府職能部門調整が順調に実施されれば、これから数十年間の中国の持続的で安定した発展が全く新たな姿で世界に現れることになるだろう。
 第三に、地震後の四川省地区への援助と支援は、従来一貫して実施されてきた「中西部大開発」戦略を推進し、またこの戦略の推進を新たな次元に押し上げる作用を果たす。中国中西部の開発は、今後長い期間にわたって、上は国家指導者、下は一般市民に至るまでの、全ての中国人の心に宿る信念となるに違いない。もし今日までの数十年の発展の成果が依然として主に沿海地区の発展によるものだとすれば、中国の中西部地域の開発と建設は、中国経済全体ひいてはアジア経済に、はかりしれない大きな影響を与えることになるだろう。この点は今後5〜10年で明らかになるはずだ。中国の魅力と潜在力は、先ごろ地震の発生した中西部でまさに持続し深化することになる。中国経済全体の発展の深まりは、中国の経済成長の持つ大きな潜在力と果てしない前途を世界に示すことになるだろう。
 最後に、庶民生活の支援政策全体の実施。これには貧困地区への支援や低所得層への支援、分配制度の調整、「三農問題(農村、農業、農民)」への継続的で強力な支援が含まれる。これらの政策をただの「恩恵」や「均等主義」と見なすべきではない。こうした政策の実施と徹底は、中国の人口の絶対的多数を占める農村人口の活力を呼び起こす。農民や低所得者層の医療・教育・老後といった面での懸念を解決すれば、そこで誘発される巨大な購買力と生活改善に向けた消費や購買欲は、中国の内需拡大と中国経済の持続的な成長の促進に対し、計り知れないプラスの影響を及ぼすだろう。
 総括すると、地震は確かに苦痛と悲しみをもたらしたが、経済の過熱と軽薄な情緒に長い間とらわれてきた国家と民族にとって、災難によって促された深刻な反省と理知的な選択は、今後数十年の発展の方向性を指し示すものとなったのではないだろうか。落ち着きを失っていた人が、大きな苦痛を経て初めて、より深い反省と思考を呼び起こされたというように。より深みを加えた民族は苦しい覚悟の中で、死者の魂を慰め、真の意味で振興するだろう。
(ORI国際産学研究の提供より 人民網日本語版翻訳編集)
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