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【NRIの視点】 「NRIの視点」は、日本の野村総合研究所(NRI)がメールマガジン「中日経済情報週刊」に設けた特別欄。中日両国の経済・社会などに関するNRIの最新研究結果を両国の読者に提供し、経済研究領域での両国の交流と協力を促すねらいだ。 |
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| 企業間連携により事業化を加速する 日本の新エネルギー・リサイクル業界 |
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| 野村総合研究所 中川隆之、向井肇、佐藤あい |
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1.業界の推移 ○公共分野を中心に形成されてきた環境市場の縮小 環境問題は、従来、地域における公害対策を中心として議論されてきた。公害対策は、人の健康や自然・生態の維持を脅かす公害や自然破壊などのリスクを低減していくことを目的として、1970年前後に規制が強化された。その後、ゴミ処理の問題が議論されはじめ、日本全国でごみ焼却場の建設がすすめられていった。 これまでの環境市場は、主として官公庁が主導して形成されてきた。具体的には、官公庁が市民に対する行政サービスの一環として建設し、運用を行う下水処理や一般廃棄物処理等の市場が形成されてきた。また、1960年代の公害問題を発端に、官公庁による規制を背景として、企業による廃水処理や産業廃棄物処理、排ガス対策などに関連するビジネスが形成されてきた。 しかし、比較的安定していた官公庁主導による市場は縮小傾向にある。この理由は、施設の普及率が高水準となっており、今後メンテナンス・更新が需要の中心になるほか、市町村合併や公営サービスの効率化のための整理統合が進むと予想されるからである。また規制により特需の発生の可能性はあるが、こうした市場では急拡大とその後、大きく減少する傾向がある。例えばダイオキシン対策時のゴミ処理プラント市場の需要が急拡大しその後急落したことが記憶に新しい。このように、官公庁主導による規制対応型の環境市場は今後も縮小すると予想される。
図表1 環境装置の需要部門別生産実績の推移(単位:億円)
 出所)日本産業機械工業会
○環境・エネルギー市場の境界領域で多様化・複合化が進む 1993年に制定された環境基本法以降、地球環境問題に関連する政策が展開されるようになった。2005年の京都議定書発効により、地球温暖化の要因と考えられる温室効果ガス(主として二酸化炭素)の排出量を世界的に抑制することが正式に決定され、日本では2008〜12年の5年間に、温室効果ガスの排出量を90年比で6%削減することが決められた。代表的な温室効果ガスである二酸化炭素は、主として化石燃料の使用により発生するため、地球環境問題を論じる時は、化石燃料の削減が密接に関連するようになり、環境問題とエネルギー問題が融合しつつあると言える。 さらに近年の歴史的な原油高に伴って、化石燃料の利用量を抑制するために国として省エネや新エネの普及を積極的に支援していく方向性が打ち出され、種々の省エネや新エネ製品の開発が加速しつつある。このように主として公共を中心としてきた環境市場に新たに地球環境問題や、後ほど述べる資源価格の高騰、企業・消費者意識の変化などの因子が加わることによって、市場が多様化・複合化してきている。
図表2 多様化・複合化する環境・エネルギー市場

2.最近のトピックス 環境市場とエネルギー市場との境界領域において、市場が多様化・複合化してきており、事業機会が拡大すると考えられる。注目すべきトピックスは、以下の通りである。 -環境負荷(二酸化炭素)の削減を取引する市場の出現 -資源価格の高騰の影響 -環境規制の影響が中小ならびに川上企業へと拡大 ○環境負荷(二酸化炭素)の削減を取引する市場の出現 京都議定書が環境ビジネス市場に大きなインパクトを与えた要因のひとつとして、排出権取引やCDM(クリーン開発メカニズム)といった京都メカニズムと呼ばれる手法がある。これらの特徴の1つとしては二酸化炭素排出の削減に対して明確な金銭的価値がつくことであり、企業による投資を呼び込むインセンティブとなることがあげられる。2つ目の特徴が金融商品として扱われるようになったことであり環境ビジネス市場における銀行や商社などのファイナンス関連業界の重要性が高まっている。上記の排出権取引やCDMの市場はすでに動きはじめており、日本でも国際協力銀行などの金融機関がこうした分野への投資をおこなっている。日本政府が2006年に承認した事業は合計で62件、量にして二酸化炭素換算で年1278万9400tとなっており、件数は対前年比で2.7倍に拡大している。特に中国での事業が急拡大しており、2006年において件数で約1/3、量で半分を占めている。 ○資源価格の高騰の影響 2000年代に入りアジア経済発展に伴う資源輸入量の増大の結果、原油や天然ガスなどの化石燃料、鉄鉱石、銅、亜鉛などの鉱物資源の価格が大きく値上がりし、資源循環に影響を及ぼす可能性がでてきている。 2008年の6月現在、原油価格は1バレルで140ドル前後(WTI)まで急上昇している。この背景には、アジアの新興国を中心とした石油需要拡大のほかに投機資金の流入があり、当面の需給展望を鑑みると、原油価格は比較的高い水準を維持することが予想される。 銅、亜鉛、鉄鉱石、ニッケルなどの価格も、この数年で急速に上昇している。この背景として、アジアを中心として需要が拡大しているのに対して、資源供給企業の寡占化が進んでおり、売り手市場になっていることが挙げられる。 こうしたことがエネルギーやリサイクル産業にも大きな影響を与えている。例えば、オンサイト発電事業は、燃料価格の高騰に苦しみ、事業撤退に追い込まれるケースも生まれている。一方、非鉄製錬メーカでは、銅、亜鉛などのリサイクルを強化するとともに、電子材料分野で利用されるレアメタル(希少金属)についても、需給の逼迫が予想されることから、新たなりサイクル体制を強化する取り組みを拡大する傾向が見られる。 ○環境規制の影響が中小ならびに川上企業へと拡大 地球規模での環境問題への対応の必要性と、経済活動のグローバル化によって、諸外国の環境規制の影響が我が国にも及ぶようになってきている。最近の事例としては、欧州の製品に含まれる有害物に対する規制(RoHS指令)によって鉛や六価クロムの使用の利用が制限され、我が国の製造業にも大きな影響を与えたことが記憶に新しい。 これらの規制による影響は2点あると思われる。第一点目は、企業が資材調達の際に環境に対する取り組みを評価するようになることで、より上位に位置する部品企業や材料企業に規制の影響が拡大し、直接グローバル市場に展開していない中小企業も影響を受けることである。第二点は、こうした規制の対象が有害物質だけでなくあらゆる環境負荷に拡大されることである。上記のRoHS指令は一部の有害物質に対する規制であるが、現在EUでは二酸化炭素排出量に関する規制が検討されている。これが実現すると、極端に言えば、エネルギー消費というあらゆる産業に関連する行為が規制の対象となり、どの企業も無関係ではいられない。このように、ある環境規制が、あらゆる地域・規模・業種の企業にも影響を及ぼす時代を迎えつつある。この結果、環境マネジメントの市場が拡大すると予想される。
3.業界構造の変化 (1)環境問題と資源・エネルギー問題の境界領域において市場が拡大 従来は地球温暖化問題と資源・エネルギー問題は別々に論じられていた。近年、これらの境界領域において、双方からのニーズが重複・融合する領域存在し、その領域に対する注目度が高まっている。具体的には、以下の2つの変化が進むと予想される。 @地球温暖化問題とエネルギー問題の融合 環境問題の中で特に近年の注目を集めているのが、地球温暖化問題であり、京都議定書の発効に伴ってその対策が求められている。2.で述べたような環境規制の影響もあり中小企業も含めてあらゆる業界・企業が二酸化炭素排出削減を求められつつある。温暖化対策のためには二酸化炭素排出量の削減が必要で、これはエネルギー使用量の削減と直結する。さらに原油価格高騰に伴うエネルギー需給安定化のための施策としても省エネ・新エネニーズが求められている。このように、地球温暖化問題とエネルギー問題の融合領域としての省エネ・新エネ市場が大きな注目を集め、政府による支援も後押しして新たな製品・サービスの登場など市場の拡大・活性化が起こると考えられる。 A資源価格の高騰とリサイクル市場の拡大 廃棄物の埋立地の不足は年々深刻になっており、廃棄物のリサイクルが法律によって義務付けられてきた。最近では家電リサイクル法や廃棄自動車のリサイクル法の導入が記憶に新しい。また、製品に混入している有害物質が埋め立後に流出することに対する対策としてもリサイクルに対するニーズが高まっており、循環利用量の比率は1992年の30%から、2001年には36%の水準となっている。 こうした環境問題を背景としたニーズに加えて、近年では資源価格の高騰に伴って資源確保・有価物回収のためのリサイクルが行われるようになっている。資源供給に関連する石油産業、窯業、製錬業等において、資源リサイクルの促進に対する期待が高まっている。さらには、近年はバイオ燃料に対する注目が集まっている。これまで廃棄されてきたバイオマス資源を活用することで、ゴミ問題の解消に繋がるほか、エネルギー問題の解消にも貢献する。これは廃棄物処理という環境問題とエネルギー問題の融合領域と考えることもできる。 (2)新エネルギー・リサイクル業界において企業の合従連衡が進む 従来、省エネ・新エネルギーならびにリサイクル業界は、異なる企業が担当していた。しかし、資源・エネルギー問題と環境問題の境界が曖昧になるにつれて、双方の分野からの進出が相次いでいる。 例えば石油メジャーが本格的に代替エネルギーへの参入を開始する一方で、公害対策を中心に行ってきたプラント・エンジニアリング企業が資源リサイクル・新エネルギー・省エネなどの分野への展開を図っている。さらに、英石油大手のBPは、米風力発電開発会社のグリーンライト・エナジーの買収やバイオ燃料開発の専門研究所設立などを通して新エネルギー事業の拡大を図っている。また、ロイヤルダッチシェルはカナダのバイオ燃料大手企業であるイノゲンと欧米で合弁生産に乗り出すことを計画している。 また、主として公共向けに展開していた日本のエンジニアリング企業は、従来新しい設備の設計、製造、据付といったEPC業務を中心に行っていた。今後、公共市場が縮小に対応し、運用ならびにメンテナンス分野(O&M:オペレーション&メンテナンス業務)へシフトを行うとともに、民需分野を新たに開拓しつつある。運用分野への展開に際しては、ごみ発電などのエネルギー分野や、民需分野においては省エネや産業廃棄物のリサイクルにも展開している。 さらに、公共工事の縮小の影響を受けて日本のエンジニアリング企業は事業領域を変革し、組織形態も変化しつつある。この理由としては、発注形態がPFI(民間主導型社会資本整備)や包括契約が増えるなど多様化していることへ迅速に対応できるように事業部門を分社化するケースが近年増えている。例えば、JFEエンジニアリングは、環境エンジニアリング事業を子会社に移管し、社名をJFE環境ソリューションズに変えた。また、荏原は、上下水道事業部門を会社分割し、運用と一体で対応できる体制を構築しつつある。これらの企業では、新たな成長領域を獲得する上で、不足する機能については、今後、他の企業との提携などを加速していくことが予想される。 新エネルギー、バイオマス、新たな廃棄物・素材リサイクルにおいても、複数の企業体が提携しつつ事業を獲得する事例が増加しつつある。例えば、地球温暖化とエネルギーの業際領域である省エネルギー/新エネルギーの分野では、異なる業種の企業間連携が拡大しつつある。例えば、ESCO企業であるファーストエスコが日本樹木リサイクル協会加盟社と提携して木質バイオマス専焼発電所を稼動し、省エネ支援サービスとあわせて、木質バイオマス発電および電力小売事業を強化している。バイオマス発電では、従来、大手の製紙会社が単独で行っている例が多いが、最近、エンジニアリング企業が小規模な製紙会社と共同事業を行っている事例も出始めている。またリサイクル領域においても、廃棄物を資源として回収する企業と原材料として受け入れる企業との間での連携が強化されることが予想される。 以上、業界構造の変化のまとめを図表3に示す。資源エネルギー問題と環境問題の境界に、省エネ・新エネ、リサイクル、環境マネジメントの市場が出現しておりこの領域を新たな事業機会としてとらえ企業間が合従連衡しつつ参入を図りつつある業界であるといえよう。 近年異業種の企業が連携して事業化を進めている例が増加している背景として、技術開発のみでは差別化が行いづらくなり、他社を巻き込んだビジネスモデルを構築し、事業化を加速しようとしていることが挙げられる。
図表3 境界領域で市場の融合がすすむ新エネルギー・リサイクル市場

4.市場の見通し 前章で述べた業界構造の変化が、新エネルギー・リサイクル市場に与える影響について市場の見通しを試算する。2010年に向けて、「エネルギー」「リサイクル」「環境マネジメント」の3領域で新たな市場が生まれると考えられる。それぞれの領域における規模について以下に述べる。 (つづく) |
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| (野村総合研究所の提供より) |
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| 作者紹介 |
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中川隆之 1965年生まれ。1990年野村総合研究所入社。技術•産業研究部を経て、現在、技術産業コンサルティング部グループマネージャー。専門は素材、部品、エンジニアリング企業の事業構造改革、成長戦略 |
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向井肇 1977年生まれ。2003年野村総合研究所入社。現在、技術•産業コンサルティング部副主任コンサルタント。専門は環境、エネルギー企業の事業構造改革、成長戦略 |
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佐藤あい 1980年生まれ。2005年野村総合研究所入社。現在、技術•産業コンサルティング部副主任コンサルタント。専門は環境、エネルギー、医療•ヘルスケア企業の事業構造改革、成長戦略 |
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| 野村総合研究所(NRI)の紹介 |
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現在の野村総合研究所(NRI)は1965年、野村證券の調査部門が独立して出来た旧野村総合研究所と1966年にやはり野村證券電子計算部門が独立して出来た野村コンピュータセンターの2社が1988年に合併した会社です。野村総合研究所(NRI)の強みは“トータルソリューション“を提供する総合力を備えていることです。 野村総合研究所(NRI)は、日本の民間総合研究所のなかで最も歴史があるだけでなく、売上や従業員数等の経営規模も最大で、2001年には東京証券取引所に株式を上場しています。 日本以外では、英国、米国(ニューヨーク、ロスアンゼルス)、ソウル、北京、上海、台北、香港、マニラ、シンガポール等に拠点を設置しています。中国大陸では、野村綜研(上海)諮詢有限公司、及び、野村綜研(北京)系統集成有限公司を設立しており、政府機関、民間企業に対して、政策コンサルティング、経営コンサルティングから情報システム構築・運営に至る“トータルソリューション“サービスを提供しています。また、清華大学と共同で清華大学・野村綜研中国研究中心を設立して、中国の経済・社会に関わる研究を実施し、研究成果の情報発信などを行っています。 |