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Vol.3(2008/7/20発行)
【NRIの視点】
 「NRIの視点」は、日本の野村総合研究所(NRI)がメールマガジン「中日経済情報週刊」に設けた特別欄。中日両国の経済・社会などに関するNRIの最新研究結果を両国の読者に提供し、経済研究領域での両国の交流と協力を促すねらいだ。
企業間連携により事業化を加速する 日本の新エネルギー・リサイクル業界(続)
野村総合研究所 中川隆之、向井肇、佐藤あい
4.市場の見通し
 前章で述べた業界構造の変化が、新エネルギー・リサイクル市場に与える影響について市場の見通しを試算する。2010年に向けて、「エネルギー」「リサイクル」「環境マネジメント」の3領域で新たな市場が生まれると考えられる。それぞれの領域における規模について以下に述べる。
◎エネルギー(省エネ・新エネ)
 原油価格の高騰により、省エネや新エネに対する投資が経済性に合致する分野が広がり、当分野における投資が拡大すると見込まれる。具体的には、コジェネなどのエネルギー高効率利用および太陽光発電やバイオマス発電などの新エネ利用のための機器・サービスなどが考えられる。
○省エネ
 エネルギー原単位の改善によって得られる金銭的便益を、エネルギーの消費者が省エネ機器・サービスに対して支払い得る対価と考え、その規模を算出する。<注1>
  経済産業省は、省エネ支援などに関する追加対策を講じたケースとして、2010年段階で2000年比3.7%のエネルギー消費量削減を見込んでいる。これを、想定される鉱工業生産指数、業務用床面積、世帯数、輸送量の環境下で達成するためには、2010年までに7.4%のエネルギー原単位改善が必要となる。仮にこれが達成される場合には、原単位改善によって得られる金銭的便益は、産業・民生・運輸の各部門が支払うエネルギーの総コストを約37兆円とすると、約2.7兆円<注2>に達する。このうちの一部が、ESCO事業モデルのように、機器・サービスを提供する事業者が得る対価であると考えると、その比率を50%<>とした場合には、約1.5兆円に達する。
 ただし、上記の目標を達成するには、これまで省エネ施策を尽くしてきた産業部門での更なる対策に加えて、省エネが進みにくいと言われる家庭や運輸部門においても大きな改善が必要になる。仮に現状程度の原単位改善にとどまる場合には、原単位改善効果は3.3%で、同様の試算の結果は約3,900億円となる。

 図表4 エネルギー消費の推移と原単位改善


○新エネ
  新エネについては、生み出されたエネルギーの価格<注4>を新エネ市場として定義し、そのポテンシャルを試算する。対象としては、新エネ利用拡大の主要部分を占めると考えられる太陽光発電、太陽熱利用、風力発電、廃棄物発電・熱利用、バイオマス発電・熱利用を取り上げる<注5>。
 統計が整備されている2003年において石油換算で約330万klが利用されている。資源・エネルギー庁は、2010年までに最大でこれを約1,250万klにまで伸ばすことを目標としている。仮に現状の機器単価の元でこの目標が達成すると仮定すると、エネルギー源別に単価をかけあわせて試算した結果、市場のポテンシャルは、約1兆5,000億円に達する。
  ただし、太陽光発電の単価が収束してきていることや、風力発電に適した地域が限られることを考えると、系統電力と競合するこれらのエネルギー源の普及については障害が多い。仮に現状の増加量のまま推移する場合を試算すると、2010年段階では640万klにとどまり、規模は約9,000億円となる。(なお、一年あたりに設置される機器の市場は、政府目標を達成する場合で約1兆1,000億円、現状の増加量のまま推移する場合で約2,400億円となる。<注6>)
 目標達成のためには技術面でのブレイクスルーや政策による更なる支援等が求められる。

 図表5 新エネルギーの普及目標


◎リサイクル
 リサイクルに対する法的規制の強化と、近年の資源価格の高騰に伴ってリサイクル市場が拡大しつつある。まず、我が国における廃棄物ならびにリサイクル資源のフローは、図表5に示したように廃棄物ならびに資源回収分を合わせて年間5.9億tの資源が排出されている。このうち66%が中間処理されて、全体の36%がリサイクルされている。

 図表6 循環資源フロー(2001年)

 出所)現状値は環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部平成15年調査
 このリサイクル市場の規模を以下の定義に基づいて算定した。

 リユースならびに直接リサイクル分
 -回収した資源の販売価格の総額をリサイクル市場として定義
 中間処理を経由してリサイクル分
 -収集・運搬ならびに中間処理の処理に係わる費用合計のうち、リサイクル比率分をリサイクル市場として定義
 資源回収分で1.4兆円、廃棄物から中間処理を経由した回収分で1.2兆円の合計2.6兆円の市場を形成していると推計される。
 循環利用量の比率は材質によって異なっており、金属系がもっとも高く、非金属鉱物系、化石系、バイオ系の順となっている。ここで資源の価格高騰に伴って、価格上昇が著しい金属系資源についてのリサイクル比率については、電子材料分野で利用される希少なレアメタル類を中心として更なるリサイクル材の利用拡大が期待されるが、量的なインパクトはあまり大きくない。数量的には、近年、リサイクル率が急速に拡大している非金属系や、リサイクルが進んでいなかったバイオマス系(木屑、厨房、紙)の数量の拡大が予想される。また化石系(廃プラスチック)においては原油の価格上昇に伴って、熱源としての利用拡大が進む可能性があると予想される。
 今後、埋立て処分から、循環利用へとシフトすることが予想される。過去のトレンドを考慮して図表7のように循環利用が現状の36%から40%に増加した場合を想定した場合、2010年におけるリサイクル市場は、3.3兆円に拡大すると予想される。

 図表7 廃棄物のリサイクル率の現状(2001年)と2010年の予想

 出所)現状値は環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部平成15年調査

◎環境マネジメント
 環境に対する取組みを評価した調達先の選別に対応するために、中小企業を中心に環境マネジメントの仕組みに対する投資が拡大すると見込まれる。環境コンサルティング、LCAのための情報システム、環境コミュニケーションなどが挙げられる。
  環境マネジメント市場のポテンシャルを、企業が環境管理に支払うコストから算出する。企業が環境管理に支払うコストは売上の約0.08%である<注7>。環境管理にこうしたコストをかける企業は、ISO14000シリーズなどの環境マネジメントシステムを構築している企業であると想定すると、こうした企業が2005年時点で約1万社存在する<注8>。近年ではISOだけでなく中小企業向けの環境マネジメント規格の普及が拡大しており、この規格の取得事業者が近年の経緯と同一の比率で拡大する場合には、2010年には約8万7千社に達する<注9>。従業員数規模ごとの平均売上高<注10>と上記の1社当たりの売上比コストを掛け合わせると、2010年に約8,300億円に達する。ただし、これは企業にとってのコストであり、従業員の人件費も含まれている。このうち社外委託され市場として形成される比率を25%とすると<注11>、約2,100億円となる。同様の考え方で算出した2005年の市場規模は約1,700億円であり、2010年はその約1.2倍に相当する。
 以上の省エネ、新エネ、リサイクル、環境マネジメントの2005年における市場は、約3.9兆円と試算される。今後、現状のトレンドのままで拡大した場合には、2010年には約4.8兆円になる。さらに、省エネならびに新エネが、政府の目標水準にまで到達した場合には、6.5兆円になると試算される。(終わる)

 図表8 新エネルギー・リサイクル市場予測結果

注1 エネルギー効率改善の要因には単なる最新機器への買い替えによる効果も含まれるが、こうしたことも省エネのためのエネルギー消費者が得られる金銭的価値としてカウントされる。
注2 電力、ガス、石油(材料利用除く)それぞれの業界の売上を合算した数値。
注3 ESCO事例より
注4 利益は上乗せせず、コストをそのまま価格として計算する。廃棄物発電など公共による事業の場合も市場規模として計上する。
注5 黒液・廃材等については確立された領域であることから試算対象からは外す。また、未利用エネルギーとバイオマス熱利用のうちの輸送用燃料については、生産・輸出入の形態に不明な点が多いことから今回の試算対象からは外す。
注6 機器のストックから発生するエネルギー市場に対して、フローで発生する機器市場のほうが、政府目標達成の場合と現状のまま推移する場合の差が大きい。
注7

主要企業の環境会計における「管理活動に伴うコスト」より平均値を算出

注8

環境省によるアンケート調査「環境にやさしい企業行動に関するアンケート調査」よりNRI算出

注9

従業員数300人以下の企業については上記環境省によるアンケートより今後導入予定としている企業に導入されるものとして算出

注10 東京商工リサーチデータベースより算出
注11 主要企業の環境会計における「管理活動に伴うコスト」のなかで人件費が明示されていた企業の集計結果から数値を想定。
(野村総合研究所の提供より)
作者紹介
中川隆之
 1965年生まれ。1990年野村総合研究所入社。技術•産業研究部を経て、現在、技術産業コンサルティング部グループマネージャー。専門は素材、部品、エンジニアリング企業の事業構造改革、成長戦略
向井肇
 1977年生まれ。2003年野村総合研究所入社。現在、技術•産業コンサルティング部副主任コンサルタント。専門は環境、エネルギー企業の事業構造改革、成長戦略
佐藤あい
 1980年生まれ。2005年野村総合研究所入社。現在、技術•産業コンサルティング部副主任コンサルタント。専門は環境、エネルギー、医療•ヘルスケア企業の事業構造改革、成長戦略
野村総合研究所(NRI)の紹介
 現在の野村総合研究所(NRI)は1965年、野村證券の調査部門が独立して出来た旧野村総合研究所と1966年にやはり野村證券電子計算部門が独立して出来た野村コンピュータセンターの2社が1988年に合併した会社です。野村総合研究所(NRI)の強みは“トータルソリューション“を提供する総合力を備えていることです。
 野村総合研究所(NRI)は、日本の民間総合研究所のなかで最も歴史があるだけでなく、売上や従業員数等の経営規模も最大で、2001年には東京証券取引所に株式を上場しています。
 日本以外では、英国、米国(ニューヨーク、ロスアンゼルス)、ソウル、北京、上海、台北、香港、マニラ、シンガポール等に拠点を設置しています。中国大陸では、野村綜研(上海)諮詢有限公司、及び、野村綜研(北京)系統集成有限公司を設立しており、政府機関、民間企業に対して、政策コンサルティング、経営コンサルティングから情報システム構築・運営に至る“トータルソリューション“サービスを提供しています。また、清華大学と共同で清華大学・野村綜研中国研究中心を設立して、中国の経済・社会に関わる研究を実施し、研究成果の情報発信などを行っています。

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