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Vol.11(2008/12/05発行)

【特集】

道上尚史公使インタビュー-----中国の発展は日本にとって脅威ではない

 中日両国首脳の相互訪問が実現した07年が過ぎて間もない今年1月末、両国が苦心して打ち固めた信頼の土台は突然の「ギョーザ事件」によって弱められた。3カ月余りの後、胡錦濤主席は「暖かい春の旅」と言われる訪日を行い、日本各界の人々と対話した。5月の四川大地震は、「もう一つの日本」を中国人に発見させる機会となり、日本の援助に感謝する声がネット上に沸き起こった。9月には福田首相が突然辞任。日本の首相の頻繁な交代は、中日関係の良好な時期は長続きしないのではないかとの中国人の心配を呼んだ。

 日本の駐中国公使を務める道上尚史氏は11日、「国際先駆導報」のインタビューを受けた。1時間のインタビューで道上公使が最も多く使った言葉は「理解」。道上公使は、周恩来や魯迅、孫文らと日本との結びつきに触れ、「中国の人々がこの時期の歴史に対する知識を深め、日本をさらに理解してくれることを期待している」と述べた。

 ▽愛憎入り混じった日本人の中国観

 ――「国際先駆導報」が「天涯社区」(BBS)と共同で行ったアンケートは、日本に対する中国人の複雑な感情を示すものとなりました。「最も好きな隣国」と「最も好きでない隣国」の両方で、日本が第2位となったのです。この調査結果を意外に思いますか。

 それほど意外とは思わない。中国に来る前、中国人に対する日本人の見方を私も調査したが、その結果は想像した通りだった。これは第一に、隣り合わせの国には、摩擦や矛盾、対立感情や偏見が起こりやすいためだ。英国とフランス、フランスとドイツ、米国とメキシコなどでもそれは同じだ。第二に、日中両国の国民は相手を理解していると思い込んでいるが、実際にはそれほど理解していないためだ。日本について言えば、中国への理解はほとんど本などから得たものだが、中国に来てからの印象はそれとは全く違う。身をもって感じた中国こそが本当の中国だ。

 ――2008年だけを取ってみると、中日関係に対する中国人の満足度と日本に対する中国人の好印象はいずれも上がっています。一方、中日関係に対する日本人の好感度は下がっているというデータがあります。日本人はなぜ中日関係を良く思っていないのでしょうか。

 これには2つの原因がある。第一に、両国首脳の関係が良くなった時、例えば胡錦濤主席が日本と良い関係を結ぼうと呼びかけた時、中国の民衆はその意見に比較的早く賛成する。だが日本では残念なことに、日本政府が呼びかけても、国民がそれに賛成するには時間がかかる。1年、2年、3年、さらに長い時間がかかるかもしれない。

 第二に、総合的な原因だ。ギョーザなどの食品問題や聖火リレー関連のトラブルのほか、中国の急速な発展が日本の経済に損失を及ぼすのではないかといった不安がある。さらに3年前の反日デモは、日本の新聞やテレビにも大きく取り上げられ、日本人の印象もとても大きく、投石事件などがまだ鮮明に記憶されている。スポーツ試合でも同様の状況が発生した。国と国との関係は人と人との関係と同じで、相手がこちらに向かって石を投げるなら、相手が自分を嫌いなら、こちらも相手が嫌いになってしまう。ただ、日本人が中国にさまざまな見方を持っているとはいえ、中国文化とりわけ古典文化に対する興味は過去も現在も強い。三国志や論語、唐詩に親しみをもっているほか、日本人は小学校から毛筆も習っている。

 中国について言えば、周恩来や魯迅、孫文らは日本との関係がとても大きな人々だ。日本への留学や長期滞在の経験を持っている。胡錦濤主席は80年代に日中交流の仕事にかかわった。1978年10月にはケ小平副主席が日本を訪問し、松下や日産などの日本の企業を見学し、新幹線にも乗った。そして、日本を参考として中国の改革開放を進めていく決定をした。歴史的に見れば、中国の指導者は日本との関係を重く見ていた。このような歴史を中国の人々にわかってもらうことは、非常に意義あることだ。

 ▽震災救助への感謝の声に感動

 ――今年、中日の民間の関係に大きな影響をもたらす出来事が2つありました。その1つは、四川大地震時に日本が中国に無償援助を与えたことです。中国メディアもこれを肯定する多くの報道を行い、日本に対する中国民衆の好感度が上がりました。日本人に対する中国人の感謝を感じましたか。

 私も身をもって感じ、とても感動した。中国メディアの報道を見ただけでなく、中国人からの多くの電話を受けた。大使館職員は、「以前は日本と聞くだけで反感を覚え、つばでもひっかけてやりたいと思っていた。だが中国の地震に対する日本の支援を目にし、とても感動し、日本をよく思うようになった。日本にとても感謝している」という涙声の電話を受けたという。私はそれを聞いてとても感動し、そのことを日本の友人に伝えた。

 日本の救助隊が発見した遺体に集団で黙とうを捧げた場面は、中国の民衆の高い評価を受けた。だが日本では死者に黙とうを捧げるのはとても自然な行為だ。当時、日本の人々も地震の被災者のために心を痛めた。学校が崩れて多くの学生が亡くなったというニュースも悲しみを呼んだ。中国を好きな人も嫌いな人も、自ら町に出て募金活動を行った。

 ――中国に来る前、中国にどのような印象を持っていましたか。

 外交官として、戦争などが原因で日本を好きでない人も少なくないということは私も知っていた。だが北京で多くの若い学生と知り合い、日本の現代文化と伝統文化に彼らがとても興味を持っていることを知った。茶道や歌舞伎などだ。このことは、日本に好感を持っている人も少なくないということを示している。

 ▽中日メディア交流の大きな意義

 ――中日関係に影響をもたらしたもう一つの出来事は「ギョーザ事件」です。日本メディアは多くのマイナス報道を行い、日本の人々の中国を嫌う情緒を高めました。この問題に対して日本メディアは責任があると思いますか。

 日本メディアがギョーザ問題を誇張報道したかという問題は、個人的には答えにくい問題だ。だがあなた方に理解していただきたいのは、日本は世界で最も食品安全を重視する国の一つであり、ギョーザ問題が過熱したのは中国が嫌いだからではないということだ。どの国に対してもそれは同じだ。日本企業に同様の問題が発生すれば、徹底的な追及が行われ、破産にいたるケースもある。米国牛肉の検疫が日本の基準に合わないとなれば、日本国内に激しい反応を呼び起こすことになるだろう。中国で起こった三鹿粉ミルク事件に中国政府と庶民が高い関心を払ったのと同じだ。

 ――中日メディアの交流強化の面で、日本政府はこれを推進するような措置を取っているのでしょうか。

 これはとてもいい質問だ。我々はすでにそのような措置を開始している。日本ではすでに中国の若い記者を日本に招くなどしている。メディア間のこのような交流はとても多い。両国の一部のメディア関係者もフォーラムを開いている。

 始めたばかりの時には、意見が一致せず、論争となる場面もあるだろう。ギョーザ問題や西蔵(チベット)問題など敏感な問題についてはなおさらだ。だが何度も意見を交換するうちに、相手がなぜそう言っているのかがわかってくる。これは積極的で客観的な報道のためにもとても意義のあることだ。

 ▽中国の発展は日本にとって脅威ではない

 ――日本人の一部が中国を嫌うのは中国の発展が日本に脅威となることを心配しているためだという見方があります。この見方に同意しますか。

 麻生首相がしばらく前に中国中央電視台(CCTV)のインタビューを受けた際、かつて会社経営にかかわったことのある立場から見て、「中国経済脅威論は成り立たない」と語った。中国の発展は日本にとって良い面しか持っていないからだ。「中国経済脅威論」に賛成する人が日本にいないとは言わないが、それほど多くはない。

 ――麻生首相の観点を日本の人々に受け入れてもらうにはどうすればいいのでしょうか。

 二国間関係は自転車に例えることができる。一生懸命こがなければ、いったん停止してしまえば、その関係は倒れてしまう。日中関係という自転車は、日本だけがこいでいるのではだめで、中国側も共にこがなければならない。しかも政府がこいでいるだけではだめで、メディアや国民もみんなががんばらなければならない。そうして初めて、自転車は前に進み、両国関係も発展できる。

 ――日本人が中国を受け入れるには時間がかかるので中国人は成果を焦らず寛容でなければならないという見方があります。これを正しいと思いますか。

 日中関係の発展には時間に拘泥していてはならない。また相手が自分の国を好きかといった国民レベルの感情も重要でないわけではないが、さらに重要なのは、中国も日本も大国であり、さまざまな問題があるのは当然なのだから、問題が現れた時に衝動的になってはならず、相手を感情的に完全否定するようなことがあってはならないということだ。みんなが一緒になって日中友好の堅固な土台を築いてこそ、さまざまな問題を処理することが可能となる。

 ▽首相の交代は中日関係に影響せず

 ――中国の人々は、中日関係に最も影響するのは歴史問題だと考えています。しばらく前、日本自衛隊の高官が侵略の歴史を美化するという事件がありました。日本政府の官僚にはこのような人は多いのでしょうか。麻生首相は中国侵略の歴史についてどのような立場を持っているのでしょう。

 このような立場を持っている人は多くはない。その発言が日本政府の立場に反したからこそ、(自衛隊高官は)処分を受けたのだ。麻生首相も、1995年の村山談話を継承することを明らかにしている。(1995年8月15日、当時の村山富市首相は、第二次大戦中の日本は「国策を誤り」、日本の「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与え」たことを認め、「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明」した。)

 ――多くの中国人が、日本政府の頻繁な人員交代が両国関係の不安定につながるのではないかと心配しています。このような心配は必要でしょうか。

 歴史問題においては、日本の首相の立場は一致している。福田前首相も麻生首相も1995年の村山談話を継承している。中国の民衆は心配する必要はない。

 ――日本を好きでない中国の人々に対しては何を言いたいですか。

 自国の誇りとなることばかり言うと自己満足と思われるかもしれないが、私が強調したいのは、海外諸国の多くは、先進国であれ発展途上国であれ、日本をとても高く評価しており、世界に対する貢献がとても高い国だと認識しているということだ。日本の大企業やマンガが評価されているだけではなく、日本の精神が高く評価されているということはとても重要だ。他国に対して本当に効果のある援助をすることや、金儲けにならないことでも、自分の仕事をこつこつとやり遂げ、良質な製品を作り上げるといったことが評価されている。

 実際のところ、私がいくら説教してもあまり意味はない。本当に意味があるのは、中国の人々が日本に行ってみて、日本がどのような国かを自ら見てみることだ。日本に問題がないというわけではない。だが、「以人為本(人をもって基本とする)」という言葉が中国にあるように、人と人との交流を通してこそ、本当の日本を感じ、理解することができる。

(編集MA)----「人民網日本語版」

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