中国語版へ

Vol.19(2009/04/5発行)

【特集】

中国:内需拡大でいくつかの方面との関係処理が必要

国務院発展研究センターマクロ経済研究部 魏加寧主題講演を行う国務院発展研究センターマクロ経済研究部副部長の魏加寧氏。

 日本・内閣府経済社会総合研究所が主催した「中国の経済発展と日中経済関係シンポジウム」が3月28日、北京王府半島酒店で開催され、国務院発展センターマクロ経済研究部副部長の魏加寧氏が「内需拡大でいくつかの方面との関係処理が必要」と題する報告を行った。以下が報告の主な内容である。

 国際的な金融危機への対応の過程において、対外依存度が大きな中国経済にとっては内需拡大が非常に重要である。しかし内需拡大の際に、我々はそれと他のいくつかの方面との関係の処理に注意する必要がある。

一、内需拡大とセーフティーネット構築との関係。

 現在の国際的な金融危機に対応する際に、中国の学術界では現在、1930年代にルーズベルトがとった「ニューディール政策」で何を行ったのか、その是非、役に立ったのかどうかについて論じている。私の個人的な考えでは、ルーズベルトの「ニューディール」では主に3つの事を行っている。一つは拡張的な財政を実施し、インフラ建設を行ったことだ。これが正しかったのかどうか、役立ったのかどうか。現在まだ討論中だ。

 もう一つが連邦準備制度の構築で、システム的に崩壊に陥っていた銀行システムを安定化した。もう一つが社会保証システムの構築で、失業者が生存でき、世間を騒がせないようにし、社会の安定を保った。

 現在、中国が金融危機に対応するにあたっても2つの構想がある。一つの構想は、まず成長を保ち、就業を保証し、最後に安定を保証するというもの。もう一つの構想は、危機管理の理論に基づき、まず最悪の備えを行い、セーフティーネットを構築、先に底を支え、安定を保ち、経済の変動による金融の変動や社会の変動をもたらさないようにする。その後に市場による企業の調節を行い、企業が淘汰され、企業の生死により構造調整を実現する。このためまず、セーフティーネットの構築を速める必要がある。

 いわゆるセーフティーネットとして急務なのは、一つが金融のセーフティーネット、もう一つが社会のセーフティーネットだ。金融のセーフティーネットの構築と言えば、現代の金融のセーフティーネットには主に3つの支柱がある。第一が独立の中央銀行、もう一つが統一的な総合的監督管理、最後が強化を続ける預金保険だ。中国には現在中央銀行、銀行業監督管理委員会が存在するが、預金保険制度という重要な支柱に欠ける。預金保険制の構築を速め、多くの中小預金者の利益を保護し、銀行にシステム上のリスクが生じるのを防ぐ必要がある。

 社会のセーフティーネットの構築に関して現在、解決が急がれる問題は、東部沿海地区の一部の出稼ぎ労働者が失業して故郷の中西部地区に帰っているが、彼らが東部沿海地区の出稼ぎ先で積み立てた年金保険などは省を越えて続ける事ができないため、これら労働者は脱退するしかないことだ。しかし脱退の際にも自分が納めた部分しか手に入れることができず、企業と地方政府が彼らのために納めた部分はいずれも受け取ることはできない。このため、複数省にまたがる出稼ぎ労働者の年金保険移動の問題の解決が急がれる。

 最近、年金保険の省を越えて参加する問題が国家の関連部門や全国人民代表大会から大きく注目されている。国家は「社会保険法」の制定を急ぎ、年金保険の省を越えた移動の問題を解決しようと試みている。私個人としては、各級政府や広範な国民が不景気な時期もあり経済発展が危機に陥る可能性を意識していることから、社会のセーフティーネット構築面への投入の拡大に賛成であるため、現在は社会保障制度構築のよいチャンスだと考える。

二、内需拡大と構造調整との関係

 危機は調整を意味する。調整を加速することでのみ初めて「危」を「機」に変えることができる。

 現在は国際的な金融危機のショックに直面し、中国経済は内需拡大や経済の刺激策を必要としているものの、他の面では中国経済は構造調整をより必要としている。理由は3つある。第一に、長期的に見て、過去の生産要素の価格を縮小することを頼りに発展する方法は継続が困難であると考えられ、調整を行い、発展方法を転換する必要があるため。第二に、中・長期的に見て、過去5年間(2003〜2008年)は毎年10%以上の成長スピードを保ってきたのと同時に、中国経済には多くの構造的な矛盾や問題も積み重なり、調整を必要としている。過去の改革・開放30年来のマクロ調整の歴史から見ても、それぞれの経済過熱の後にはいずれも調整と整頓の時期を必要としてきた。短期的に見ると、ここ2年で中国経済自身の資産価格のバブルもはじけており、バブル崩壊の後はいずれも調整が必要だ。今回は国内外で2つのバブル崩壊が「同時発生した」と言ってよく、このため対外構造の調整が必要なだけでなく、中国経済自身の内部構造の調整も必要とされている。

 内需拡大は主に、構造調整による経済の過渡的な減速を防止するためだ。このため本末転倒にならないようにしなければならない。構造調整を先に、内需拡大を後に行うべきだ。さもなければ「一つの問題を解決するために、より大きな問題を生み出す」(林毅夫)ことになり、米国の轍を踏む可能性がある。米国はグリーンスパン氏の時期に、ITバブルの崩壊後、調整を行うべきだったのに不適切な低利率政策を実施した結果、不動産バブルを招き、最終的にはより大きな危機と調整にいたることとなった。

 構造調整実施の過程で、中国政府は地域格差と収入格差の縮小に特に注意すべきだ。地域格差の縮小の面では、例えば最近の地方債発行の過程において、中西部地区がより多く発行するのを許可するよう決定するなど中西部地区に重点的に傾斜すべきだ。収入格差の縮小の面では、個人減税の問題が論じられている。2つの方法があり、一つは個人所得税の最低課税金額を引き上げるものだが、納税者の納税意識の強化には不利となる。もう一つの方法は世帯を単位とする総合課税の方法で、扶養人口の要素を踏まえてはいるものの、手続きが比較的複雑だ。

三、内需拡大と供給改善との関係

 構造調整とは主に過剰な生産能力が調整され、過剰な在庫が消化されることで、さらには消極的な在庫の縮小が行われる。供給改善とは積極的な対応で、新たな成長ポイントの育成を通じて新興産業を振興し、産業の競争力を引上げ、それにより中国経済が率先して低迷を抜け出すようにすることだ。産業の振興ではまず斜陽産業に対する補助や救済を行うのではなく、新興の成長産業を積極的に支援、奨励、振興する必要がある。

 注意すべきなのが、今回の国際的な金融危機への対応の過程において、各国政府が発表した「市場救済」政策には実は「魂」があり、この「魂」は「グリーン・ニューディール」、つまり省エネ・環境保護の環境にやさしい産業の発展に力を入れていることである。国連は2008年10月に「グローバル・グリーン・ニューディール及びグリーン・エコノミー計画」を開始した。米国・オバマ大統領は新政府の経済刺激計画で677億ドルを投じて、クリーンエネルギーと省エネ交通の発展に用い、またエネルギーを主導とする飛躍的、産業の枠を超えた新技術革命と新産業革命を開始した。EUは今年3月に、2013年までに1050億ユーロを投じてグリーン・エコノミーの発展を支援すると発表した。日本は2015年までにグリーン・エコノミーの規模を100億元(約1.08兆ドル相当)まで拡大するようつとめる。韓国は今後4年以内にグリーン・エコノミーの分野に50兆ウォン(約380億ドルに相当)を投資する。中国側も同様だ。去年の(長富宮での)内閣府が開催した同様のシンポジウムで、中国側の学者(私と胡鞍鋼氏)がかつて次のような発言した。「黒い発展」を「緑の発展」に変え、「緑の金融」や「緑の財政」を推進する必要があると。今回発表された十大産業振興計画の最初の出発点も省エネ・環境保護の電動自動車発展の進化から始まっている。

四、内需拡大と対外開放との関係

 今回の国際的な金融危機の発生以来、中国の学者は、1929年の恐慌の際に実施された保護貿易主義の苦い教訓に学ぶよう何度も呼びかけている。中国政府も保護貿易主義に断固として反対することを何度も強調している。このため、我々は内需を拡大すると同時に、引き続き対外開放を続け、保護貿易主義や保護金融主義、保護産業主義に断固として反対し、各国が次々に保護主義を採用することで危機がさらに悪化するのを防止する必要がある。

 最近開催された中国発展サミットフォーラムで李克強副総理は再び「開放の水準を高め、2つの市場と2種類の資源を十分に利用する」と提起している。李副総理はまた次のようにも述べている。「危機に直面すればするほど、ますます開放を堅持し、協力と交流の強化を通じて難関を克服する必要がある。」一方では我々は輸出の安定的な成長を保ち、加工貿易のモデル転換とグレードアップを穏やかに推進するよう努力する。また他方では、我々は引き続き輸入を拡大し、先進的な技術装備や中心的な部品、重要なエネルギー、原材料を重点的に導入する。

 我々はまた、外資の投資環境を安定し、外資のハイテク産業や先進的な製造業、省エネ・環境保護産業、現代的なサービス業への投資を導く。自由貿易区戦略の実施を加速し、地域経済の一体化を推進し、市場の拡大と分業の深化がもたらす利益を共に受ける。総括すると、1998年のアジア金融危機に対応する際に、中国政府は鎖国するのではなく逆に対外開放を拡大し、積極的にWTOに加盟したことで、中国経済を速やかに苦境から脱出させた。今回我々は依然として対外開放を堅持し、世界各国と共に利益を得るウィン・ウィンの関係を実現し、速やかに国際的な金融危機の陰から脱け出すよう努める。

五、内需拡大と体制改革との関係

 改革・開放の30年の歴史的経験に基づけば、体制改革は巨大な市場のニーズを生み出す事ができてきた。

 まず、これまでの何度かの改革の情勢がよい時期はいずれも中国経済が上昇し、過熱さえしていた時期だった。例えば、1978年から79年の中国の改革が始まった頃は情勢が急激だったが、すぐに経済の過熱現象が出現した。1984年の改革の情勢は再び好転したが、結果として経済には再び過熱現象が見られた。1988の改革の情勢は非常によく、もし経済が過熱すれば、インフレとなるなら、我々は「価格改革で乗り切る」決心を下した、。1992年のケ小平氏の南巡講話の後、中国経済は急速に始動し、景気指数はすぐに「青信号」から「黄色」を過ぎて、直接「赤信号」に入り、過熱の状況が出現した。

 次に、1998年に我々が金融危機に対応した際にとった一連の改革措置は次のようなものだ。(1)中共中央第15期第4回全体会議で「国有企業改革に関する決定」を通過し、国有企業の改革の歩みを速めた。同時に国家経済貿易委員会は国有企業が「3年で困難から脱却するという目標」を提出した。(2)国家経済貿易委員会が中小企業公司を成立し、国家が民営企業に貿易輸出の自主権を付与した。(3)住宅制度改革を推進し、福利住宅の分配を停止、巨大な不動産市場を生み出し、不動産産業及び一連の関連産業の急速な成長をもたらした。(4)資産管理企業4社を設立、1兆4000億元の不良資産を剥離し、国有銀行改革の準備をした。(5)社会保障体制改革を推進し、全国の社会保障基金を成立した。

 こうした改革措置を次々を発表したことが、中国経済が低迷から脱け出して急速な成長を実現するのを推進する上で、十分重要な役割を果たした。

 また最近の一定期間、金融危機の影響は受けているものの、中国の医薬業界は依然として逆風に逆らい、大きな成長の勢いを保っている。その原因の一つは農村協力医療制度の改革で、新たな市場ニーズを生み出した事だ。これらは全て、改革がニーズを生み出し、供給を改善し、経済成長を刺激できることを説明している。昨年末、中国経済工作会議では「成長を保ち、内需を拡大し、構造を調整する」ことが提起され、また「改革をエネルギーとする」ことが明確に提唱された。今年初めに李克強副総理も(財政会議の席上)「経済成長の促進と構造調整を同時に実施」し、「改革の方法で前進中の問題を解決し、改革で成長を保ち、発展を促すことをより重視する」と述べている。つまり、我々は一方で内需を拡大し、一方で構造調整を行う必要があるのだ。しかし内需拡大にしろ構造調整にしろ、いずれも改革をより所としなければならないのは間違いない。

 総括すると、我々は1998年のアジア金融危機に対応する際に「3つの斧」をより所とした。一つ目は積極的な財政政策と内需拡大。二つ目は積極的にWTOに加盟し、開放を拡大したこと。三つ目は積極的に体制改革を進め、供給を改善したことだ。今回、我々は国際的な金融危機への対応の過程において、依然としてこの「3つの斧」をより所とし、内需を拡大すると同時に対外開放をさらに拡大し、体制改革を加速させる。それにより中国経済を1日も速く低迷から脱け出させ、新たな段階へと進めるのだ。

発行形式

『中日経済情報週刊』はサービス運営期間中、毎月5日・20日の月2回発行し、その後、本格的に週1回の発行に切り替わります。中日間の経済・貿易に従事する関係者をはじめ、国際的な視野に立って資源を開発したい中日政府の指導者、投資家、企業家、ビジネスマン、研究者の方々への情報サービスをご提供します。

サービス運営期間中、中日両国間に関する投資、企業招致、事業プロジェクト、業界情報など無料で掲載する関連ニュースを受け付けております。選考されたニュースについては、中日の読者にいち速く情報が配信されます。

E-mail:[email protected] / tel:86-10-65574990 / fax:86-10-65579038

人民日報社概況 | 人民網について | 日本語版について | ORI国際産学研究について | 広告受け付け | 情報調査研究 | ご意見・お問合せ

◎本刊に掲載の記事の著作権は人民網日本語版にあるか、著作権者が人民網日本語版の使用を許諾したものです。掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。(特別注記を除く)