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Vol.19(2009/04/5発行)

【中国法教室】

中国法教室3

 【第3回】中国における外商投資企業の清算手続について

 

 ーー清算における従業員問題の対策

 今回は、中国における外商投資企業の清算プロセスにおいて、比較的トラブルの起こりがちな従業員に関する問題について、ご説明いたします。

 1.従業員への経済補償金の支払いが必要

 外商投資企業を中途解散する場合、従業員に経済補償金を支払うか否か、また、支払うとしてその支払い期間および金額の計算をどのようにすべきか、外商投資企業を解散する前に、あらかじめこれを検討しておく必要があります。

 今年1月1日から施行されている労働契約法の46条には、会社の中途解散により労働契約が終了となる場合の、使用者の労働者に対する経済補償金の支払い義務規定が設けられています。すなわち労働者に対し、労働契約法施行開始日の2008年1月1日以降の勤務にかかる経済補償金を支払う必要があるわけです。

 さて、これに対し2008年1月1日以前の勤務部分について、経済補償金を支払うべきか否か、中国全土を規制する法令には実は明確な規定がありません。中途解散の場合には経済補償金の支払が必要になるとするような学説もありますが、実務においてはこの問題に関する各地の条例規定は異なるのが現状です。たとえば、上海市は企業の解散により労働契約が終了する場合には、経済補償金を支払わなければならないと定めていますが、北京市にはこのような明確な規定はありません。

 中国では、このように法令上の規定が不明確であるために、地方によりその解釈が異なるケースがよくあります。このような場合に、どのように判断を下すのか、外商投資企業にとっては頭の痛い難題といえましょう。明確な法令規定がない=経済補償金を支払わない、というような安易な判断で、かえって企業の利益を損ねてしまうことも考えられます。実際にどのような解釈がより有益であるかを検討しなければなりません。まずは、従業員の反応を見る必要があります。上海では経済補償金が出るのに、なぜ北京では出ないのか、不満を感じ、最悪の場合は暴動などにつながる可能性もあります。また、政府機関の反応も考慮に入れる必要があるでしょう。特に、企業規模が大きい場合ですと、企業清算による影響の大きさから、社会的不安を煽る可能性を懸念して、政府機関が社会的安定の側面から、経済補償金を支払わない清算を認めない可能が高くなります。

 実際、会社を中途解散する場合には、法律上要求されていないからといって、2008年1月1日以前の勤務部分の経済補償金を支払わないケースは非常に少なく、むしろこれを支払うケースのほうが圧倒的に多いといえましょう。これは企業のレピュテーション、ブランドイメージの問題、労働者の反感・暴動の回避といった理由からだけでなく、政府審査認可機関の認可を受けるためにも、経済補償金を支払うことが大抵の場合必要となるからです。

 2.経済補償金の算出基準

 「労働契約法」47条によると、経済補償金の計算方法は、以下のとおりです。

 A 労働者の当該企業における勤続年数に基づき、満1年につき1ヶ月の賃金を支払う基準に従い、労働者に支払われる。

 B 6ヶ月以上1年未満の場合は、1年と計算する。6ヶ月未満の場合は、半月の賃金を経済補償金として労働者に支払う。

 C 労働者の月賃金が地元の人民政府の公布した当該地域における前年度の従業員月平均賃金の3倍を上回る場合は、その労働者に対して支払う経済補償の基準は、従業員月平均賃金の3倍の金額とし、支払う経済補償金の年限は、最長でも12年を超えない。

 なお、上述でいう賃金とは、労働者の労働契約解除又は終了前の12ヶ月間の平均賃金を指します。また、ここにいう賃金とは、A時間による賃金、B出来高による賃金、C奨励金、D手当て及び補償金、E時間外労働割増賃金、F特殊状況下において支払われる賃金等から構成され、社会保険料等の保険福祉費用は、賃金の範囲内ではありません。

 3.労働契約をスムーズに解除するために

 企業を清算しなければならなくなった場合、従業員との労働契約をスムーズに解除するには、やはり一定の方策を講じておくことが妥当かと思われます。企業清算開始日に、従業員全員の労働契約を一気に解除するような強引なやり方は非常に危険です。過去に従業員が団結して企業に対抗し、日本人管理者を流血事件に巻き込んだケースも実際に起きています。このような最悪な事態を避けるためにも、従業員の状況により、それぞれに合った異なる契約解除方法の利用をお勧めします。

 従業員のうち、企業清算を理解できている従業員については、平和的に労働契約の解除を協議し、企業清算に対して仕方がないとしながら支持もしないとする従業員については、労働契約の解除にインセンティブを与え、積極的に労働契約の解除に応じてもらうよう、工夫する必要があります。しかしながら、いくら平和的に企業を解散するためとはいえ、従業員の要求を全て鵜呑みにするのは禁物です。1人の従業員の無理な要求を呑んだがために、企業側が見くびられ、そこに付け込んで多くの従業員が殺到し、無理な要求をエスカレートさせる危険性があります。したがって、事前に清算案をきちんと作成し、譲歩できない部分は明確にさせてから、個別に柔軟に対応していく事が望ましいでしょう。

 (作者:韓晏元 潤明法律事務所パートナー弁護士 神戸大学博士(法学))

 ----「人民網日本語版」

 【第1回】中国における外商投資企業の清算手続について

 【第2回】中国における外商投資企業の清算手続について

 【第3回】中国における外商投資企業の清算手続について

 【第4回】中国における外商投資企業の清算手続について

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