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Vol.22(2009/05/20発行)

【NRIの視点】

グローバル金融危機後の世界経済と日中の今後の対応(1)

木下俊彦 (早稲田大学教授)

 私が申し上げたい全貌は、お手元に中国語にしたパワーポイント、日本語のものもあると思うので、こちらをお読みください。すべてこのような感じで説明しますと、倍の時間がかかりますので、今日はパワーポイントで大事な所だけをご紹介しながら、後で質問があれば細かくお答えするというように思います。

 ここに来る少し前に日本の経済産業省の研究所で、「世界金融危機以降の世界経済と日本の進むべき道」というような講演をしました。その際に150人ぐらい企業のかた、官僚のかた、メディアのかた、いろんな方がみえていたのですが、そこで最初にこのような質問をさせていただきました。

 最初の質問は、「アメリカが経済回復するのにどれくらいかかりますか?」という質問です。一つの回答は、1年から2年くらいで、だいたいそこで上昇に入るというのが3割ほどでした。3年から5年という回答は7割でした。(パワーポイント資料のほうは数字を反対に間違えて書いてあるのでご注意ください)

 それから2番目の質問は、「アメリカ経済が回復した後、今までみたいにアメリカが非常に突出した経済にもどるのか?双子の赤字を抱えながら世界に市場を提供し続ける、そういう形にもどるか?」という質問に対しては、戻るだろうという回答した人は3割、戻らないだろうと回答した人が7割でした。

 次にですね、こういう事態なので「日本はアジアへもっと軸足を移していく、アメリカとの関係は少し減らしていくというふうに思いますか?」という質問に対しては、そうだと回答した人が3割、そうではない、つまりアメリカにも軸足を残しながらアジアにもやっていくという回答した人が7割でした。

 今回の危機ですが、今回の危機についてはですね、ベスト・アンド・ブライテスト「the Best and the Brightest」世界の非常に賢い学者や経営者、そういう人たちがどういうふうに、この物事がすすんでいくのか、何をすればいいのかということについては、わかっていません。例えばノーベル経済学賞をつくったクルーグマンも、思い切ったことをすればかなりよくなるんじゃないかと、しかし失敗したら1929年の恐慌よりも酷くなるかもしれないという、それはあまり何も言っていないと思うんですけど、そういう答え方を彼がしているような具合です。

 今回の危機・経済停滞の特徴は、戦後今までのリセッションというのは「循環型」でした。ところが今回は「構造型」のリセッションであるという所が非常に違いまして、「構造型」のリセッションというのは、資産デフレ、日本の失われた10年というもの、資産デフレだったわけですけども、その資産デフレを背景とする「構造的」なリセッションであるということです。

 今の最大の問題はアメリカの不良債権がどれくらいあるかということがまだ東京区に分かっていないということであります。

 それから最大の問題は、こうやれば上手くいくといういろんなやり方について、すべての問題が政治問題化してしまうと、例えば公的資金をこれだけ払うとか、銀行にいつどれだけやるかということについて、誰かが決めたらその通りにいくのではなくて、その全部が政治問題化することです。これはいわゆる民主国家の中では避けられないということです。

 そういうことですが、それでは将来のことが全く何もわからないかというと、いくつかわかることも、かなりわかることもあります。

 私の見たポストグローバルファイナンシャルプライセス、世界的な金融危機の後の姿はどんな姿かというと、第一に従来のアメリカが極と質応して、世界に巨大な市場を提供すると。他方自分はですね、双子の赤字を抱えていると、こういうことはですね、もうサスティナブルではないことがはっきりしたということです。しかし、アメリカに変わりゆる国があるかというとないわけです。“ヨーロッパが変われるわけでもない”“日本が変われるわけでもない”“中国が変われるわけでもない”という意味で、誰か皇位がいない、その誰か王様が、皇帝が死んだ時、次の皇帝が決まらない状態のことをいうのですが、皇位不在時代に我々はあるということになります。

 2番目は、アメリカ中心のグローバルファイナンスが上手く動かない状態が当分続くんだろうと。

 今の状態の中でアメリカの経常収支の赤字は急激に縮小せざるを得ないし、現に縮小し始めています。その結果、今度は逆にいうとアメリカ以外の国の経常収支の黒字がそれだけ減らすわけです。赤字が減るから黒字も減るわけです。したがって中国、日本、参入国合わせた経常収支の黒字はそれだけ減っていくと、つまり、グローバルインバランスという状態は、マーケットメカニズムを通じて縮小しあうというか、解決の方向に縮小均衡の方向に向いざるを得ないということです。

 それから今の話とはちょっと別になりますが、世界中で国内市場を内示向けの景気刺激策をやるために、各国・あるいは各地域で巨大な国内マーケット、需要が出てくるというふうに考えられています。

 国内市場を拡大する時にどういうふうに使えば賢いかというと、「世界の地球温暖化という問題」もある、それから「エネルギー資源の将来の限界がある」ということからですね、今回の危機の中で、地球温暖化あるいは省エネ、省資源といったそういう動きが強まると、そういった国内内示が増える中で、グリーンビジネスのチャンスが増えるというふうに考えています。国際世界的な経済運営、あるいは通商交渉における、いわゆる新興国、エマージングエコノミの声、発言力、あるいは責任というのが増えるであろう。

 それからドルの価値が、非常に不安定に推するだろうと。アメリカにおいても、一体、ドルを弱めて輸出を増やすほうがいいのか、そのドルを強めて海外の資金流入を得るほうがいいのか、どちらが国益に合致するかということについて意見がまとまらないでいます。ガイトナー米財務長官は、ストロング・ダラーと言っていますけども、本気で言っているのか、そうしないと資金が逃げ出すから言っているのか、そこはわかりません。

 こういう状況になると有望国というか、有望国は、先進国はみんなマイナス成長ですから、有望国、まぁ中国とかインドなどのエマージングマーケットに、世界中の大企業は奪取をするもんですから、中国とかインドとか、ブラジルとか、そういうところで非常に競争が激しくなるというふうに考えています。

 それから世界中の企業が不況の中で「集中」と「選択」に走るわけですね。従ってその結果、“M&M”になるか、“倒産”になるかわかりませんけども、世界経済は今までより寡占的な方向に向うと思われます。

 それから資産と予測価格、予測価格には賃金も含むわけですけども、その価格はしばらくの間下げ続けるだろう、但しですね、自然価格というものはいずれは必ず上がるという見通しがつけられています。

 次に中国経済がどうなるかという私の見通しですが、現在ですね4兆元の経済対策、更にそれに対する、また補正予算をいつでも組めるという状況にあるし、金融政策もどんどん金利を下げたりしていますので、国際的に見てかなり高い成長をするであろうと。MFは6.7でしたね、世界銀行は6.5パーセントの成長、中国政府は8パーセントの成長と言っていますが、私も6〜7パーセントの成長はするのではないかと思っています。

 今回の特徴とはですね、地域差が非常にあって、例えば広東省、あるいは浙江省というところは、労働集約的な輸出産業が多いので非常に打撃を受けていると、上海とか北京はあんまり、そういう地域と比べれば打撃が少ないという地域差が非常に大きいという特色だと思います。

 輸出産業が打撃をうけた結果ですね、13000万人これは推定でしょうけれども、それぐらいの農民工が解雇されて、田舎に戻るか、戻れないか、それは人によるんですけれども、そういう状態にあるということと、雇用条件・雇用情勢が非常に悪くなっているということです。雇用のチャンスは大学生もそうですけれども、非常に減っているという、そのことはですね、中国共産党、および政府にですね、今までにない緊張を与えているというふうに考えられます。

 それから中国は内部志向の成長モデルに入っていくことによってですね、いわゆる限界資本ケースと言っていますが、一台の資本を投入すると、どれだけ成長するかという比率が上がってきまして、その相対的にいうと成長率は下がってこざるを得ないと考えています。

 中国の経常収支の黒字は非常に少なくなると、これはどうしてかというと、アメリカの経常収支の赤字が減るわけで、対照的に中国の経常収支黒字は減ります。

 それから中国の経営者はですね、危機になっても、わりあい強気で“危機はチャンスである”という、そういう前向きなとらえかたをする。これは世界中で一番積極的で大変結構なことだと思いますが、その経営者ですら、若干こう変換の意識に、変化の兆しがあるのではないかと。一例ですが日本の江戸時代に将軍の徳川家康という、だいぶん400年前の古い話ですが、その時代の13冊の本がですね、中国の中で200万冊売れています。このようなことは、外国の本、特に日本の本が1万冊超えることも少ないのに、200万冊売れているという、しかもそれを買っているのが若い中国のビジネスマンで20代・30代の人が買っているというのは、やはり世界は単純に右肩上がりで順調に行く時代ではなくなったと。その時に何かを考えないといけないという時に、この徳川家康の「忍耐の精神、」「長期的な視野を持った経営」というのが、非常に彼らにアピールしているのではないかと思っています。

 それから中国の政府は、アメリカ経済がメルトダウン、溶解してしまうと自国に跳ね返りがありますから、例えば米国債を買うという形でサポートし続けますけれども、他方ドルの先行きがわからないということです。コンディショナリティーというのはIMFと同じですけども、条件をつけてちゃんと経済運営をしてくれなければ我々買いませんよと、条件付けをしながらアメリカを支えていくということになると、今やアメリカにとってのIMFは中国であります。まぁちょっとオーバーですけども、そういうことが言えるのではないかと思います。

 それから中国にとってこれから一番大事なことはですね、量の世界から質の世界です。クオンティティからクオリティに変えていくことが一番大事で、その中にはその環境保全というのが非常に大事なんですけども、この緊急事態の中で環境保全への努力が少し弱まるのかなという気がしています。

 今度は日本の話になりますが、日本も新たな挑戦を受けつつあります。まずIMF は、今年の日本の成長率はマイナス5.8パーセントだと予測しています。

 なぜ日本がこのように低い成長に甘んじなければいけないかというと、第一番目は、特に自動車、それから電子・電機製品に非常に依存が多いと、世界の貿易が縮小しているので、その打撃を受けたというのが第一です。

 第二番目には、株価がかなり昨年の後半落ち、その影響がでました。

 第三番目には、政治の先行きがちょっと読みにくい。この3点がしかる理由だと。

 しかしながらですね、日本の金融システムは過去の苦しみを経て、かなり改善されているので、今回アメリカとかヨーロッパで見られるように、政府の資本注入を大量にうけるということがない状態で今はいます。それから失業率も4.1パーセントで、まだアメリカのだいたい半分であるということが言えます。

 それから過剰な在庫は早く償却、これは良好な企業ですけども、良好な企業は過剰な在庫を早く整理してしまって身軽になろうということで、そういう償却方針を出すと、赤字がたくさんでて、一見悪く見えますけども、それは非常に経営が身軽になるということを意味しています。

グローバル金融危機後の世界経済と日中の今後の対応(2)

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