Vol.24(2009/06/20発行)
【中日交流】
宮内雄史◆中国随想
中国の農業について(2)
宮内雄史
1973年 東京大学教養学部教養学科を卒業(專門:米中關系)
1973年 三菱商事株式会社に就職
1974年―1976年 シンガポール南洋大学で留学(専門:中国語)
1978年―1981年 北京に常駐
1983年―1987年 北京に常駐
1992年 业务部中国課課長
1997年 业务部中国室室長
2000年 日本貿易会・国際社会貢献中心事務局長
2004年 三菱商事(上海)總經理室長
2007年 東京大学北京事務所所長

中国産輸入食品の安全問題、中国社会の格差拡大や開発により土地を取り上げられた農民たちの紛争、国際金融危機で輸出産業中心に企業倒産が多発し農民工が失業しているとの報道、中国次第で国際的な食糧危機が発生するかも知れないとの予測等、中国の農業に関連した諸事情やニュースは、日本でもしばしば強い関心を集めている。
<農業の位置と構成の変動>
かくして、中国全体での食生活の大きな向上と変化の結果、中国の農林牧漁業の構成そのものに変化が発生した。つまり、8割に近くを占めていた農業が半分になり、牧畜業と漁業が大きく伸張したのである。
| 生産値比率 |
1981年 |
2006年 |
農業 |
78.6% |
50.8% |
林業 |
4.5% |
3.6% |
牧畜 |
14.5% |
32.2% |
漁業 |
2.1% |
10.4% |
又、農業も穀物一辺倒ではなくなっており、穀物類の生産は農林牧漁業の4分の一程で、野菜や果物の生産が大きな比重を占めるようになった。
| 2006年生産値 |
比率 |
穀物等 |
27.6% |
野菜 |
15.3% |
果物 |
6.0% |
牛羊 |
6.8% |
養豚 |
16.1% |
家禽 |
9.3% |
淡水漁業 |
5.7% |
海水漁業 |
4.6% |
<淡水魚養殖>
さらに、例えば、この中で日本には無い特異な現象としては淡水魚の養殖がある。世界で一番沢山魚を食べる日本の年間漁獲高は507万トン、輸入が570万トンで、合計の水産品消費量は1077万トンである。それに対し、中国の陸上で淡水養殖されている水産品の量は25年間で21倍も伸びて2148万トンと、日本全体の水産品消費量の2倍にもなっている。中国各地の湖沼、ダム湖、又、水田等を転換した養殖池等、養殖水面の面積は6.02万平方キロにもなり、日本の全耕地面積4.8万平方キロよりも広いのである。
| 中国の養殖 |
1981年 |
2006年 |
伸び |
日本の養殖 |
淡水養殖魚 |
101万t |
2148万t |
21倍 |
5万t |
海水養殖魚 |
139万t |
1774万t |
13倍 |
120万t |
<農産品貿易>
他方、確かに中国は日本の農牧水産品の大きな輸入先の一つである。中国産野菜、タケノコ、シイタケ、エビ、ウナギ、アサリ等身近に感じられるものが沢山ある。中国全体の農牧水産品の輸出も日本向け始め、香港や東南アジア、欧米諸国向けも含め相当な量にはなる。しかし、実際には中国の生産の巨大さからすると、輸出に回っている量は実は非常に僅かなものに過ぎない。残留農薬問題が大きく取り上げられる中国産野菜であるが、日本の輸入量は約130万トンであり、中国全体の野菜生産量からすればその0.2%ほどに過ぎない。野菜輸出全体でも1%ほどである。水産品の輸出は割と比率が高いが、それでも全生産量の4%ほどである。
|
中国の輸出 |
生産高比 |
野菜 |
568万t |
1.0% |
果物 |
198万t |
1.2% |
水産品 |
194万t |
4.2% |
中国の農水産品貿易では、輸入における食用油関係と綿花が突出している。
|
中国の輸入 |
全消費高比率 |
穀物類 |
3544万t |
6.7% |
(うち大豆 |
2827万t |
64%) |
食用植物油 |
671万t |
34% |
綿花 |
364万t |
35% |
食用油関係は、大豆が、コストの安いブラジル品が大量に輸入され国内生産も減少する程になっている事と、又、これも食用油として安くて優良なパーム油が東南アジアから大量に輸入されているのが特徴である。綿花は中国の繊維製品輸出増に対応して国産綿花では量的にも不足する為と、国内綿花がコストと品質の面で生産が伸びていない事の為である。
しかし、中国の全農水産品の生産高からすると、それらは合わせても全体の3%程度に過ぎない。大豆を除く穀物類は国内需要を満たしているし、膨大な生産量の野菜、果物、肉類、水産品は一部輸出をするほどである。その意味で、中国の農業は外との関係ではなく、飽くまで中国国内の需要の量と質の巨大な変動により、かつてない変貌を遂げていると言える。
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