中国の看護師と一緒に「患者中心の看護」を考える学習会を開催して
「看護」という言葉は同じでも中国と日本の臨床での看護は違いが多い。しかし中国でも日本でも「患者中心の看護」を目指している。「患者中心の看護」とは一体なんだろう。それを中国の看護師と一緒に考えるため、11月24日、私の配属先である貴州省人民病院で「中日看護理念学習交流会」という学習会を開催した。
当日、病院内で比較的若い看護師経験3年から10年の看護師70人を参加者とし、各病棟の師長さんたち約60人が見学という形で参加、いつもなら机がびっしり並んだ講堂を話し合いができるようセッティングし、壇上にはベッドや点滴スタンドなどを持ち込んで病棟の雰囲気を作り、勤務中でも「参加できる人はみんな参加」という病院内の院内研修スタイルとは違い、午後から勤務を離れて参加というスタイルで交流会はスタート。
内容は@日本の看護師の6つの仕事場面をロールプレイで紹介する「日本の看護場面紹介」、A実際に患者さんの立場に立ってみるという目的で「視覚障害者体験」、B一つの場面でいいサービス態度と悪いサービス態度を演じ、サービス態度を客観的に見て比較し、考えてもらう「サービス態度比較」、そしてC日本の看護教育でよく行われる「グループディスカッション」を加え、参加者みんなが自分の意見を言い合う機会を作った。
「日本の看護場面紹介」では、私と同様中国で看護師として活動している5人の協力隊看護師隊員の仲間に応援を依頼し、ただ講義を聴くだけでなく演じて「視覚に訴える方法」を用いたことで、参加者の興味を引いた。中でも入院患者さんへのオリエンテーション場面は「親切」「丁寧」という感想が多く聞かれ、一番印象が強かった様子。「視覚障害者体験」では目隠しをして階段を上り下りし、最後に目隠しのままコップに水を汲んで飲んでもらった。普段看護師として患者さんの看護に当たっているけれど、実際に患者さんの立場に立ってみるとどう介助してもらうとありがたいか、それが分かるからどう介助してあげればいいのか、参加者一人ひとりが感じてくれた。そして「サービス態度比較」、普段全く同じ状況で2つのサービス態度を比較する機会なんてないが、見れば一目瞭然、悪いサービス態度の演技には笑いが起きるほど。客観的になってみれば、どういう態度がいいかはすぐに分かってくれたと思う。
最後に重要なのが「グループディスカッション」。参加者70人を10人ずつの7グループに分け、見たり、実際に体験したりした今日の学びや「患者さんに接する時どういうことに気をつけたらいいか」、でも「仕事が忙しくていつも患者さんのことを考えていられない」など、自由に自分の意見を発表してもらった。それをグループ毎まとめて代表がみんなの前で発表、参加者全員で思いを共有した。
学習会のまとめとして、私が今日の交流会の目的や意図、なぜ参加者限定で、仕事経験年数も制限したのかなどを日本の院内看護研修紹介と交えて発表、そして自分の看護に対する思いも話した。日本の看護教育でよく行われる「患者体験」や「グループディスカッション」、自分の意見をみんなに伝えたり、人の意見を聞いたりして理解を深める方法だが、大人数ではまとめきれない。だから人数限定。自由に意見を言い合いたい、でもやっぱり大先輩の前では緊張する、だから経験年数が近い看護師に限定。また自分の経験年数に近い看護師と交流する方が思いを共有しやすいと考えたから3年から10年にしたことを説明した。この交流会を提案したとき参加者限定、経験年数限定の意味もきちんと分かってもらえなかった部分があったが、交流会終了後に看護部長から「あなたの考えが理解できた」と言われたことはとても嬉しかった。
「看護師だって人間、常に患者さんに優しくできればそれは理想だけど、やらなければならない仕事に追われて、そうもいかない時もある。でもやっぱり患者さんに接するときはできるだけ笑顔を絶やさずに、できる限り患者さんのために尽くすことが大切」「職業意識をもって嫌なことがあっても患者さんの前では笑顔を絶やさない、その切り替えができるから看護師は『天使』と象徴されるのではないか」と私は思う。グループディスカッションを通してそんなことを同じ年代の中国の看護師たちと共有することができたことは何よりの達成感である。
自分も病棟で業務に追われている時は「看護」そのものの意味なんて考えることはない。だけど臨床を離れて改めて「看護」について考える、同じ年代の看護師と交流して「大変だけどみんなおんなじだ、明日からまた頑張ろう」と思える、そんな日本の院内看護研修は私の中ではとても意味のあるものだった。そういう機会が中国の院内看護研修に増えていけばいいなと思う。そういう機会が少しずつ臨床に生かされて病院の看護レベルやサービス態度が向上していくことを願う。何より今回の交流会に参加した看護師が貴州省人民病院の看護サービスレベルを向上させていく中心になってほしいなと思う。
この交流会の開催を提案したのは自分で、開催までの間、時に孤軍奮闘してきたけれど、開催実現は病院、遠方から応援に来てくれた5人の協力隊看護師隊員などたくさんの人の助けがあってこそ。そして何より提案から開催まで私をサポートしてくれたカウンターパートの柏暁玲さんの助けがなかったら開催できなかった。彼女には心から感謝したい。
平成17年度第1次隊 貴州省人民病院 看護師 阿部亮子