この国で気づいたこと
中国に来てもうすぐ2年。私の任期もそろそろ終わろうとしています。初めて長春の空港に着いた時の緊張と心細さを、今でも昨日のことのように思い出します。
私の赴任先は吉林省長春市にある、東北師範大学 赴日留学生予備学校です。私はここで、新疆ウイグル自治区から来た学生に日本語を教えています。新疆ウイグル自治区。中国に来る前、私はその地名は知っていましたが、どんな人たちが生活し、そこにどんな文化があるのか考えたこともありませんでした。長春で、はじめて彼らの言語や文化に触れ、中国は私の想像以上に広く、魅力的な国だと思いました。
学生といっても年齢は20〜40代と様々。職業も教育関係者や医療関係者など、私より知識も人生経験も豊富な方ばかりです。彼らは約8ヶ月間、長春で日本語を集中的に勉強します。はじめは「あ」も「い」もわかりません。当然私が話すこともわからず、お互いに言いたいことがうまく伝わらないという状況です。しかし1ヶ月、2ヶ月…と勉強していくうちに、学生たちは私の話すことがだんだんわかるようになり、5ヶ月も経てば語彙に限界はあるにせよ、たいていのことは日本語でなんとか通じるようになります。熱心でユーモアのある学生に日本語を教えながら、また、共に学びながら、時々とても不思議な気持ちになります。
協力隊として中国へ行くことが決った時、私には中国についての知識も、興味もありませんでした。もちろん中国語もゼロから。わけがわからぬままこの国に来て、一体どんな生活が始まるのだろうと不安でした。その頃の私にとって中国は「近くて遠い国」でした。
しかしここに来て生活し、この国の言葉を知って、中国や新疆がぐっと近くなりました。それはたぶん私が「知りたい」と思い、自分から近づこうとしたからだと思います。
学生たちにとってもそれは同じではないでしょうか。日本語を勉強する前は、日本に対しぼんやりとしたイメージはあっても、やっぱり海の向こうの遠い国。しかし日本語を勉強して、日本人である私と毎日接して、日本のイメージが少しずつはっきりしたものになってくるようです。ある時、学生がこう言いました。「ニュースで日本の地震のことを見ました。昔はあまり気にしませんでした。でも今は日本人が心配です。先生の家族は大丈夫ですか?」
きっと私も、日本へ帰ってからも、中国のこと・新疆のことが毎日気になるでしょう。なぜなら中国は、この2年間で出会えた大切な人たちが住む国だからです。
私はこの2年の間に、日本語を教えるということ以上に大切なことを学びました。日本語教師としてどれだけのことができたかはわかりませんが、学生たちが日本と自国の関係に関心を抱き、また、時に私のことを思い出してくれたら、こんなに嬉しいことはありません。
東北師範大学 中国赴日本国留学生予備学校 日本語教師 坂本留美