青年招聘事業って・・・?

【挨拶】

「初めまして。飯牟礼です。どうぞよろしく。」何の説明もせずに、いきなり日本語で挨拶を始める私。私が何を言っているのかも勿論全く分からず、お互いの顔を見合わせて、ああでもない、こうでもないとざわつく参加者たち。それでも私はしつこいくらいに何回も挨拶を繰り返す。次第に状況が飲み込めてきたようで、次第にみんなも口ずさみ始める。初めて話す日本語。彼らの新たな世界の扉が開かれる。私はいつもこの瞬間が好きである。

【参加者】

青年招聘事業(青年招聘事業とは:http://www.jica.go.jp/activities/seisho/index.html)の中で私たち協力隊員が関わるのは現地における派遣前の日本語研修である。私にとっては今回で2回目、いつもこのように授業を始める。前回(2004年8月)の参加者は中央政府の若手行政官。さすがはエリート(?)、みな授業態度は真面目、教えることもスポンジのように次々と吸収していく。あまりの覚えの早さに、数字は1から10までの予定が、急遽10000まで教えるといったハプニング(?)も。そして今回(2005年5月)、対象者は主に教師などの教育関係者。みんな先生だから、前回以上に出来がいいだろうなと期待していたところ・・・、意外に普通だった・・・。それでも授業中のノリは異常なくらい。まるで遠足前の子供のように興奮状態である。

【会話】

喫茶店でウエイターを呼ぶという場面設定。クラス全体(24人)をお客とウエイターに分けて練習。お客:「すみませーん。」みな一斉にウエイター役に手を振る。ウエイター:「はーい。」こちらも全員一斉に手を振って答える。さすがに普通、ウエイターは手を振らないだろうと思いつつも、みな楽しそうなのでよしとする。そして次にバスの中での会話。隣の席が空いているかを聞く練習。お客A:「すみませーん。」お客B:「ZZZ・・・。」今度は寝たふりである。平均年齢31歳の大人でも、やはり勉強には遊び心が大切。こんな童心に返る瞬間も語学教育の面白さである。

【パーティー】

出発前日の夜はレセプションパーティー。いろいろな出し物の中で、私たちスタッフチームは歌「世界に一つだけの花」を披露。歌の途中で「いいむれー」(私の名前)と声援が上がる。「人の名前を呼ぶときは『さん』を付けます。」と授業で教えたはずなのに・・・、と思いつつも、笑顔で手を振り声援に応える。そしてしまいにはみんなで声を揃えて「いいむれー、愛してる〜」。思いがけない声援にびっくり!「愛してる」なんて教えていないのに・・・。

【相互理解】

この講師を担当する際にもう1つ楽しみにしていることは、アシスタントとして一緒に授業を行う中国人大学生との出会いである。中国人の日本語学習者という違った観点から毎回アドバイスを貰えることは私にとってとても新鮮であるし、何といっても中日共同で一つのものを作り上げるという喜びや価値観を共有することができるからである。最近何かと話題の絶えない中日関係であるが、そういった国と国とのしがらみを越えた人と人とのふれあいには、問題どころか国境さえも感じられないほどである。とても地道なことのように見えるが、こうした活動が相互理解に対する「千里の道も一歩から」の大きな一歩になり得ると思わずにはいられない。 

湖南省長沙市 湖南師範大学 日本語教師 飯牟礼浩一