リハビリテーションをゆかいな仲間たちとともに
威海市は山東省の北東部に位置する海岸沿いの街で、海を眺めながらの散歩は、今はまだ海風が体に痛いけれど、とても心地よく感じる。夏には多くの海水浴客でにぎわうとのことで、また違った様子を見られることが楽しみである。このような海の見える美しい風景や、店に並ぶたくさんの新鮮な魚介類をみていると日本の故郷が思い出され、威海の街を近く感じることができる。
赴任して1か月以上が経過し、仕事も慣れてきたころ・・・と言いたいところだが、仕事をはじめて間もなく春節休みにはいり、休みが明けてからも患者が少ない状態が続いたため、まだまだペースがつかめず勝手がわからないことも多い。しかし彼らがいてくれたら仕事が楽しくできる。
初出勤の日、右も左もわからない状態でリハビリ室に通され、いきなり患者を目の前に「さあ、やってみせてくれ」(多分そんな意味であったと思う)と言われた。患者もその家族も職員もみんな私の言動、行動を興味深く見つめていたが、わたしとしては患者の名前すら知らず、病歴もわからずそんな状態で何ができよう?という感じだった。しかし何か始めようにも驚きと緊張で頭が真っ白になり、言葉が出てこなかった。それからなんとかなけなしの単語を並べ現病歴を聴取、しかし問診の手助けをしてくれた同僚の名前もわからず満足にお礼も言えなかった。焦った。とても焦った。この不安や焦りを伝えることもできず、四面楚歌のように感じるこの状況からどう抜け出せばいいのだろう・・・と。
思いついたのはやはり同僚の名前を覚えること。翌日、メモ帳とペンを握りしめ「みんなのことを早く覚えたいので名前を書いてもらってもいい?」と前日練習した文章を空で言った。するとみんな快く名前の下にピンインも書いてくれ、発音練習にも付き合ってくれた。
きっかけは簡単なものらしい。それから四面楚歌と感じることは1度もない。同僚たちはみんな標準語をゆっくり話してくれるし、わたしがわからない単語があるとその都度紙に書いてくれ、辞書で調べるのを待っていてくれる。そのようにして勤務時間の多くを彼らとの交流に充てることができたおかげで、彼らと仲良くなれたと思うし、中国文化もより身近に感じられるようになってきた。また彼らが、わたしがよく言う日本語をもう覚えていたり、日本語を教えてほしいと言ってきてくれることもあり、少しずつ溶け込めてきた気がして嬉しく思う。
わたしはリハビリテーションに正解はないと思っている。10人の治療者がいれば10通りの見方がある。そして互いに切磋琢磨することで、患者を多角的に評価することができ、患者の満足を得られる治療ができる。今はまだ言葉だけではなく、考え方やその背景などわからないことはたくさんあるが、彼らとならやっていける気がする。はやくもっといろいろな話ができるようになりたいと思う今日この頃である。(2008年3月)
山東省威海市立病院 19年度3次隊 理学療法士 桂理江子