オリンピックを目指すおじいちゃん

 中国宜昌市に来て半年がたった頃、この町にもう1人日本人がいることを知った。その方は中学・高校で日本語教師をされている。私のようにJICA(国際協力機構)からではないが、同じようにボランティアで日本語を教えていらっしゃる。初めてお会いした時、学校とは関係なく、週末に宜昌の一般市民の方にも日本語教えていることを知った。早速、授業見学をさせていただいた。授業見学をしているうちに、クラス内でレベル差があるのでクラスを二つに分け、一方のクラスをやってみませんかという話になった。

 教えているといっても、教室型の大きなクラスではなくて、こじんまりした感じ。初めてその話があったときは、すごく悩んだ。時間があるのだろうか。堅苦しいクラスではない、しかし、中途半端にはできない。でも、学校以外の人々と交流するとってもいい機会。そう思ったら、悩んでいる場合じゃないと思い、やることにした。用事があるときは休みにさせてもらっているものの、かれこれ10ヶ月が経とうとしている。

 この日本語クラスの中に、もうすでに定年を過ぎた学習者がいらっしゃる。私の方のクラスの生徒ではなく、もう1人の先生のクラスの生徒である。でも、たまに私のクラスにも顔を出すなど、勉強はすごく熱心。毎日、家で勉強されている様子。若いときから日本語を独学されていたらしい。「生涯学習とは、正にこのことだな」と思う。宜昌には、2年前まで、日本人が誰もいなかった。でも、ひたすら勉強し続けてきた。だから、この週末のクラスをとても楽しんでいる様子。

 去年の10月15日の日曜日、その方が私にうれしそうに言った。「もう、すでに申し込みしました!」「えっ?申し込み?何の申し込みですか?」そしたら、なんと北京オリンピックのボランティアの申し込みをしたということだった。その方が言うには、親戚が北京にいるので、オリンピックの期間中、北京で日本語のボランティアをしたいのだそうだ。ただし、ボランティアをするのは来年の5月から。そして、さらに、その前に(だいたい今年の5月ごろ)日本語のテストがあるらしい。現在、その方は、65歳。オリンピックのときは、67歳になる。親戚がいるとはいえ、宜昌から首都北京に出るというのは、大変なことだと思う。そして、お年はもう60歳後半。私はこれを聞いて、すごいと思った。その方は、「北京オリンピックのボランティアをしたいんです!もっともっと、頑張りたいんです!」と目をキラキラ輝かせておっしゃった。私は、その方の、少しでも日本語を勉強して、日本人と交流したいというその心意気に感動した。とてもうれしい気持ちになった。

 こんなうれしい気持ちになれたのは、週末の日本語クラスを紹介してくださったもう1人の日本人のおかげ、そして、週末の日本語クラスに通ってくる生徒さん一人ひとりのおかげ。みなさん、ありがとうございます!!! 

三峡大学 日本語教師 加藤有紀