暮らしてみれば
ここシリンホト市は、北京の北およそ400kmに位置する内モンゴル自治区の小さな地方都市です。暖冬とは言え、−30℃近くまで下がる厳しい冬も峠を越しました。しかし、風はまだまだ冷たく、肌に刺さるような痛さですが、それでも何とか元気に暮らしています。シリンホトへ来て、来月で半年。初対面の人からの「もう慣れましたか?」の問いかけにも、「慣れました!」とずいぶんいい顔で返事ができるようになったのではないかと思います。
昨年8月末、北京からの飛行機でシリンホトに着いたのは夜の12時近く。空港から街まで延々と続く暗闇を車の窓から見つめながら、一体どんな街なんだろう、どんな2年間になるんだろう・・・と期待に胸を膨らませていました。しかし、私を待っていたのは想像以上のハードな日々、期待に胸を膨らませるどころの話ではありませんでした。生活面では水に困る日が1ヶ月続き、学校では慣れない授業で寝不足が続き、肉体的にも精神的にも疲れ果てていました。余裕がないあまり、その疲れは表情にもはっきり出ていたようで、周りの人たちを心配させてしまいました。そして待ち焦がれた国慶節の4連休。どこにも行かず、何もせず、やっと心置きなく休むことができました。心も身体もリセットすることができ、これを境に生活のリズム、1週間のペース配分もつかめるようになってきました。学校の先生から、最近顔色が良くなったと言われるようになったのもこの頃からです。
その後も何かとトラブルはありましたが、ストレスになることはなく、むしろ「これも貴重な経験だ」とどこか楽しんでいる自分がいました。自転車で15分も走れば草原が広がっているような小さなこの街に、何もなくてつまらないという印象しか持てなかったはずが、うまく言えないけれど、何となくだけれど、少しずついいなぁと感じるようになってきました。
協力隊を受ける前に参加した説明会で、「赴任地はその人の適性に合わせて選ばれているから、必ずみんなその土地を大好きになって帰ってくる」というような話を聞きました。この話がずっと頭の片隅から離れなかった私は、赴任地の通知を受け取った日から、自分がシリンホトに選ばれた理由を探し、自分もシリンホトが大好きになるのだろうか、と考えました。そして今もこのことを思い出しては考えてみることがあります。まだシリンホトに来て半年足らずですが、私がこの街に合っているかどうか、そんなことは大した問題ではないように思います。また、私がここへ来たのも、そこに決定的な理由などはなく、ただ縁があったからというだけのことだと思うのです。ここで出会う人、ここで起こること、ここにあるもの、いろいろな要素が私の中に蓄積され、それらが自然と大好きという感情につながっていくのかもしれない、今はそんな風に思っています。
残り1年半余り、ここでの暮らしの中で、どんな人に出会って、どんなことが起こって、どんなことを見聞きできるのか、そしてこの街を去るとき、私はどんな思いでいつもの景色を眺めるのか、そんなことを考えると何だかワクワクしてくるのです。
内モンゴル自治区シリンホト市 シリンホト牧業機械化学校 日本語教師 吉井敏江