桓仁で迎える春
遼寧省の省都・瀋陽から、車で東に三時間のところに桓仁という町があります。四方を山と川に囲まれた自然の豊かなまちで、観光地として急速に発展が進んでいます。古代高句麗の遺跡群、そして、2004年に古代高句麗の発祥地として世界文化遺産に登録された五女山は、多くの韓国人をひきつけています。
青年海外協力隊の日本語教師として、私はこの桓仁県の朝鮮族中学校に派遣されました。期間は二年間です。桓仁に来てから2ヶ月がたちました。山に残っていた雪も解け、まだまだ寒いですが少しずつ、春らしくなって来ています。桓仁県朝鮮族学校は、幼稚園から高校までの生徒が通う学校なので、休み時間には子どもたちが元気にサッカーやバドミントンなどをしている様子が見られ、大変にぎやかです。
授業を始めてからは、ようやく一ヶ月がたとうとしています。いま、高校1,2年生の会話の授業と3年生の作文の授業を担当しています。とはいっても、まだまだ試行錯誤の日々で、生徒たちの反応や表情に一喜一憂する毎日です。会話の授業では、つまらない授業をしてしまったと感じるときがよくあり、生徒たちへの申し訳なさでいっぱいになります。でもそんな授業でも一生懸命に聞き、取り組んでくれる生徒たちには本当に感謝しています。
一方、三年生の作文の授業については、生徒たちとの交換日記のようなつもりで取り組んでいます。三年生の作文を読むと、町のことや寮生活(高校生の3分の1が寮で生活しています)のこと、残り少なくなった高校生活への思いや、大学入試への意気込みなどを知ることができ、私自身も元気付けられます。私のいる学校は進学校ですので、高校三年生にとってはこの町での生活も限られているのです。私は彼らの応援団のつもりでいますが、彼らのがんばる姿を間近で見られ、関われることをとてもうれしく思います。
急速に発展している桓仁。大きなマンションが建つ計画があったり、川を作る大々的な工事が行われていたりと、活気にあふれています。生活も便利で、困ることはありません。そしてなにより人が元気で、親切な人が多く、いつも助けられています。買い物をしていてたまたま知り合った私を家に招いてくれる夫婦。住まいのこと・生活のことを気遣ってくれる先生たち。「困ったことがあったら電話して」と、本当に多くの人に言ってもらいました。もらった親切を数え始めたらきりがありません。そして生徒たちのなかにも「一人で外国に来て寂しくないですか」と私を気遣ってくれる子がいて本当に感心させられます。このような人々の暖かさは、日本に帰ってから一番に伝えたいことの一つであり、また、どんなに町が発展しようとも、変わらないでほしいと願っています。
高校生の多くが日本の歌手やサッカー選手を知っていますし、漫画やアニメに関しては私よりも詳しい子もいるという状況です。やはり日本が好きだといわれればうれしくなるし、日本が嫌いだといわれれば悲しくなります。しかし日中戦争や南京虐殺など、教科書に出てくる日本の印象が悪いこともまた事実です。そして目の前にいる生の日本人であるわたし。今はこの町に一人しかいない日本人である私に、生徒たちが興味を持ってくれていることは実感できます。彼らの興味を裏切ってはいけないと思うと、身も引き締まります。と同時に、一人ひとりともっとたくさん話し、知りたいな、という思いも強いです。
もう4月だというのにまだまだ寒い桓仁。九州出身の私には多少こたえますが、本格的に暖かくなる頃には生徒たちとももっと、打ち解けていたいと思います。そしてもっとたくさん、桓仁のよさ、美しさを発見したいと思っています。
18年度2次隊 遼寧省桓仁県朝鮮族中学 日本語教師 金政美静