「山の小学校での歯みがき指導」

行動を変えるのは、難しい。

分かっています。あせってはいけないことも、分かっています。

ここは四川省涼山州の山の奥、中国の貧困地域のひとつであり、彝(イ)族という少数民族の人々が暮らしています。ここのとある山の小学校「皇岡小学校」(2年生と3年生のみ合計42名)で衛生教育を行うようになって2ヶ月がたちました。

涼山州全体の衛生管理の実際を管理している涼山州疾病予防センターの張主任からのアドバイス。

「彝族は、何千年もの歴史の中で、ずっと歯みがきの習慣がなかったんだよ。1年や2年でできるようになるわけがないよ。順子、あせってはいけないよ。」

張主任は、先代からの公衆衛生隊員の山の学校での衛生教育に非常に大きな理解と支持を示してくださっています。ご自身も彝族である張主任の言葉に偽りはないのでしょう。

私の周囲の彝族の大人たちに尋ねると、小学校や中学校で漢族の同級生らが歯を磨いているのを見て磨くようになった。という答えが多数でした。そして、それまでの間に虫歯を作ってしまっていたということです。

せっかく日中双方の有志の人々からのご寄付で購入した歯ブラシ。ここの子供達に配るなら、きちんと使えるようにしないといけません。

さらに、1月の上旬から約2ヶ月間の冬休みに入ってしまうため、学校で歯ブラシを管理している今のうちに、なんとか習慣化を!とあせらずにはいられません。

そこで、自分の気持ちが先走らないよう常にブレーキをかけつつも、11月と12月は歯みがき強化月間です!体育の授業をしても、塗り絵をしても、緑化の授業をしても、その後は、さぁ、歯みがき!

子供たちは、そろそろ「歯みがき、歯みがきってしつこいなぁ」と思っているころでしょう。

「冬休み中、家でも歯みがきが毎日行える」という目標に少しでも近づけるよう、現在の活動内容は以下の通りです。

1.両親を巻き込む

冬休み中の家での歯みがきは、両親の理解と監督が不可欠です。しかし、両親自身が歯みがきの習慣がないために、困難を極めるとは思いますが、月1回の村民対象の衛生講座のたびに、子供達の歯みがき学習中の実際を見てもらい、理解を促しています。

2.指導のメインは隊員ではなく学校の先生

隊員が学校を訪問するのは週に1回のみ。残りの平日の4日の歯みがき指導をする先生らが、子供達の歯を守るのは自分たちの仕事だと認識してもらえるよう、隊員訪問時もなるべく先生が指導を行えるようにしています。

3.子供達の反応を見ながら、段階を追った指導

まずは、歯を磨くことに抵抗を抱かない。うがいができる。歯みがきの大切さを理解できる。歯の構造を理解できる。毎日行うことができる。歯の構造にそった磨き方を使い分けることができる。正しい歯みがき方法を他人に伝えることができる。と、段階を追った指導をすることで、私自身も気持ちが先走らないように努めています。

4.3年生により重点的に指導

「歯の構造にそった磨き方を使い分けることができる」は、主に3年生の目標です。

来月から始まる冬休み中の子供達の歯磨きの監督は、両親だけでなく、3年生の彼らにも期待しています。彼ら自身が両親や下級生らに、歯みがきの大切さを伝えるという役割です。次回の学校での衛生授業では、3年生が2年生の歯みがき方法をチェックして、指導する予定です。君たちならできる!というおだて作成は、うまくいくでしょうか?

5.歯みがきカードの作成

歯みがきをしたら先生がカードにチェックをして、カードがいっぱいになったらプレゼントがもらえる、ということを伝えています。私自身の小学校での夏休みのラジオ体操カードをヒントにしました。体操なんて嫌いだったけれど、最終日のプレゼント欲しさで、毎朝頑張って早起きをしたものです。

現状では、まだ学校に水道はひかれていません。(以前一度、設置しましたが壊れてしまいました。)しかし、現状の中でもできる範囲で始めていきたいものです。

上級生の交代での毎日の水場までの水汲みも、毎朝の歯みがきも、少しづつ、毎日の日課になってきているようです。

 皇岡小学校では、今日も子供達が元気いっぱいに歯みがきをしています。(2007年12月)

19年度短期 涼山州赤十字会 公衆衛生 酒井順子