一歩一歩・・・の実感!

 重慶市、南坪実験幼稚園に赴任して10ヶ月、、、生活にも慣れ、ゆっくりと周りを見ながら活動している。時には色んな心の葛藤もしながら!

 去年の夏、1年の区切りとして、何か活動をしたいと考え、北京日本人幼稚園に重慶の先生を見学実習にお連れし、重慶市で大きな日中幼児教育交流会を開くことを 先輩隊員と一緒に計画した。北京日本人幼稚園訪問は、前例がない活動であったが『日本の教育現場を見ることにより、内面的な心の教育の大切さや生活習慣等、躾の大切さ』という、外見的でない教育の重要性を感じてもらう有意義な活動になると考えたからである。

 見学実習等を行うにあたりまずやるべき事、それは全く伝のない北京の日本人幼稚園にご理解をいただくこと・・・、ここから、始まった! 夏の総会時の北京滞在をちょうど私用で延長していたこともあって この時間を利用し、いくつかの幼稚園にお願いして、積極的にボランティアワークに出かけた。先方幼稚園の園長先生や諸先生方と交流を深め、ご理解を頂き、重慶の先生方の見学実習を承諾していただいた。

 この話を自園に持ち帰ったまでは良かったが、園としても忙しい時期に先生を出張させる事、配属先園長から理解を得る事など、いくつもの問題が出てしまった。計画が実行に移るまでには、本当に色々なことがあり、何度も途中で諦めかけた。

 そして、やっと迎えた北京研修会! 園としても大変な時期であったため、園長から承諾を貰えたことが本当に信じられなかった!

 北京での研修会。現場を見学実習することによって、先生と子どもの関係、日式の保育(授業)の進め方、先生の配慮、心配り、それによって見られる子ども達の様子、授業態度、などが実際に見て体験できたことが大変よかった。これらは、隊員が中国の幼稚園現場でいくら説明しても、“本当にそんな様子で授業ができているのか?”と、なかなか理解が得られるものではないからである。見学研修中、日本の先生方の配慮等も、その場その場で隊員が引率教諭へ説明し、中国とは全く違った内容を体験してもらい、中国人教師自身も目からウロコの状態であったようだ。

 また、午後には日中教師交流会と題し、質疑応答意見交換会を行った。ここ北京の日本人幼稚園には 中国人でありながら日式幼稚園で10年以上勤務し、日式教育の内面的な部分を理解している教諭がいるからであった。この交流会の中で中国人の先生方が、普段日式に対して考えている事、見学して実際感じた疑問等、中国人教師たちによる、中国語で討論会を行えたことが100%に近い理解に繋がった事は本当に大きな成果であった。北京を訪問した教諭は、帰任しして早速翌日、園長に写真などを交えて報告し、園長の日式教育に対する内面的な深い理解が得られ、隊員の授業にも見学に来てくれたりした。翌週には全職員を集めて、北京に行った教諭による報告会が開かれ、園長より、『日本の教育内容は簡単であるように見えるが 実際に含まれる内容には子どもにとって大切なことが多く、全職員積極的にJICA隊員に教育について質問等しながら学ぶように。』と、職員に投げかけがあった。それまで多少感じていた幼稚園との距離が、一気に縮まった気がした。

 またその視察、交流会の理解を更に多くの中国人教師に伝え、日中の教育交流の発展につなげたいと考え、配属先幼稚園において 幼児教育隊員3名が集まり、公開授業と交流会を行った。配属先園長が自ら私たちの研修、公開保育の為の表題等をパソコンで作成してくたり、この研修会参加への招請を遠くは北京の幼稚園へも出してくれ、合計で他園から130名くらいの先生方が参加してくれる大きなイベントとなった。

 とにかく、この約一年の活動で感じたことは、中国人の先生方は教育に対しても研究に対しても、大変努力をしており、物事への善悪、躾、礼儀の大切さや生活習慣の教育等はよく理解していると言う事。しかし、現実にある政府・園・保護者の要求や文化風習などによる教師自身の習慣や 又、自身に経験が無いためどう教育してよいか分からないでいる事、などである。

 前回3月に行った、交流会では自由遊びの奨励を視点にして、比較的簡単な内容でイベント進めたが、今回は多少難しい内容も入れて行ってみた。なぜならば、中国の先生方は日ごろから 良く書物等を読み、情報収集は比較的良く行っているからである。その収集した情報を、どう処理していくか、また、目的を持って創造し工夫し変化させていくという習慣に慣れていないために、教則本に書かれた内容をそのまま表現してしまう・・・。そこで、違った観点からの教育概念を知り、応用・工夫しようとする習慣を持つ、また自園の教育に取り入れられることを探す、教師側にも“工夫してみよう!やってみよう!”と意欲を引き出すことを目的としてイベント、公開保育、研修会を行った。

 決して上からの目線ではなく、一つの“提案・情報提供”として。

 “幼児期に、〜〜な体験をさせると、子ども達の能力が伸びていく!”
 “そのためにはまず先生が、目線を下げて子ども達の見ているものを一緒に見ましょう!”
 “面倒なことも多くありますが、その全てがみんなの未来に繋がるのです!”
 私自身が日本にいる時に実際に集めた研究の結果も取り混ぜながら、
 ≪算数・国語・科学などのいわゆる“お勉強”以外の生活習慣方面にも積極的に指導、配慮していけば、子ども達の能力は後からどんどんついてくる!≫
 ご参加いただいた先生方は 本当に真剣に耳を傾け、メモを取り、『取り入れてみようと思います!』と言葉をかけて下さった。

 今回の北京研修会・重慶での交流会を通して、何より配属先の園長や先生方の“教育交流”に対する理解が進んだことが この時期にして本当に信じられない出来事であった。日本教育にある、内面的な関わりや配慮・心の教育に対する先生方の配慮・生活習慣の重要性等を今回の活動で知ってもらい、研修会では私の言葉が足りない部分を園長自身が“この意味合いは、こういうことなのだ。日本教育は簡単に見えるけれども、子ども達の心理にとって大切なものがたくさん含まれている。”と、代弁してくれるまでになってくれた。

 もちろん1回の交流会で今までの習慣が切り替わる訳は決してないと思っているが、今後もこの刺激を協力隊員として提案していく必要性はあると感じている。また、日本教育が一番と言うような、偏った見方ではなく、こどもの成長を第一の目的として、広く教育交流や概念の取り入れをしていく姿勢を私自身も忘れてはならないと感じている。

 現在では、配属幼稚園の教師が分園の幼稚園に赴いて 日式授業や理念、日本の教育が大切にしているもの等を投げかける活動も行いはじめた。日式指導内容を実施し、隊員作成ムービーを各園の先生方に見せたりしている。また、各クラス担任は、教育交流を通して得た、出来る部分での教育の取り入れ、指導法、姿勢を少しずつであるが実践してくださっている。教育交流会に参加したり、実際に現場を体験したりすることで採用可能な部分を考えてみる、とういう発想が中国の先生方に広がるというのは本当の意味での協力隊の活動の意義に値すると思った。 

 しっかり根付いている訳ではないが、隊員がその場にいなくても考えや思いを還元し、広めてくれている様子が見え始めた事は、本当に言葉では言い表せないほどうれしい事である。

 北京への日式幼稚園訪問、教育交流イベントを行うまで、私自身も配属先との間に距離を感じたり、また、教育について伝えきれていない部分が本当に多くあった。園の発展のための交流という当初の園側の要望を、私も改めて考え直し、活動の一環として捉えていくのであれば、表面的に模倣することを提案するのではなく、日式教育の根本である“子どもの年齢に応じた心身の成長を優先する”という内面的な教育への理解を得る必要があると考え、今回の活動を計画した。最近では 先生方のちょっとした場面に見られる、腰を下げて向ける子ども達への目線などを見るにつけ、先生方の即実践という姿勢への感謝とともに 本当にありがたい事だなぁとしみじみ感じる。このような姿勢を見させてもらい、逆に私自身が学ばせていただく事が本当に多い。

 何が○で、何が×だ。 コレは決まりだ。 絶対こうあるべきだ。

 そういう偏見を、教育者は考えがちであり、危険な一面であると思う。

 このような観念を、一掃させてくれる、中国の先生方、教育現場に逆に私たちが学ぶべき課題の多さを感じるところである。

 交流する→新たに知る→柔軟に捉える、工夫する!  教育とは、常に異文化交流なのだなぁと。

重慶市 南坪実験幼稚園 18年度2次隊 幼稚園教諭 林 身江子