希望工程について知っていますか?

 「希望工程について知っていますか?」ある日の日本語の授業で生徒に質問をした。中国人の子供たちに外国人の私が聞くべき質問ではないかもしれないが、この問いに多くの生徒は「聞いた事はあるが詳しくは知らない」と答えた。

 希望工程(Project Hope)とは中国青少年発展基金会を中心として貧困地区の子供達に経済面の支援をしたり学校を建設したりする社会福祉活動を指している。今回、縁があって希望工程参観ツアーに参加することができた。河北省の平泉県白石廟小学校を訪問し花を植えたり運動会をするなどの活動を共に行った。小学生はもちろん地元の方々や先生方との交流、そして農家訪問まで含まれていて養鶏や養蜂の様子も見ることができた。

 まず協力隊員である私がなぜこの企画に参加したかというと、今年の春節の休みに雲南省を旅した際、北京大学4年生のある日本人の若者に出会ったのがきっかけであった。彼は友人たちと協力して”Pia-smile”(日本希望工程国際交流協会)という留学生のボランティアグループを立ち上げていた。彼はその代表をしていて@貧困地区である農村との直接の交流や体験を通じ、留学生のボランティア意識を改善するA希望工程小学校の存在や現状を社会に、そして海外に配信するB国際間ボランティアの活動を通して、日中友好に少しでも貢献するという3つ目的を持って活動しているのだという。

 私は外国人として希望工程を支援しようとした若者達の行動力に感銘をうけ是非参加したいという気持ちに駆られた。北京にある日系企業などからも支援金などいただけるよう廻っているという。そして5月、参観ツアーに加えていただくこととなった。途中、協力隊の活動内容を簡単に説明したところ、JICAや協力隊、日本語教師に興味を持っている留学生が多いことに驚いた。ツアーに参加しているメンバーは北京の大学に留学していて、とても明るく爽やかな青年達ばかりだった。そんな彼らと出会えたことも今回参加した意味があったように思う。

 訪問地の小学校では可愛らしい子供達が待っていた。初めのうちは誰もがはにかむように照れた表情をしていたが、数時間後には、はじけるような笑顔に変わった。ほんの少しの時間で子供達は一気に私達との距離を縮めてくれる。そして運動やゲームを通じて共に一喜一憂しているうちに時間はあっという間に過ぎていった。そんな素敵な時間を過ごさせてくれたPia-smileのスタッフに感謝したい。他の留学生たちも本当にいい顔をしていた。

 さて、冒頭の希望工程に関する授業を任地の高校1・2年の日本語班で行った。私の紹介する小学校の写真に生徒たちは興味を持ってくれた。また希望工程で最初に奨学金をもらった張勝利さんに関するストーリーを教材として取り扱った。色々な選択肢の中で、故郷に戻り恩を返すために地元の学校教員として努力しているという話に、ある生徒は以下のように感想を書いてくれた。

 「私は夏にはアイスクリームを食べ好きなジュースを飲んでお金があったらネットカフェに行ったり・・・良い環境にいるのに熱心に勉強しない自分が恥ずかしいです。恩人のために故郷に戻った張さんの精神から3分の1でも私は見習いたいです。将来は先生のように希望小学校を訪問してみたいです。」「先生の話を聞いて放課後文房具屋に行ったら一つの鉛筆が目にとまりました。『あなたが買った鉛筆の代金は希望工程のために使われます、有り難う』とありました。私はその鉛筆を買いました。それは本当にちっぽけな額かもしれませんが皆のお金が集まれば多くなって人を助ける力になると思いました。私も将来ボランティアをしてみたいです。」・・・生徒達は確実に何かを感じとってくれたようだった。

 自分の任地だけではなく色々な地域を巡り「現場」で活躍している人々の姿をこの目で見たい。直接見て感じた物・事・人との出会いを、今目の前にいる任地の生徒や帰国後出会うであろう私の未来の生徒達にも伝えたい。それが現職教員派遣で中国にやってきた私の使命だと感じている。これからも自らの「出会い」を若者に伝えたい、すると何かがまた動いていくと信じている。(2007年5月)

平成18年度1次隊 永吉県朝鮮族第一中学 日本語教師 鳴海麻衣子