「親密」な関係

 学生たちに「日本の大学と中国の大学はどう違いますか?」とよく聞かれます。そのとき私は「中国の大学は全寮制なところが面白いと思います。」といつも答えています。初めて学生たちの学生寮をみたときには狭い部屋に二段ベッドがぎゅうぎゅうにおしこめられ、まったくプライベートのない生活に「これはちょっと・・・」と思っていました。しかし、その考えが少し変わるきっかけになった出来事があります。

 去年の9月のある夜9時ごろのことです。なにか面白いネタはないかなあとブラブラ学内を散歩していると軍事訓練用の迷彩服を着た女の子が泣きながら学内の公衆電話で電話をしているのを見かけました。この時期に迷彩服を着て泣いていると言えば大学生になりたての1年生です。大学一年生の9月は軍事訓練が行われます。9月といえども日中は30度を越える暑い時期、そして毎日朝八時ごろから遅いときには夜9時ごろまで行進や回れ右の訓練、体はかなり疲れているでしょう。また、なれない食堂の食事(学生たちには不評の味…)や知らない人に囲まれた寮生活で心もピークに達しているころです。電話を終えてうずくまる彼女のまわりに現れたのが、彼女と同じ迷彩服をきた女の子たち。泣いている彼女を囲んで一緒に座っていました。しばらくすると泣いていた彼女は立ちあがり、友だちと一緒に寮のほうへ帰っていきました。翌日二年生の学生にこの話をすると、「その女の子の気持ちはわかります。周りにいた女の子たちのしたことは当たり前です。家族みたいなものですから。」と言っていました。

 だからでしょうか。私が「想家(ホームシック)」になりそうになると、学生の誰かが気配を察して私の携帯電話にショートメールを送ってくれます。「先生一緒に散歩へ行きましょう。」「今日寮へ遊びに来てください。」「寒いから風邪引かないようにしてください。」…・・・「なんで何にもいってないのに、今私がプチ『想家』だとわかるの!?」と思わず携帯のショートメールにつっこんでしまいます。でもそのあったかい一言にいつも救われています。学生たちがいつも私のことを気にかけてくれ、大切にしてくれていることがいつもさりげない学生の言葉から伝わってきます。

 この国で生活を始めてから、「中国は本当に人と人との関係が『親密』だ」と思うようになりました。恋人同士はもちろん、友達同士の距離も、先生と学生の距離もとても近いように感じます。近すぎる関係に戸惑ったこともありますが、今はなんだかこの距離感がとっても居心地のいいものになっています。任地にきてからあっという間に六ヶ月がすぎました。きっとあと一年半の活動もあっというまに終わってしまうのだと思います。残りの一年半、育った環境の違いに関係なくたくさんの人と「親密」になると決めています。

18−1 湖南省張家界市吉首大学外国語学院 日本語教師 木村典子