笑顔のために

 7月13日、桂林市の桂林旅遊高等専科学校に赴任しました。着いた翌日から練習に参加しました。それは、7月22日から北京での全国大会を控えていたためでした。私が、彼らを最初に見た印象は、鍛えれば上手くなるなという可能性を感じました。と言うのも、コーチの方は台湾の方で厳しく指導されているので、厳しさにも耐える力も身に付いているし、根性もあるので上手くなりそうだなと思いました。びっくりしたのは、大学に入ってから野球を始める学生がほとんどであるということです。この学校は3年制なので、長くても3年間、1年生に限っては1年しか野球をしていないのに全国大会の舞台に立つという厳しい現状で野球をしていました。

 私も、全国大会に帯同させてもらいました。赴任して1週間しか生徒とも野球をしていない私に何が出来るのだろうかと思いましたが、気づいたことや、アドバイスはいくらでも出来ると思いました。選手も私の不慣れな中国語と英語と日本語を聞いて理解しようとしてくれました。そして、何かを吸収しようと私に質問をしてきてくれる生徒もいましたし、私が話すこと、教えることを興味深く試してくれたりもしてくれました。その姿を見ると、勝たせてあげたいと思い、教えるほうにとっても力が入りました。

 試合でのエピソードを紹介します。準決勝での出来事でした。対戦相手は左ピッチャーで球速も速い好投手でした。1回の攻撃でランナー3塁、バッター3番。3年生の主力のバッターが打ちに行ったときに、親指にボールを当ててしまいました。指は、腫れ上がり、私は交代させるべきだと言いましたが、他のコーチの人たちは彼を打席に送りました。対戦相手のピッチャーも心配している様子でした。試合が再開しての初球、指が痛いはずの彼がホームランを放ちました。これで一気に流れが私たちのチームに傾きました。この試合、大きく勝敗を分けたのは、指の痛みに精神的に勝った彼と、当ててしまって動揺したまま投じてしまった対戦相手のピッチャーの精神的な弱さが鍵になったと思いました。1球の怖さ、野球の面白さを改めて感じさせられた試合でした。

 私たちは全部で6試合しました。1敗したものの、5試合は勝つことが出来て、見事に優勝を果たしました。勝った5試合、選手の笑顔を目にすることが何よりの私の喜びでした。三振を取ったとき。ヒットを打ったとき。得点を取ったとき。ファインプレーをしたとき。選手の嬉しそうな顔がとっても印象的でした。

 これから、優勝したことに慢心せずに選手たちを奮い立たせながら、もっともっと、選手たちの笑顔を眼にするために、野球技術そして人間力を養っていこうと考えています。また、多くの人たちに野球を知ってもらい、野球が普及していくような活動をしていきたいと考えています。(2007年8月)

19年度1次隊 桂林旅遊高等専科学校 野球  清野 祐