漢語と朝語と日語と私

 「新賓満族自治県…?どこ…?」初めて目にした時、家にある世界地図で一生懸命この地名を探したにも関わらず、地図帳には載っていませんでした。本屋へ行って、詳しい地図を見て、やっと自分が中国のどの辺りで二年間生活することになるのかを知りました。私が今生活している遼寧省新賓満族自治県は、吉林省との省境近くに位置しています。都市からは離れていますが、どこへ行くにも徒歩で事足りる、とてもコンパクトにまとまったとても便利な(?)田舎町です。この小さな町で、配属先の校長先生、同僚の日本語教師、かわいい学生達など本当に様々な人々に温かく見守られながら日々生活しています。「協力隊」という肩書きでやって来ましたが、今のところ周りの人々に協力してもらいっぱなしです。

 私は新賓県朝鮮族中学に日本語教師として派遣されています。その名の通り朝鮮族の学校のため、校内では教室でも職員室でも食堂でも、朝鮮語が飛び交っています。中国語もまだまだ勉強中、そして朝鮮語についてはまったくわからない私にとって、言葉の壁を感じることがあります。まるで自分が違う星にやって来たような気分になります!それが原因で時に卑屈になっている自分がいます。しかし言葉を教えることを仕事としている今、自分が外国で言葉に悩んでいるこの状態は逆に貴重な経験になるものと思っています。留学や仕事などの理由で日本に来ている外国の方も、同じような気持ちを味わいながら、日々生活しているのだろうなぁと身をもって気付くことができたからです。

 学校では13歳〜18歳の全校生徒約600名、ほとんどの学生が日本語を勉強しています。私の赴任当初こそみんな恥ずかしがって挨拶もまともにできない状態でしたが、今では「先生、おはようございます」「こんにちは」、また時には「先生、私はすばらしいですか?」などと元気よく声をかけてくれるようになりました。このような挨拶、ただ一言ですが、それさえも自分の発した日本語が本物の日本人に通じている!という状態を純粋に喜び、楽しんでいるように見えます。このように喜び、楽しみを感じてもらいながらコミュニケーションの手段としての日本語を身に付けてくれることが私の望みでもあり目標です。私の授業に慣れてきた頃から、彼らも「日本人先生の授業の時はおもしろいことを言ってもいいんだ!」と気付いたらしく、コントのような会話文を発表したり、自分達で楽しんでくれるようになってきました。もちろん文法を間違っていたり、完璧な日本語ではありません。それでもコントのようなおもしろい会話文を発表し、それを聞いて教室で爆笑が起こる時、外国語でここまで笑わせ、笑える学生を尊敬してしまうこともあります。私自身も学生に負けないように、新賓の人々とのやりとりを楽しみながら、少しずつ中国語(朝鮮語も?)を進歩させていこうと思う今日この頃です。(2007年8月)

18年度2次隊 新賓満族自治県朝鮮族中学 日本語教師 笹村はるか